今回は、英国「Auto Express」によるルノー・アヴァンタイムの試乗レポートを日本語で紹介します。

※内容は2002年当時のものです。


Avantime

我々はおかしな世界に生きている。バンのような荷室を持つステーションワゴンもあれば、乗用車のような走行性能を有するバンもあるし、さらにはその両方の特性を併せ持ったMPVすらも存在する。

ルノーは自動車の異種交配をさらに進め、まったく新しい「MPVクーペ」というジャンルを生み出した。アヴァンタイムのイギリスでの発売は2003年に予定されているのだが、今回はそれに先立ってフランスに行き、その「MPVクーペ」とやらの正体を明かすことにした。

真正面から見るとかなりいかついのだが、サイドから見るとクーペであることが分かる。しかし、この車の最も奇抜な部分はリアだ。リア部分は不思議なカーブを描いており、テールランプは8の字形になっている。

アヴァンタイムの特徴のひとつがパノラミックルーフだ。ボタンを押すと色付きのガラスがスライドして開く。その開口部面積はかなり大きい。ルーフとそれ以外の4つの窓を同時に開くスイッチもある。要するに、タルガトップのスポーツカーにも対抗できる車だ。

interior

インテリアのレイアウトはエクステリアに比べればまあ普通だ。デジタルセンターメーターはエスパスと共通だし、その下にはオプションのナビを装着するスペースがあり、さらに下には巨大な収納スペースが配されている。困ったことに、スイッチ類は運転席から見づらく、手も届きづらい場所にある。インテリアの質感は特別良いわけではないのだが、噛み合わせの悪いシートバックレバーや取り付けの甘いグローブボックスの蓋は市販モデルでは改善されるそうだ。

プラットフォームはエスパスと共通なのだが、アヴァンタイムは4シーターだ。分割可倒式のリアシートは非常に快適で、ヘッドルーム、ショルダールームともに広大なのだが、レッグルームにはそれほど余裕がない。リアシートへのアクセスも難しく、荷室開口部下端が高いため、せっかく広い荷室があるのに、荷物を積み込むのは大変だ。奇抜なエクステリアデザインの皺寄せが来てしまっている。

エントリーグレードとして2.0Lガソリンターボエンジン、5速ATのモデルも設定される予定なのだが、現時点ではラグナと共通の3.0L V6エンジンを搭載する6速MTモデルのみが設定される。可変バルブ機構を備えたこのエンジンは最高出力213PS/6,000rpm、最大トルク29.1kgf·m/3,750rpmを発揮する。0-100km/h加速は8.5秒を切り、最高速度は222km/hを記録する。

rear

3,000rpmより下だとさほどパフォーマンスは高くないのだが、回転数を上げれば適度にパフォーマンスも上がっていくので、追い越し加速も不足なくできる。6速MTはシフトストロークは長いものの、滑らかで操作も楽しい。ただし、アームレストが変速時に邪魔になることがある。ドライビングポジションも適切で、ステアリングもダイレクトだし、EBA付ABSも装備されているので、運転していて非常に楽しい。シャシはエスパスよりも60%高剛性化されており、重心も低くなっているので、安定性やグリップは見た目から想像されるよりも遥かに良好だ。

快適性は高級セダンと同等で、エンジン音やタイヤノイズは車内ではほとんど聞こえない。サスペンションは乗り心地とスタビリティをうまく両立しており、大きな段差を踏まない限りは非常に滑らかに走る。


Renault Avantime