今回は、英国「Auto Express」による新型アウディ・RS5の試乗レポートを日本語で紹介します。


RS5

アウディから新型モデルが登場すると、次に登場するモデルもある程度推測することができる。新型A4セダンが出たら、次に新型A5クーペが登場した。続いて、よりホットなS5が登場し、最終的にはシリーズ最速のモデル、RS5が登場した。

しかし、従来型RS5に搭載されていたハイパワーV8エンジンに代わり、新型ではV6ターボエンジンが搭載されるということまでは推測できなかった。果たして、ダウンサイジングターボエンジンを搭載した新型RS5には、メルセデスAMG C63やBMW M4に対抗できるだけの実力があるのだろうか。

小型化されたのはエンジンばかりではなく、新型RS5は車重も60kg軽量化されている。この点は喜ばしいのだが、試乗した結果、結局RS5は旧型と同じ運命を辿っていることがはっきりしてしまった。旧型同様、新型RS5も運転する楽しさではライバルに敵わない。

特に新型エンジンには大きな問題がある。音もフィールも平凡だ。旧型RS5に搭載されていたV8エンジンには遠く及ばないし、メルセデスのV8と比べても刺激が足りない。BMW M4に搭載される直6ターボエンジンのほうがまだ個性的だ。

S5に搭載されるエンジンもそうなのだが、どうもRS5のエンジンは、実際の走行時の楽しさよりも、カタログスペックを高めることを重視して設計されているようだ。0-100km/h加速は3.9秒で、実際、アクセルを踏み込めばかなり速く感じられるのだが、エンジン音は退屈だし、トルク偏重な性格なため、刺激的なガソリンエンジンというよりは、大排気量のディーゼルエンジンに近い印象だ。

rear

最大トルク61.2kgf·mというカタログスペックは驚異的だし、実際に運転してみてもその実力の高さは体感できる。最大トルクは1,900rpmか5,000rpmという広い回転域で発生するのだが、そのせいで高回転域での性能が犠牲になっており、結果ショートシフトになっている。

8速ティプトロニックは優秀で、変速は滑らかで迅速だ。シフトアップ時の排気音は好みが分かれそうだが、このトランスミッションで実際に問題となるのはプラスチック製のパドルシフトのチープさだけだろう。

RS5は直線加速が力強く、4WDシステムのおかげで強力な加速をしても地面に吸い付いてくれる。同じように、4WDシステムはコーナリング性能にも寄与している。トルクコントロールシステムのおかげでコーナーへの進入および脱出は簡単だ。

RS5のグリップ性能は高いのだが、コーナリングの楽しさではC63やM4に後れを取っている。RS5はかなり飛ばさなければアンダーステア傾向となってしまうし、路面のコンディションが良好でなければ飛ばすことはできない。一方、他の2台は普通の速度で走っていても楽しい。舗装のしっかりした道を飛ばしたいのならRS5の実力は高いのだが、どんな道でも特別な感覚を得たいのなら、別の車を選んだほうがいい。

RS5のステアリングはクイックだし、グリップにも富んでいるため、ダイナミックモードにしてサスペンションのセッティングを硬くするのが適している。こうすることでロールが減ってよりシャープになる。ただ、ステアリングのフィールはM4にやや劣る。

interior

アダプティブダンパーをコンフォートモードにすればかなり落ち着いた走りを見せる。普通に走る分にはM4よりもずっと乗り心地が良く、今回の試乗コースであるフランスの道ではかなり快適だった。モードによってRS5は2種類の性格を呈するのだが、RS5の本質は快適性なのだろう。ダイナミックモードにしてもその本質は失われない。

高速道路でも静粛性は高く安定していて乗り心地も良く、非常に快適だ。シートやドライビングポジションも適切で、インテリアも上質なので、RS5はまさに「高速クルーザー」だ。エンジンはトルキーなので追い越しは容易いし、旧型モデルと比べると経済的だ。もっとも、11.5km/Lという燃費は特別優秀なわけではないが。

もし速いオールラウンダーが欲しいなら、RS5よりもS5のほうが、あるいは252PSの4気筒ガソリンエンジンを搭載するA5のほうがずっと安いし合理的だ。最速の高速クルーザーが欲しいとしても、RS5にはハイパフォーマンスクーペに求められる突出した性能というものが欠けている。

とはいえ、A5シリーズ最速にして最上級のモデルという事実があるだけでも十分満足する顧客は多いだろうし、スポーツシート付きのアルカンターラインテリアはA5シリーズの中で最も魅力的なインテリアだ。アウディのインテリアは実に素晴らしい。デザインはクリーンだし、質感も非常に高い。

エクステリアデザインも同様で、アグレッシヴながら派手すぎることはなく、RS5用のスポーティーなエクステリアパーツはよく似合っている。サイドベント付きのLEDヘッドランプは以前のRSモデルを彷彿とさせるし、大型のグリルのおかげでとてもスマートに見える。


New Audi RS5 2017 review