今回は、英国「Auto Express」によるフォルクスワーゲン・ビートルLSRの試乗レポートを日本語で紹介します。


Beetle LSR

フォルクスワーゲン・ビートルをファッション性だけの車だと思っている人も多いだろう。オーナーの中には、愛車に可愛らしいニックネームを付けたり、派手なアクセサリーで飾り立てたりする人もいる。

しかし、今回紹介する黄色いボディのビートルLSRは少し違う。普通のビートルと同じ2.0Lの4気筒エンジンを搭載しているのだが、最高出力543PSを発揮する真っ当なレーシングカーだ。LSRは史上最速のビートルでもあり、直線での最高速度は320km/hを超える。今回はアメリカ、ユタ州のソルトフラッツでビートルLSRに試乗した。

運転席を我々の体型に合わせて調節するために2人がかりで作業が行われ、ベルトはかなりきつく締められたため、息をするだけでも大変だった。手すらも固定され、ステアリング操作しかできなくなってしまった。

しかしこれは公道を走るビートルではない。エンジンの振動は骨まで伝わり、音は剥き出しの車内で見事に反響した。ルーフにあるレバーを引くとパラシュートが射出され、高速道路の制限速度の3倍の速度から車を減速させる。我々もこのあと、このパラシュートを使うことになるらしい…。

1速に入れて重いクラッチを繋げると身体がシートに押し付けられる。58.1kgf·mという大トルクが細いタイヤに伝わって砂を撒き散らし、やがて真っ直ぐ走ることすらも難しくなってしまう。排気音が轟き、車の後ろに砂の煙が立つ中、この車は走っていく。

rear

6速MTは市販車用のものにかなり手が入れられており、常に音を立てる。ビートルLSRは砂漠を駆けてゆく。0-100km/hは4秒なのだが、体感時間はそれ以上に短かった。その時点で我々はせいぜい数百メートルくらいしか走っていない。

やがて車が砂を吸い込み、掃除機のような音を立てた。スピードメーターの数字は320km/hを指していたのだが、パラシュートを射出するともはや理解が追いつかなくなってしまった。我に返ったのはすべてが終わったあとで、砂がパラパラと舞い散る音が聞こえるほどの静寂に包まれていた。


Volkswagen Beetle LSR review