今回は、米国「Car and Driver」によるシボレー・コロラド ZH2 コンセプトの同乗試乗レポートを日本語で紹介します。

燃料電池を搭載した軍用車両、コロラドZH2が登場したという話を聞いて、我々は「水素タンクが攻撃を受けたらどうなってしまうのか」という疑問を抱いた。GMでグローバル燃料電池部門の責任者を務めるチャーリー・フリース氏によると、10,000psiの高圧で水素が貯蔵されているタンクは、実質的に防弾仕様となっているそうだ。
聞くところによると、50口径の銃弾すら跳ね返すらしい。この50口径銃弾とは、具体的に言うと50BMGのことだ。このライフルは12トンの車を15km/hで走らせるだけの運動エネルギーを生み出すことができる。しかも、実際に銃弾が直撃した場合は、それだけのエネルギーが一点に集中することになる。それだけの防弾性能があるのは凄いことだ。また、万が一タンクから水素が漏れ出した場合でも、センサーによって検知されて水素を車外へと逃がすシステムがちゃんと整っている。
コロラドZH2はGMとアメリカ陸軍TARDEC(戦車自動車研究開発技術センター)の共同事業によって開発されたモデルであり、この事業は10年前に始まったものだ。現時点においてもまだ完成はしておらず、ZH2はあくまで軍用車に燃料電池を使うことができることを実証するためのコンセプトカーだ。コロラドZH2は2016年秋に発表されており、今後、米陸軍の士官や兵士による1年間の実証試験が行われる予定となっている。
ZH2は熱を発しにくく、また騒音も少ないため、敵から見つかりにくくなっているそうだ。93kWの燃料電池が発する音はまるでダース・ベイダーの呼吸音だ。これは発電時に水素と酸素が結合することによって生じた水を排出する音だ。もし燃料電池軍用車両が実用化されたら、きっと排出された水は浄水されて再利用されることになるだろう。

ハンヴィーは隠密性が高いとは言い難い。ディーゼルエンジンはどうしても音や熱を発してしまう。サーモグラフィーを用いると、およそ5km離れた場所からでもハンヴィーの存在を検知することができてしまう。一方、燃料電池を使うZH2の場合、半径2km以内まで近付かないとサーモグラフィーで検知することはできない。
燃料電池システムは停車時だけでなく走行中でも静かだ。今回はGMのミルフォード試験場でフリース氏の運転で2時間ZH2に同乗試乗したのだが、ZH2が走行する様子を外から眺めることもできた。ZH2はほとんど崖と言っていいような4mほどの斜面を音も発せずに登り、そのまま反対側へと消えてしまった。すぐそばまで近付かなければ何も聞こえない。これだけの隠密性があればきっと米陸軍も気に入るだろう。
ZH2コンセプトはGMのありあわせの部品を寄せ集めて作られている。フレームはシボレー・コロラドのものがベースとなっているし、37インチタイヤ、スプールバルブダンパー、オフロードサスペンションはコロラドZR2からの流用品だ。固体高分子形燃料電池、電気モーター、バッテリー(燃料電池により発電された電気を貯蔵する)はエクイノックスの燃料電池実証実験車からそのまま流用されている。エンジンフードの膨らみの下には燃料電池が搭載されており、その下には最高出力179PSの電気モーターが収められている。GMおよびTARDECによると、完成車はパワートレインが40%小型化され、視界が改善する予定らしい。パワートレインの製造は2020年よりGMとホンダの協業により開始される予定だ。

4WDシステムやビードロックホイール(空気圧を下げて走行してもタイヤがホイールリムから外れないように設計されているホイール)のおかげで、ZH2の非舗装路における走破性は非常に高い。ローレンジもあるのだが、フリース氏は一度もローレンジを使わなかった。電気モーターは低速領域でのトルクが強力なので、倒れた電柱も踏み越えることができる。電気モーターを使うことで、出力の細かい制御も可能となっている。クラッチペダルもトルクコンバーターもないので、うっかり駆動力を送りすぎてしまう危険性は少ない。
軍事用に水素をどのように調達するのか疑問に思う人も多いだろう。軍用ジェット燃料としてはJP-8というものがあり、これは航空機のみならず、戦車やトラック、発電機などにも用いられている。エンジン付きの軍用車両は多くがJP-8を使用することになるだろう。TARDECはJP-8から水素を作り出すことができる燃料改質装置を保有している。この燃料改質装置は機動性に優れており、燃料電池を使えば遠隔地の軍事基地に電気を供給することも可能だ。
ZH2の荷室にはポータブル発電機まで搭載されている。軍がZH2を実戦投入するメリットはかなり大きそうだ。このコンセプトカーが本格的に米陸軍に採用される日も近いのかもしれない。まだ未公表な部分も多い車だが、今後が気になるところだ。
Chevrolet Colorado ZH2 Concept: An Experiment with an Eye toward the Military Vehicles of Tomorrow

燃料電池を搭載した軍用車両、コロラドZH2が登場したという話を聞いて、我々は「水素タンクが攻撃を受けたらどうなってしまうのか」という疑問を抱いた。GMでグローバル燃料電池部門の責任者を務めるチャーリー・フリース氏によると、10,000psiの高圧で水素が貯蔵されているタンクは、実質的に防弾仕様となっているそうだ。
聞くところによると、50口径の銃弾すら跳ね返すらしい。この50口径銃弾とは、具体的に言うと50BMGのことだ。このライフルは12トンの車を15km/hで走らせるだけの運動エネルギーを生み出すことができる。しかも、実際に銃弾が直撃した場合は、それだけのエネルギーが一点に集中することになる。それだけの防弾性能があるのは凄いことだ。また、万が一タンクから水素が漏れ出した場合でも、センサーによって検知されて水素を車外へと逃がすシステムがちゃんと整っている。
コロラドZH2はGMとアメリカ陸軍TARDEC(戦車自動車研究開発技術センター)の共同事業によって開発されたモデルであり、この事業は10年前に始まったものだ。現時点においてもまだ完成はしておらず、ZH2はあくまで軍用車に燃料電池を使うことができることを実証するためのコンセプトカーだ。コロラドZH2は2016年秋に発表されており、今後、米陸軍の士官や兵士による1年間の実証試験が行われる予定となっている。
ZH2は熱を発しにくく、また騒音も少ないため、敵から見つかりにくくなっているそうだ。93kWの燃料電池が発する音はまるでダース・ベイダーの呼吸音だ。これは発電時に水素と酸素が結合することによって生じた水を排出する音だ。もし燃料電池軍用車両が実用化されたら、きっと排出された水は浄水されて再利用されることになるだろう。

ハンヴィーは隠密性が高いとは言い難い。ディーゼルエンジンはどうしても音や熱を発してしまう。サーモグラフィーを用いると、およそ5km離れた場所からでもハンヴィーの存在を検知することができてしまう。一方、燃料電池を使うZH2の場合、半径2km以内まで近付かないとサーモグラフィーで検知することはできない。
燃料電池システムは停車時だけでなく走行中でも静かだ。今回はGMのミルフォード試験場でフリース氏の運転で2時間ZH2に同乗試乗したのだが、ZH2が走行する様子を外から眺めることもできた。ZH2はほとんど崖と言っていいような4mほどの斜面を音も発せずに登り、そのまま反対側へと消えてしまった。すぐそばまで近付かなければ何も聞こえない。これだけの隠密性があればきっと米陸軍も気に入るだろう。
ZH2コンセプトはGMのありあわせの部品を寄せ集めて作られている。フレームはシボレー・コロラドのものがベースとなっているし、37インチタイヤ、スプールバルブダンパー、オフロードサスペンションはコロラドZR2からの流用品だ。固体高分子形燃料電池、電気モーター、バッテリー(燃料電池により発電された電気を貯蔵する)はエクイノックスの燃料電池実証実験車からそのまま流用されている。エンジンフードの膨らみの下には燃料電池が搭載されており、その下には最高出力179PSの電気モーターが収められている。GMおよびTARDECによると、完成車はパワートレインが40%小型化され、視界が改善する予定らしい。パワートレインの製造は2020年よりGMとホンダの協業により開始される予定だ。

4WDシステムやビードロックホイール(空気圧を下げて走行してもタイヤがホイールリムから外れないように設計されているホイール)のおかげで、ZH2の非舗装路における走破性は非常に高い。ローレンジもあるのだが、フリース氏は一度もローレンジを使わなかった。電気モーターは低速領域でのトルクが強力なので、倒れた電柱も踏み越えることができる。電気モーターを使うことで、出力の細かい制御も可能となっている。クラッチペダルもトルクコンバーターもないので、うっかり駆動力を送りすぎてしまう危険性は少ない。
軍事用に水素をどのように調達するのか疑問に思う人も多いだろう。軍用ジェット燃料としてはJP-8というものがあり、これは航空機のみならず、戦車やトラック、発電機などにも用いられている。エンジン付きの軍用車両は多くがJP-8を使用することになるだろう。TARDECはJP-8から水素を作り出すことができる燃料改質装置を保有している。この燃料改質装置は機動性に優れており、燃料電池を使えば遠隔地の軍事基地に電気を供給することも可能だ。
ZH2の荷室にはポータブル発電機まで搭載されている。軍がZH2を実戦投入するメリットはかなり大きそうだ。このコンセプトカーが本格的に米陸軍に採用される日も近いのかもしれない。まだ未公表な部分も多い車だが、今後が気になるところだ。
Chevrolet Colorado ZH2 Concept: An Experiment with an Eye toward the Military Vehicles of Tomorrow