今回は、米国「Car and Driver」によるスバル・インプレッサ ハッチバックの試乗レポートを日本語で紹介します。


Impreza

スバルはいろいろな意味で変わったメーカーだ。一例を挙げると、セダンとワゴンの販売比率が一般的な自動車メーカー(ボルボは例外だが)とは真逆だ。インプレッサの場合、売り上げの30%がセダンで、70%がワゴン(業界用語で表現すれば5ドア)だ。一方、ホンダは新型シビックハッチバックの販売比率が15%程度になると予想している。スバルの購入層がハッチバックを好んでいることは明らかであり、新型インプレッサの開発に際しても5ドアモデルに力が入れられている。

新型インプレッサでは旧型の欠点が着実に潰されている。例えば、旧型のテールランプは大きく、リアハッチの開口面積をわずかに狭めていた。新型インプレッサのテールランプはレンズがハッチの開口部分で分かれるような設計となり、リアハッチ最狭部の幅が従来よりも10cm広くなっている。取るに足らない変化に思えるかもしれないが、これだけでも荷室へのアクセスが格段にしやすくなっている。

また、新型インプレッサには新設計のスバルグローバルプラットフォームが採用されており、トレッドが拡大した結果、荷室面積が広くなっている。ハッチバックの荷室容量は従来型より85L増加しており、通常時でとうもろこし827本、リアシートをたたんだ状態でとうもろこし2,472本を収納することができる。スバルは実際にとうもろこしの模型を使ってこれを証明した。こんなことをしたのは、新型インプレッサがとうもろこしで有名なインディアナ州で製造されるからだ。

rear

新プラットフォームによる恩恵は大きい。衝突安全性も上がっているし、剛性向上によって走行性能も向上している。剛性の向上には接着剤が合計7mにわたって使用されていることや、高張力鋼板の使用割合が増加していることも寄与している。新型インプレッサにはFB20型 水平対向4気筒 2.0L 直噴エンジンの改良版が搭載される。感情が沸き立つようなエンジンではないのだが、最高出力154PS、最大トルク20.0kgf·mという適度なパフォーマンスが滑らかに発揮される。トランスミッションにはCVTと5速MTが設定される。MTモデルは遅れて登場する予定だ。5速では足りないように思うかもしれないが、少なくともスバルのMTには定評がある。

2013年にはアウトバックの弟分にあたるインプレッサをベースとしたクロスオーバーSUV、クロストレック(日本名: XV)が発売され、インプレッサはより都会的なモデルとなって差別化が進んだ。新型インプレッサは乗り心地やハンドリングがさらに洗練され、居住空間も拡大し、装備内容も充実している。

新プラットフォームの採用によって重心は従来型よりも5mm低くなっている。車重は最も軽量なモデルが1,383kgで、大径ホイールを履く「Sport」が1,451kgとなる。ストラット式フロントサスペンション、マルチリンク式リアサスペンションが取り付けられるサブフレームの剛性が強化されたことで、ロールやピッチは最小限に抑えられているが、18インチホイールを装着するモデルでも乗り心地はそれほど悪くない。BRZ譲りのクイックなステアリングのおかげでターンインも正確に行える。パワーこそ平凡なのだが、出来の良いシャシや剛性感のあるブレーキのおかげで、運転していて楽しい。

高速道路を走ると、遮音材の追加の効果やファンの回転音が削減された新設計エアコンの恩恵が感じられる。もっとも、静粛性が改善しているとはいえ、同クラスの中で格段に静かなわけではない。

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インテリアは決して先進的なわけではないのだが、少なくとも現代の水準に追いついてはいる。オプションでTomTomベースのナビゲーションシステムやHarman/Kardonのオーディオシステムを選択することもできる。旧型インプレッサに比べると質感も大幅に向上している。内装に使われている材質はグレードが上がるにつれて明らかに良くなっていく。

インプレッサの購入者の平均年齢は32歳らしく、ミレニアル世代はセダンを選ぶ傾向にあるそうだ。ただし、実際にショールームに足を運んだ客のほとんどはハッチバックを選択しているらしい。しかし不思議だ。マツダ3(日本名: アクセラ)のハッチバックも同じくらい実用的なのだが、スバルと違ってアメリカではそれほど人気がない。

新型インプレッサには2WDモデルと4WDモデルが設定され、平均以上のハンドリング、平均以上の装備が付いて、価格は20,000ドル~25,500ドル程度となる。おそらくは新型インプレッサも成功することだろう。


2017 Subaru Impreza 5-Door