Amazonプライム・ビデオで配信中の自動車番組「The Grand Tour」でおなじみのリチャード・ハモンドが英「Mirror」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2012年に書かれたサンヨン・コランドのレビューです。


Korando

サンヨン (SsangYong) という社名は決して発音しやすい名前ではないのだが、サンヨンの前身で、1986年にサンヨングループに買収された東亞 (Dong-A) に比べればまだましだ。

イギリスで有名なサンヨン車といえばムッソーだろう。これは1990年代にメルセデス・ベンツから技術供与を受けて誕生したモデルだ。エンジンはメルセデス製で、その残念なデザインはケン・グリーンリーによる迷作だ(ちなみに彼はアストンマーティン・ヴィラージュやパンサー・ソロといった名作も手掛けている)。当時のグリーンリーはかなりの不調だったようで、ムッソー以上に酷いデザインのロディウスというモデルまで生み出してしまった。

今回の試乗車はそんなサンヨンの新型車、コランドだ。ここ数年、韓国メーカーのヒュンダイとキアが続々と優秀なモデルを出しており、同じ韓国車のコランドにも期待が高まる。

コランドはフォード・クーガや日産・キャシュカイと同じクロスオーバーSUVであり、2WDモデルと4WDモデルの両方が設定される。今回試乗したのは4WDモデルだった。エンジンは全車共通で、最高出力175PS、最大トルク36.8kgf·mを発揮する2.0Lディーゼルエンジンが搭載される。トランスミッションは6速MTと6速ATが用意され、試乗車はMT車だった。

コランドはサンヨン初のモノコック車だ(要するにランドローバー・ディフェンダーのようなセパレートフレームではない)。モノコックの利点は軽量・高剛性である点で、操作性や快適性、経済性に有利だ。

rear

見た目も悪くない。サンヨンよりもブランド力のあるメーカーの車と見間違えることもあるだろう。試乗車はビタミンレッドという非常に派手な色で、オリンピックスタジアムのそばに駐車すればきっと聖火よりも目立つだろう。

室内空間はかなり広いのだが、あくまでも居住空間が広いだけで、荷室容量は486Lと至って平凡だ。リアシートのヘッドルームおよびレッグルームはかなり余裕があるし、乗り心地も非常に良い。

インテリアの質感はこれまでのサンヨンから格段に向上している。他の韓国メーカーからうまく学んだようだ。

2.0Lエンジンはサンヨン内製なのだが、実際に運転すると他社製エンジンの供給を受けたほうが良かったと感じる。悪いエンジンではないのだが、世のディーゼルエンジンの水準には達していない。外からは紛いもないディーゼル特有の音が聞こえるし、室内で聞いていても決してガソリン車と間違えることはない。

そして最大の問題点がピーキーな特性だ。最大トルクは2,000rpmから3,000rpmの間で発揮されるのだが、一般的な欧州製ディーゼルエンジンはもっと低い回転域から最大トルクを出すことができる。マニュアルトランスミッションのギア比を適正化するだけでももう少しましになるかもしれない。

interior

今回の試乗車は新設定された「SX」というグレードだった。従来は4WDモデルが上級グレードの「EX」にしか設定されず、価格は21,445ポンドとお買い得感はあまりなかった。「SX」はエントリーグレードの「S」の4WD版で、18,795ポンドという非常に競争力のある価格設定となっている。

試乗車にはメタリックの特別塗装色(500ポンド)や牽引用ヒッチメンバー(602ポンド)、ナビゲーションシステム(999ポンド)が装備されていた。ただ、価格を考えると安いポータブルナビを付けたほうがいいだろう。

「SX」のシートは布地なのだが、装備内容は豊富で、スタビリティコントロール、6エアバッグをはじめとした各種安全装備やオートエアコンも標準装備となる。

ブランドを気にしない人(たとえば農家など)には牽引用の安価な4WD車としてコランドがぴったりなのかもしれない。ただし、そういう人にはダチア・ダスターも魅力的に映るだろう。困ったことにダスターと比べてしまうとコランドが高く思えてしまう。


Who'll go for the Korando? If you don't care about badges, this is a well-priced workhorse