今回は、英国「Auto Express」によるホンダ・S2000の試乗レポートを紹介します。

※内容は2003年当時のものです。


S2000

S2000の原点はホンダの50周年を祝うワンオフモデルだった。初期のS2000は完璧な車ではなかった。それゆえ、生産台数が少ない車であるにもかかわらず、1998年の登場以来毎年のように改良を続けてきた。

そして2004年、S2000は最大の変更を行った。エンジンの排気量を増やし、サスペンションを改良し、デザインも一部変更して6速MTにも手が加えられた。今回はほとんどフルモデルチェンジとも言えるような変更を行った新型S2000にアメリカで試乗した。

新型は衝撃的なほどに変貌している。走り出したその瞬間、ホンダの開発陣が本当に作りたかったのはこれだったのか、と直感する。車内は依然としてスキニーデニムのようにタイトなのだが、エルゴノミクス面はかなりよくできている。

レザーシートの質感の良さの次に目を引いたのは、レッドラインが9,000rpmから8,200rpmまで下げられたタコメーターだった。この理由はサーキットで運転してみないと分からない。

発売以来、S2000のオーナーはずっと中回転域の性能不足を嘆いていた。ホンダはその問題に対処するため、排気量を2.2Lまで増やしてトルクを向上させた。従来よりは回らなくなってしまったのだが、それは悪いことではない。

最高出力は従来と同じ243PSなのだが、発生回転数は8,300rpmから7,800rpmまで下がっているし、最大トルクは21.1kgf·m/7500rpmから22.2kgf·m/6,500rpmまで向上している。ただし、加速性能はほとんど変わっておらず、0-100km/h加速6.0秒も最高速度250km/hも数字的には変わっていない。

しかし、4,000rpmまで回すと明らかに力強くなっていることに気付く。さらに6,000rpmまで回せば可変バルブタイミング機構VTECにより超時空的な加速を見せる。高回転まで回さなければいけないという性格自体は変わっていないのだが、新型ではさらなるスリルが付加されている。

6速MTも完璧により近付いた。ギア比はロングになり、変速感を向上するためにシンクロメッシュも改良されている。その結果、変速はさらに正確に、明確になり、ドライバーの意図した通りの変速をしてくれるようになった。

それ以外にステアリングやサスペンションも改良されている。ステアリングはよりシャープになり、フロントサスペンションは強化された。リアは地上高が低くなり、スプリングがわずかにソフトになっている。おかげで、限界域での急なオーバーステア傾向はなくなった。

今回の改良により、新型S2000は運転するのがかなり楽しい車になった。ポルシェ・ボクスターも楽しい車なのだが、S2000はそれ以上に楽しい。

排気量の増加はS2000の性格を劇的に変化させた。低回転域での応答性が向上し、限界域での挙動も改善したことで、2.0L時代よりも扱いやすい車になっている。ただ、残念なことにこの2.2L仕様がイギリスに輸入される予定はない。


Honda S2000 2.2