今回は、米国「SlashGear」による新型トヨタ・カムリの試乗レポートを日本語で紹介します。


Camry XSE

新型カムリの登場に歓喜している人はどれくらいいるのだろうか。カムリは十年以上の間、ミドルサイズセダンの頂点に立つモデルであり、適正な価格の、なにより信頼性の高い車を求めるファミリーユーザーの支持を得てきた。既にクラスの中で優勢に立つカムリは、果たしてどれほどの進化を遂げているのだろうか。

条件が変わっていなかったなら、従来のカムリを正常進化させるだけでよかったのだろうが、今の自動車市場は1980年代とはまったく違う。子供を持つ今の親世代は4ドアセダンよりも4WDのSUVを好み、子供を持たない人ですら、セダンを手放してクロスオーバーSUVを求めるようになってきている。

これはトヨタにとっては不幸な状況だ。確かにトヨタにも競争力の高いSUVはあるのだが、カムリの販売台数は壊滅的なまでに減少している。フォードのベストセラーピックアップトラック、F-150と同じくらいの急落ぶりだ。カムリを主力とするトヨタにとって、突然のセダン不人気化は大きな試練だ。

しかし、世界最大級の自動車メーカーであるトヨタにとって、メカニズムやデザインを顧客の好みに合わせていくのはそれほど難しいことではない。新型カムリは単なる旧型の進化版などではなく、従来とはまったく違うレベルの快適性や走行性能を有する車に仕上がっている。

パワートレインは従来と変わらず3種類が設定され、グレードは5種類用意される。最も安いのが4気筒の「L」(23,495ドル)なのだが、装備内容の少ないこの最廉価グレードを選択する人は少ないだろう。この最廉価グレードに搭載される新設計の2.5L直噴エンジンは、上級グレードの「XLE」や「XSE」にも設定される。このエンジンは最高出力209PS(XSE)もしくは206PS(それ以外)、最大トルク25.7kgf·mを発揮し、8速ATが組み合わせられる。このセグメントではターボエンジンが主流となりつつあるものの、競争力のあるエンジンであることは変わらない。ハイウェイ燃費は17km/L、シティ燃費は13km/L程度となる。

XSE rear

販売されるカムリの大半は2.5Lモデルなのだろうが、上級志向のユーザー(約20%程度)は3.5L V6や4気筒ハイブリッドを選択するだろう。新型の3.5Lエンジンは旧型から設計が刷新されており、直噴エンジンとなっている。最高出力は約20PS向上して305PSとなっており、最大トルクは36.9kgf·mを発揮する。トランスミッションは2.5Lモデル同様8速ATとなる。

一方、ハイブリッドはEPA複合燃費22km/Lを実現しており、2.5L 4気筒エンジンと電気モーターが生み出すシステム出力は211PSとなる。面白いことに、ハイブリッドのバッテリーはグレードによって変わる。エントリーグレードの「LE」はリチウムイオンバッテリーが搭載されるのだが、「SE」や「XSE」にはニッケル水素バッテリーが搭載される。ニッケル水素バッテリーはリチウムイオンバッテリーより重いのだが、パフォーマンスは高いそうだ。車重の違いにより、「LE」は他グレードより2km/Lほど燃費が良い。また、バッテリーの搭載位置はシートのすぐ下に移動しており、トランク容量が拡大しただけでなく、車の重心も低くなっている。

3種類のパワートレインを搭載するモデルを乗り比べて、三者三様のキャラクターがあることが分かった。4気筒モデルは日常使用に非常に適しているのだが、アクセルを踏み込むと少しやかましくなる。一方、V6モデルはタイヤを鳴かせるほどのパワーを生み出すので、高速での追い越しがしやすい。一番意外だったのはハイブリッドだ。モーターのみの走行とエンジンを併用した走行の切り替えが驚くほどスムーズだし、カタログスペックよりもずっとパワフルに感じられた。特にスポーツモードではそれが顕著だった。

トヨタは新型カムリが旧型より運転の楽しめる車になっていることをかなり強調している。実際、従来型に比べるとコーナーを自信を持って抜けられるようになった。剛性は大幅に向上しており、新設計のリアダブルウィッシュボーン式サスペンションのおかげでスタビリティが改善しており、少し乱暴に運転しても落ち着きを保ち続ける。とはいえ、ロールを嫌うのであれば「SE」か「XSE」を選択する必要がある。この2グレードには専用のショックアブソーバーおよびスプリングが装着されており、トヨタのミドルサイズセダンとしてはこれまで考えられなかったほどにスポーティーな走りを見せてくれる。

interior

退屈でなくなったのは走りだけでなく、エクステリアデザインも大きく変貌している。デザインはより滑らかかつ表情豊かになっており、ボディカラーも刷新され、一部グレードではルーフおよびCピラーをブラックにすることも可能だ。ただ、複雑な形状のフロントグリルは見る角度によってはうるさくも感じられる。「SE」および「XSE」の4本出しエグゾーストもやり過ぎ感がある(そもそも、機能的にはそんなに必要ないはずだ)。

インテリアについては、明色や暗色のレザーやプラスチックを使った保守的なインテリアを選択することもできるし、「XSE」では真っ赤な牛革インテリアを選択することも可能だ。今回試乗したのは量産前のプロトタイプモデルなのだが、それでも問題を挙げるなら、シートヒーター用のボタンは安っぽかったし、ドアのスピーカーは90年代のラジカセのような質感だった。Entuneインフォテインメントシステムのグラフィックやメニューデザインはより現代的なものに改良されていた。

新型カムリは大幅に進化しており、特に走りの改善は賞賛に値する。トヨタがSUVという脅威に必死で対抗しようとしているのが伝わってきた。トヨタに出せるすべての力を出し切って、顧客の興味を引こうとしているのだろう。カムリ以外にも優秀な4ドアセダンはたくさんある。ホンダ・アコードヒュンダイ・ソナタ、キア・オプティマ、フォード・フュージョンなどがその括りに入る。けれど、クロスオーバーSUV人気という混沌に打ち勝つのは容易なことではない。カムリの進化は嬉しいのだが、この車の魅力を理解できるユーザーはきっとどんどん減っていくのだろう。


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