今回は、カナダ「Driving」によるインフィニティ・M45 Sport(日本名: 日産・フーガ)の試乗レポートを日本語で紹介します。


M45

「スポーツセダン」に乗ってがっかりすることは多い。大半のスポーツセダンは普通のセダンを飾り立てただけの車でしかない。しかし、インフィニティ・M45に乗ってもがっかりすることはなかった。M45は直線だけでなくコーナーでも速かった。

見た目もそれらしく、周りから見ても普通のセダンではないことが分かるはずだ。アグレッシヴな見た目の通り、搭載しているエンジンも強力だ。M45には最高出力340PS、最大トルク47.0kgf·mを発揮する4.5L DOHC V8エンジンが搭載される。1,812kgという車重を考えても十分なスペックだ。0-100km/h加速は6.1秒で、80-120km/h加速は5.1秒を記録する。

スペック以上に実際に感じるパフォーマンスが印象的だった。5速ATはギア比も適切だし、マニュアルモードも操作しやすいし、変速時のショックも少ない。

音も魅力のひとつだ。クルージング中は静かなのだが、アクセルを踏み込むと見事な咆哮が響きわたる。まるでスポーツカーだ。

ホイールベースが2,900mmと長く、フロントにダブルウィッシュボーン式サスペンション、リアにマルチリンク式サスペンションが採用されているため、快適性と操作性を高い次元で両立できている。高速道路での直進性も高いのだが、いざコーナーを走らせると、かなりの速度で走らせてもフラットな状態を保ってくれる。アンダーステアやオーバーステアも起こりにくい。アンダーステアもしくはオーバーステアが起きたとしても、ちゃんとVDCが介入して立て直してくれる。

スポーツグレードのM45Sには適度なスリルもある。サスペンションはハードになり、リアアクティブステアも備わるため、応答性は標準車より明らかに改善している。リアアクティブステアシステムはコンピューター制御されており、後輪は走行状況に応じて前輪と反対方向(ターンインを改善する)もしくは同一方向(横Gを抑える)に旋回する。これによって限界域付近でのスタビリティが飛躍的に向上する。

高級セダンなので装備内容も豊富だ。運転席は10ウェイシート(助手席は6ウェイ)となっており、シートヒーターおよびシートクーラーが付く。14スピーカーのBOSEオーディオシステムも装備される。リアシート用DVDエンターテイメントシステムも付いており、ゲームに使える入力端子も付いている。

先進装備も充実しており、バックカメラやアダプティブキセノンヘッドランプ(ステアリングの向きに応じてヘッドランプの照射方向が変わる)、車線逸脱警報も装備される。中でも凄いのがインテリジェントクルーズコントロールだ。設定した速度で走ってくれるだけでなく、前方を走る車と一定の距離を保ってくれる。前走車との距離が短いときは自動的にブレーキがかかることもある。ただし、ブレーキのかかりかたはあまり滑らかではないため、同乗者に文句を言われてしまった。

それ以外の問題点を指摘すると、チタンインテリアはやや地味だし、アナログ時計は位置が低くて走行中に見づらいし、ペダルの位置調節もできない。特にペダル調節に関しては今後低価格帯の車にも採用されていくことだろう。

また、リアシートを倒すこともできない(ボディ剛性を保つためには仕方ないのかもしれない)。長尺物を積載するためのトランクスルー機構は備わるのだが、トランクの開口部は狭いし、荷室容量も422Lとさほど広くはない。

多くの自称「スポーツセダン」とは違い、M45Sはスポーツセダンの名に恥じないだけの性能を備えている。コーナーを素早く抜けることも、街中を快適に走ることもできてしまう。この車との時間は楽しかった。高級感と高い走行性能を見事に両立している。


Car Review: 2006 Infiniti M45 Sport