今回は、米国「MOTOR TREND」によるロータス・エスプリ V8の試乗レポートを日本語で紹介します。
※内容は1996年当時のものとなります。

エスプリは十分にパワフルな車ではあるのだが、エンジンには物足りなさが残る。高額なミッドシップスーパーカーであるにもかかわらず、エスプリに搭載されるのは4気筒の2.2Lエンジンだ。これでは、エンジン音の響きも物足りないし、自慢するときの言葉の響きも物足りないだろう。
エスプリに搭載される大型ターボチャージャー付きのエンジンにはレース技術が応用されており、130PS/L超という驚異的な値を実現してはいるのだが、それでもコールドスタート時にはガラガラと不快な音を立てるため、どこかが故障しているのではないかとさえ感じてしまう。それに、高回転域ではかなりやかましいし、音も粗い。シャシの設計が見事なだけに、なおのことエンジンに問題があるのが惜しく感じられた。
エスプリは今年の秋で21回目の誕生日を迎え、ついにそのシャシに相応しい心臓を手に入れることとなった。それこそが大排気量のV8エンジンだ。排気量3.5Lのアルミブロックエンジンは、クアッドカム、4バルブシリンダーヘッドで、立ち上がりの早いターボチャージャーが2基搭載される。
750万ドルもの費用がかけられて開発された新エンジンはロータス・エンジニアリングが手掛けている。ロータス・エンジニアリングはコルベットZR1に搭載されているLT5エンジンの開発も手掛けている。
エスプリV8のシニア・プロジェクト・マネージャーを務めるジョン・オーウェン氏によると、LT5の開発から得た最大の教訓は「とにかく単純な構造にすること」だそうだ。最近のエンジンはどれも非常に複雑な設計になっているのだが、複雑性を排除すれば製造コストも減るし、真っ当な設計にできるそうだ。一般的なエンジンには400種類のパーツが使われているのだが、オーウェン氏はパーツ点数を250未満に抑えたという。また、エンジン内部に2.5cm以上の無駄なスペースを作らないというルールも設定したそうだ。
その結果、エスプリのV8エンジンは非常にシンプルかつコンパクトになり、従来の2.2L 4気筒エンジンが収まっていた狭いスペースにちゃんと収まっている。重量は従来型エンジンよりもわずか15%増加しただけなのだが、最高出力は355PSとなり、従来よりも51PSも向上している。それに、簡単にパワーを向上させることができる。ターボチャージャーにインタークーラーを追加し、可変バルブ機構を追加し、(ボアを3mm増やして)排気量を4Lまで増加させれば、500馬力近くまで性能を高めることが可能だ。
あえて不満点を言うなら、エンジンの性能にルノー製5速MTの性能が追いついていない。エスプリV8はそれほどまでに速い。直線やコーナーにおける安定性はフェラーリ・F355の領域にある。0-100km/h加速は公式発表値で4.4秒で、最高速度は282km/hだそうだ。また、かつてのエスプリにはターボラグがあったのだが、エスプリV8ではアクセル操作に対する応答性が明らかに改善している。
新設計エンジンは旧型エンジンよりも圧倒的に扱いやすく、ワインディングロードを走っているとうっかり3速か4速にしたまま変速するのを忘れてしまうかもしれない。ただ、元々あまり滑らかでなかった変速は従来よりもさらに悪くなっており、ギア操作もクラッチ操作も重くなっている。このトランスミッションの欠点はかなり目立ち、運転する楽しさをかなりスポイルしてしまう。
もうひとつ残念なのがV8のエンジン音だ。轟音を期待していたのだが、実際はターボチャージャーに加飾された躍動感のない退屈な音だ。4気筒エンジンだと言われても信じてしまうだろう。
あくまでもロータス・エスプリのエンジンとして考えると、音の悪さは大きな問題になるだろう。しかし、このV8エンジンは一般的な中型セダンのエンジンベイにも収まるサイズに設計されているらしい…。
要するに、エスプリV8という車は、長年改良が続けられてきたエスプリの集大成というわけではなく、高級車向けの新型エンジンの見本となるモデルということだ。このV8エンジンにしろ、6気筒エンジンにしろ、4気筒エンジンにしろ、ロータス・エンジニアリングは独自開発したエンジンを他のメーカーに供給することを厭わないだろう。
結局のところ、ロータスという不安定な会社にとっては、販売台数の見込めない自社製スポーツカーを開発することよりも、安定した下請け仕事のほうがよっぽど重要ということだろう。
Lotus Esprit V8
※内容は1996年当時のものとなります。

エスプリは十分にパワフルな車ではあるのだが、エンジンには物足りなさが残る。高額なミッドシップスーパーカーであるにもかかわらず、エスプリに搭載されるのは4気筒の2.2Lエンジンだ。これでは、エンジン音の響きも物足りないし、自慢するときの言葉の響きも物足りないだろう。
エスプリに搭載される大型ターボチャージャー付きのエンジンにはレース技術が応用されており、130PS/L超という驚異的な値を実現してはいるのだが、それでもコールドスタート時にはガラガラと不快な音を立てるため、どこかが故障しているのではないかとさえ感じてしまう。それに、高回転域ではかなりやかましいし、音も粗い。シャシの設計が見事なだけに、なおのことエンジンに問題があるのが惜しく感じられた。
エスプリは今年の秋で21回目の誕生日を迎え、ついにそのシャシに相応しい心臓を手に入れることとなった。それこそが大排気量のV8エンジンだ。排気量3.5Lのアルミブロックエンジンは、クアッドカム、4バルブシリンダーヘッドで、立ち上がりの早いターボチャージャーが2基搭載される。
750万ドルもの費用がかけられて開発された新エンジンはロータス・エンジニアリングが手掛けている。ロータス・エンジニアリングはコルベットZR1に搭載されているLT5エンジンの開発も手掛けている。
エスプリV8のシニア・プロジェクト・マネージャーを務めるジョン・オーウェン氏によると、LT5の開発から得た最大の教訓は「とにかく単純な構造にすること」だそうだ。最近のエンジンはどれも非常に複雑な設計になっているのだが、複雑性を排除すれば製造コストも減るし、真っ当な設計にできるそうだ。一般的なエンジンには400種類のパーツが使われているのだが、オーウェン氏はパーツ点数を250未満に抑えたという。また、エンジン内部に2.5cm以上の無駄なスペースを作らないというルールも設定したそうだ。
その結果、エスプリのV8エンジンは非常にシンプルかつコンパクトになり、従来の2.2L 4気筒エンジンが収まっていた狭いスペースにちゃんと収まっている。重量は従来型エンジンよりもわずか15%増加しただけなのだが、最高出力は355PSとなり、従来よりも51PSも向上している。それに、簡単にパワーを向上させることができる。ターボチャージャーにインタークーラーを追加し、可変バルブ機構を追加し、(ボアを3mm増やして)排気量を4Lまで増加させれば、500馬力近くまで性能を高めることが可能だ。
あえて不満点を言うなら、エンジンの性能にルノー製5速MTの性能が追いついていない。エスプリV8はそれほどまでに速い。直線やコーナーにおける安定性はフェラーリ・F355の領域にある。0-100km/h加速は公式発表値で4.4秒で、最高速度は282km/hだそうだ。また、かつてのエスプリにはターボラグがあったのだが、エスプリV8ではアクセル操作に対する応答性が明らかに改善している。
新設計エンジンは旧型エンジンよりも圧倒的に扱いやすく、ワインディングロードを走っているとうっかり3速か4速にしたまま変速するのを忘れてしまうかもしれない。ただ、元々あまり滑らかでなかった変速は従来よりもさらに悪くなっており、ギア操作もクラッチ操作も重くなっている。このトランスミッションの欠点はかなり目立ち、運転する楽しさをかなりスポイルしてしまう。
もうひとつ残念なのがV8のエンジン音だ。轟音を期待していたのだが、実際はターボチャージャーに加飾された躍動感のない退屈な音だ。4気筒エンジンだと言われても信じてしまうだろう。
あくまでもロータス・エスプリのエンジンとして考えると、音の悪さは大きな問題になるだろう。しかし、このV8エンジンは一般的な中型セダンのエンジンベイにも収まるサイズに設計されているらしい…。
要するに、エスプリV8という車は、長年改良が続けられてきたエスプリの集大成というわけではなく、高級車向けの新型エンジンの見本となるモデルということだ。このV8エンジンにしろ、6気筒エンジンにしろ、4気筒エンジンにしろ、ロータス・エンジニアリングは独自開発したエンジンを他のメーカーに供給することを厭わないだろう。
結局のところ、ロータスという不安定な会社にとっては、販売台数の見込めない自社製スポーツカーを開発することよりも、安定した下請け仕事のほうがよっぽど重要ということだろう。
Lotus Esprit V8
90年代の日本車や過去の名車の記事があるとネタが広がると思います。