今回は、英国「Auto Express」によるスバル・レヴォーグのレビューを日本語で紹介します。


Levorg

スバル・レヴォーグは良い意味でも悪い意味でも普通の車とは一線を画している。イギリス仕様車にはエンジンもグレードも一種類しか設定されず、オプション体系も非常にシンプルだ。作りは堅牢で実用性も高く、スポーツワゴン市場におけるスバルの存在感を取り戻せるかもしれない。

シャシ性能も高い。ハンドリングがしっかりしていて敏捷性も高く、4WDのおかげでグリップ性能も高い。作りがしっかりしているので(おそらく)ドイツ車より信頼性は高いだろう。ただ、唯一設定されるエンジンは特別魅力的なわけでも経済的なわけでもなく、CVTは楽しさを削ぎ、車との一体感も薄めている。

インテリアデザインはそれほど新鮮なわけでもなければ面白みがあるわけでもなく、室内空間も特別広いわけではない。ただ、装備内容が充実しており、作りもしっかりしているので、欠点もある程度は相殺されている。

レヴォーグは突然登場した新型車のように思えるかもしれないが、実は旧型スバル・レガシィの実質的な後継車という立ち位置にある。レヴォーグにはステーションワゴンしか設定されず、その名前は「レガシィ」、「レヴォリューション」、「ツーリング」という3つの単語に由来している。

クロスオーバーSUVのアウトバックとコンパクトカーのインプレッサの間にできたギャップを埋めるため、イギリス市場へのレヴォーグの投入が決定された。レヴォーグと競合するのはシュコダ・スペルブやフォード・モンデオだけでなく、プレミアムブランドのBMW 3シリーズツーリングやメルセデス・ベンツ Cクラスエステートやアウディ・A4アバントとも競合する。スバル自身は、シュコダやフォードの高価なライバルではなく、プレミアムブランドの低価格なライバルとして売り込もうとしているようだ。

レヴォーグはあらゆる点で個性的で実直な車だ。レヴォーグにはステーションワゴンしか設定されないし、「GT」のみの単一グレード展開となっている。このグレードにはタッチスクリーンナビやデュアルゾーンオートエアコン、シートヒーター付きレザーシート、前席パワーシート、LEDヘッドランプなど充実した装備が付いてくる。安全装備も充実しており、「アイサイト」というスバルの運転支援システムが付く。

一方、エンジンが一種類しか設定されないのは欠点でもある。唯一設定されるのは最高出力170PSの1.6Lガソリンターボエンジンで、CVTが組み合わせられ、駆動方式は4WDのみとなる。イギリス向けに他のガソリンエンジンやディーゼルエンジンが追加される予定はないため、あくまでニッチ向けのステーションワゴンという位置付けになってしまうだろう。


走行性能
アウトバックやフォレスターをはじめとした最近のスバル車は、走行性能の高さを過剰に強調せず、適度に快適で、ある程度の悪路走破性を兼ね備えた車が多い。

しかし、レヴォーグは方向性が少し変わっている。WRX STIやかつてのレガシィのように、ラリーの伝統を求める走り好きのドライバーに向けた車になっている。実際、レヴォーグのプラットフォームはアウトバックではなくWRX STIのものがベースとなっており、ボンネット上のエアインテークはスポーツワゴンであることを主張している。

しかし、実際の走りは前口上ほど活力があるわけではない。エアインテークは飾りでしかなく、走りはWRX STIとは似ても似つかない。とはいえ、このサイズのステーションワゴンとしては操作性が高い。ステアリングは正確で、ワインディングロードをある程度きびきびと走ることができるし、4WDなのでグリップ性能も絶大だ。ただし、車との一体感や運転する歓びは少ない。公平な目で見ると、公道を走るラリーカーというよりは、あくまでもクルージングカーだ。

操作性が高い代償として、舗装の悪い道ではやや乗り心地が悪い。決して不快なほどではないのだが、アウディ・A4やフォード・モンデオに比べると明らかに劣っている。高速域では十分に落ち着いた走りになるし、風切り音やタイヤノイズも適度に抑えられている。レヴォーグは4WDなのだが、地上高はそれほど高くないため、オフロードを走るのは難しいだろう。

困ったことにレヴォーグにはエンジンが1種類しか設定されない。搭載される1.6Lのシングルターボエンジンは最高出力170PS、最大トルク25.5kgf·mを発揮する。トランスミッションはリニアトロニックと呼ばれるスバルのCVTだ。

マニュアルトランスミッションが設定されないのはスポーツワゴンとしては大きな痛手だ。それに、よりパワフルなガソリンエンジン(追加予定はない)やディーゼルエンジン(追加予定はない)を欲しがる人も多いだろう。

とはいえ、レヴォーグのパワートレインには良いところもある。非常に滑らかだし、巡航中は非常に静かだし、CVTなので変速を体感することはない。低速域では非常にトルキーなので、過剰に期待しない限り十分な加速をしてくれる。スピード狂でなければ十分満足できるパワートレインだ。

ただ、褒められるのはこれくらいで、このエンジンは特別個性があるわけでも、特別速いわけでもない。0-100km/h加速は8.9秒と決して遅くはないものの、同価格帯のステーションワゴンには後れを取っている。また、リニアトロニックはCVTの中ではかなり優秀な部類に入るのだが、それでも車から伝わってくる情報を薄めてしまう。ステップ変速も可能なのだが、それもあまり有用ではない。競合車の多くに採用されているDCTのほうが構造はよっぽど複雑なはずなのだが、応答性や車との一体感はDCTのほうが優れている。

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経済性
レヴォーグにはディーゼルモデルが設定されないので、ランニングコストは競合車に比べると高めとなる。レヴォーグのカタログ燃費は14.1km/L、CO2排出量は164g/kmで、4WD車であることを考慮するとごく平凡な値だ。

しかし、燃費性能はレヴォーグよりもパワーのあるBMW 320iと同等だ。レヴォーグの実用燃費は10~12km/Lとそれほど悪いわけではないのだが、まともなディーゼルが設定されれば20km/L近い燃費性能を実現することも可能だろう。

レヴォーグのCO2排出量だと2017年度の税制の場合で初年度に500ポンドが課税され、それ以降は毎年140ポンドずつ課税される。税額は同クラスのステーションワゴンとそれほど変わらないのだが、競合車にはもっと税額の少ないエンジンもラインアップされている。

イギリスの自動車保険制度だと、レヴォーグは本来グループ24に所属するのだが、運転支援システム「アイサイト」が装備されるおかげでグループ20まで下がる。この結果、保険料はプレミアムブランドのステーションワゴンと比べると安いし、大衆ブランドのステーションワゴンとの保険料の差も小さい。

レヴォーグはニッチなモデルなので、イギリスにおけるリセールバリューはそこそこ期待できる。3年後の買取価格は新車時の39%と予想される。特別優れているわけではないのだが、他の大衆ブランドのステーションワゴンと比べればましだ。


デザイン
デザインの評価は好みによって変わるだろうが、少なくとも個人的には統一感の欠けるデザインだと思う。プロポーションは良いので高級感を漂わせているのだが、やや品のないエアインテークは不似合いだ。ただ、これがスバルのアイデンティティなのかもしれないし、スバルファンには受けるのかもしれない。

インテリアはフォレスターやアウトバックに瓜二つだ。運転席の着座位置はやや高めで、SUVではないことを考えればやや不適当なのだが、ドライビングポジション自体は快適だし、調節幅も大きい。ダッシュボードのデザインは古さと新しさが妙な具合に融合している。ダッシュボード中央にあるタッチスクリーンは先進的なのだが、それ以外の操作系やダッシュボード上部のディスプレイは古臭い。アウディのバーチャルコックピットには遠く及ばない。スバルのインテリアは10年ほど遅れている印象だ。

ただ、レイアウトは非常に直感的で、物理ボタンによる操作でエアコンの設定などを直感的に変更することができる。ただし、ステアリングスイッチの数は多く、やや取っ散らかった印象がある。

質感やフィット&フィニッシュは全体的に良好で、従来のスバル車に比べると大きく高級感を上げている。触れる場所すべてが上質とまでは言えないし、一部のスイッチ類はチープなのだが、頑丈さについては信頼が置けそうだ。

7インチタッチスクリーンナビにはスバルのインフォテインメントシステム「STARLINK」が付いており、Bluetooth、DABラジオ、MirrorLinkにも対応している。最先端のナビとまでは言えないのだが、天気アプリやニュースアプリ、音楽ストリーミングアプリなど、十分な機能は備わっている。

ディスプレイの周りにはショートカットボタンがあり、素早くメニューを選択することができる。シンプルで扱いやすく、動作もそこそこ軽いのだが、たまに重くなって反応するまで少し待たなければいけないこともある。

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実用性
実用性を重視するならフォレスターやアウトバックを選ぶべきなのだろうが、決してレヴォーグの実用性が低いわけではない。ただし、競合車に目を向けると、レヴォーグよりも実用的で室内空間の広い車もいくらか存在する。

ドライビングポジションが高いことを嫌うユーザーも一定数いるだろうが、このおかげで前方視界は非常に良好だ。前方に限らず、視界は全方位にわたって良好で、ライバル車と比較しても駐車は非常に楽だ。収納スペースは十分にある。カップホルダーも十分用意されているし、グローブボックス容量も適度にある。ただし、ドアポケットはそれほど広くない。

レヴォーグの全長は4,690mm、全幅は1,780mm、全高は1,490mmだ。BMW 3シリーズツーリングと比べると、全長はやや長く、全幅はやや狭い。フォード・モンデオエステートと比べると全長がおよそ20cm短い。実際、室内空間もこの2台の中間くらいだ。

レヴォーグの室内空間はシュコダ・スペルブには劣るものの、4人家族には十分な広さだ。リアシートは特段広いわけではないのだが、身長180cm超の大人が乗っても短時間の移動であれば耐えられる。ただし、後部中央席は完全に子供用だ。前席にはまったく狭さを感じないし、大柄な大人でも快適に座ることができる。

荷室容量は522Lとなる。アウディ・A4アバントよりは広いのだが、フォード・モンデオやフォルクスワーゲン・パサートと比べると狭い。6:4分割可倒式リアシートは操作も簡単で、リアシートを倒すと荷室容量は1,446Lまで拡大する。また、床下にも収納スペースが用意されている。


信頼性
レヴォーグにはスバルの「アイサイト」が標準装備される。スバルによると、アイサイトはこのクラスでは最も先進的な運転支援システムだそうだ。デュアルカメラが常時前方の道路状況を監視し、50km/h未満であれば追突事故を完全に防げるそうだ。

それ以上の速度域でも自動的にブレーキが作動するし、車線逸脱警報、ステアリングアシスト、アダプティブクルーズコントロールといった装備も付いている。こういった安全装備も手伝って、レヴォーグはユーロNCAPで5つ星を獲得している。当然、6エアバッグやISOFIXマウントも標準で装備される。

現時点において、イギリスにおけるレヴォーグの売り上げは決して好調とは言えない。ただ、スバルの信頼性評価は高く、レヴォーグも多くのパーツを他のスバル車と共有しているので、レヴォーグの信頼性も高いと言えるだろう。そもそも日本車なので信頼性が高いのは間違いないはずだ。

他のスバル車同様、レヴォーグにも5年16万kmの保証が標準で付いてくる。ドイツ車に比べれば保証が手厚いし、それ以外のメーカーと比べても保証は充実している。ほかに12ヶ月間のボディ錆保証も付いている。

イギリスにおけるスバルのディーラー網はあまり充実していないので、人によってはディーラーに行くだけでかなり時間がかかる場合もあるだろう。それに、点検費用は統一化されていないため、ディーラーによってかかる費用は変わってくる。また、12ヶ月もしくは14,000kmごとに点検する必要があるので、特に長距離を走る人は注意する必要がある。


Subaru Levorg review