今回は、米国「Car and Driver」によるビュイック・エンビジョンの試乗レポートを紹介します。

ビュイックは近年、アヴィスタやアヴニールコンセプトなどの華々しいモデルを立て続けに発表しているのだが、ビュイックが生み出すモデルすべてが劇的に変化したわけではない。中国製の新型クロスオーバーSUV、エンビジョンもそんなモデルのひとつだ。果たしてこの新型モデルは、激戦区のSUV市場において存在感を示すことができるのだろうか。
エンビジョンはシボレー・エクイノックスとプラットフォームを共有し、小型SUVのアンコールと3列シートSUVのアンクレイブの間を埋めるモデルとなる。今回は2.0Lガソリンターボエンジンを搭載するモデルに試乗し、その実力を確認した。
ビュイックがライバルとして想定しているモデル、アキュラ・RDXやリンカーン・MKCとはボディサイズもほとんど変わらない。しかし、35,000~50,000ドルという価格帯を考えると、アウディ・Q5やBMW X1およびX3、あるいはGMC アカディアなどとも競合するかもしれない。
ビュイックの平凡なデザインはSUVのたくさん停まっている駐車場に停めれば埋もれてしまうだろう。エンビジョンには光り輝く縦桟グリル以外にほとんど個性がなく、特に落ち着いたシルバーメタリック塗装が施された試乗車は没個性的だった。
今回試乗したのは45,885ドルの最上級グレード「Premium II」で、1,495ドルのパノラミックサンルーフと1,545ドルのドライバーコンフィデンスパッケージ(アダプティブクルーズコントロール、エマージェンシーブレーキ、サラウンドビューカメラ)が装備されていたため、5万ドル近い値段になっていた。

「Premium」および「Premium II」には最高出力256PS/5,500rpm、最大トルク35.9kgf·m/2,000rpmを発揮する2.0Lターボエンジンが搭載され、コーナリング中に後輪の左右駆動力配分を変更するトルクベクタリングシステム付きの4WDシステムも備わる。トランスミッションは6速ATのみが設定される。変速は滑らかで、どんどんとシフトアップしていく性格のATだ。スポーツモードやパドルシフトはなく、マニュアル変速はシフトレバーで行う。
GMのHiPer Strut フロントサスペンションをはじめ、シャシには先進技術も投入されているのだが、走行性能の高さよりも安定性や快適性に重きが置かれているようだ。アクセルを踏み込んでもトルクステアはまったく発生しないし、ステアリングはフィールこそ乏しいものの応答性は高い。トルクベクタリングシステムのおかげでアンダーステアも抑えられている。
サスペンションがソフトなのでややふわふわした感じはあるのだが、そこそこのスピードで走らせてもハンドリングは比較的安定している。Premium系グレードは低グレードより1インチアップした235/50R19 ハンコック ventus S1 noble2 オールシーズンタイヤを履く。飛ばすとすぐにグリップは尽きてしまうのだが、サスペンションのおかげもあって舗装の悪い道には強い。大径ホイールを履いたクロスオーバーSUVの多くが硬いセッティングである中、ソフトな印象のエンビジョンの個性は際立っている。
110km/hからの制動距離は48mで、同クラスのクロスオーバーSUVの平均よりは数メートルほど短い。試乗車の車重は1,845kgで、0-100km/h加速は7.1秒、0-400m加速は15.3秒(146km/h)を記録した。スキッドパッドテストにおける横Gは0.81Gだったが、トラクションコントロールは完全にオフにできなかったため、すべての力を出しきることはできなかった。
カタログ上のシティ/ハイウェイ燃費はそれぞれ8.6km/L/11.1km/Lで、オフにできないアイドリングストップシステムも付いていたのだが、実測値は平均8.6km/Lという微妙な値だった。もっとも、穏やかな運転をすればもっと良い値が出るだろう。

無個性なエクステリアと違い、インテリアはそこそこ個性的だ。ただし、同価格帯のBMWやアウディほど質感が高いわけではない。メーター部分は8.0インチの液晶ディスプレイとなっている。ダッシュボード中央にも同じサイズのディスプレイが鎮座しており、インパネは使いやすい設計となっている。Android AutoおよびApple CarPlay対応のIntelliLinkシステムや OnStar 4G LTE Wi-Fi 機能も標準で備わる。ダッシュボードにはアナログ時計も付いているのだが、ディスプレイに表示されるデジタル時計から10cmと離れていない場所にある。
試乗車は黒のレザーインテリアで全体的には暗めの印象だったのだが、ダッシュボードやドアの明るい木目調パネルのおかげでやや印象が和らいでいた。車幅が1,839mmあるにもかかわらず、やや閉塞感があり、リアシートに3人が横並びで座ると窮屈だ。ただ、リアシートはスライドもリクライニングもできるため、2人座る分には十分に広い。荷室容量は765Lと広く、6:4分割可倒式リアシートを倒すと1,614Lとなる。フロントシートは豪華なのだが、サポート性には欠けている。
静粛性は特段優れているというほどではないのだが、アクティブノイズキャンセリングシステムにより不快な騒音は抑えられていたし、遮音性も高かったため、2.0Lエンジンの音も気にならなかった。
装備内容はグレードによって大きく変わるのだが、34,990ドルのベースグレードでも装備は豊富で、10エアバッグやフロントシートヒーター、デュアルゾーンオートエアコン、バックカメラは標準装備となる。5万ドル近い最上級グレードの「Premium II」にはありとあらゆる装備が付く。BOSEプレミアムオーディオシステム付きのナビやシートの振動によって危険を伝えてくれる運転支援システム、リアシートヒーター、フロントシートベンチレーション、ブラインドスポット警報、車線逸脱警報、ヘッドアップディスプレイ、オートマチックパーキングアシスト、アダプティブHIDヘッドランプなどが装備される。これよりもやや装備内容が少ない「Premium I」は43,245ドルで購入できる。
エンビジョンと価格帯の被るクロスオーバーSUVは数多くあり、多くの人はビュイックよりも個性的な他のモデルを選ぶだろう。しかし、ゆったり快適に走りたい人にとっては、ひょっとしたらエンビジョンがぴったりなのかもしれない。
2017 Buick Envision 2.0T AWD

ビュイックは近年、アヴィスタやアヴニールコンセプトなどの華々しいモデルを立て続けに発表しているのだが、ビュイックが生み出すモデルすべてが劇的に変化したわけではない。中国製の新型クロスオーバーSUV、エンビジョンもそんなモデルのひとつだ。果たしてこの新型モデルは、激戦区のSUV市場において存在感を示すことができるのだろうか。
エンビジョンはシボレー・エクイノックスとプラットフォームを共有し、小型SUVのアンコールと3列シートSUVのアンクレイブの間を埋めるモデルとなる。今回は2.0Lガソリンターボエンジンを搭載するモデルに試乗し、その実力を確認した。
ビュイックがライバルとして想定しているモデル、アキュラ・RDXやリンカーン・MKCとはボディサイズもほとんど変わらない。しかし、35,000~50,000ドルという価格帯を考えると、アウディ・Q5やBMW X1およびX3、あるいはGMC アカディアなどとも競合するかもしれない。
ビュイックの平凡なデザインはSUVのたくさん停まっている駐車場に停めれば埋もれてしまうだろう。エンビジョンには光り輝く縦桟グリル以外にほとんど個性がなく、特に落ち着いたシルバーメタリック塗装が施された試乗車は没個性的だった。
今回試乗したのは45,885ドルの最上級グレード「Premium II」で、1,495ドルのパノラミックサンルーフと1,545ドルのドライバーコンフィデンスパッケージ(アダプティブクルーズコントロール、エマージェンシーブレーキ、サラウンドビューカメラ)が装備されていたため、5万ドル近い値段になっていた。

「Premium」および「Premium II」には最高出力256PS/5,500rpm、最大トルク35.9kgf·m/2,000rpmを発揮する2.0Lターボエンジンが搭載され、コーナリング中に後輪の左右駆動力配分を変更するトルクベクタリングシステム付きの4WDシステムも備わる。トランスミッションは6速ATのみが設定される。変速は滑らかで、どんどんとシフトアップしていく性格のATだ。スポーツモードやパドルシフトはなく、マニュアル変速はシフトレバーで行う。
GMのHiPer Strut フロントサスペンションをはじめ、シャシには先進技術も投入されているのだが、走行性能の高さよりも安定性や快適性に重きが置かれているようだ。アクセルを踏み込んでもトルクステアはまったく発生しないし、ステアリングはフィールこそ乏しいものの応答性は高い。トルクベクタリングシステムのおかげでアンダーステアも抑えられている。
サスペンションがソフトなのでややふわふわした感じはあるのだが、そこそこのスピードで走らせてもハンドリングは比較的安定している。Premium系グレードは低グレードより1インチアップした235/50R19 ハンコック ventus S1 noble2 オールシーズンタイヤを履く。飛ばすとすぐにグリップは尽きてしまうのだが、サスペンションのおかげもあって舗装の悪い道には強い。大径ホイールを履いたクロスオーバーSUVの多くが硬いセッティングである中、ソフトな印象のエンビジョンの個性は際立っている。
110km/hからの制動距離は48mで、同クラスのクロスオーバーSUVの平均よりは数メートルほど短い。試乗車の車重は1,845kgで、0-100km/h加速は7.1秒、0-400m加速は15.3秒(146km/h)を記録した。スキッドパッドテストにおける横Gは0.81Gだったが、トラクションコントロールは完全にオフにできなかったため、すべての力を出しきることはできなかった。
カタログ上のシティ/ハイウェイ燃費はそれぞれ8.6km/L/11.1km/Lで、オフにできないアイドリングストップシステムも付いていたのだが、実測値は平均8.6km/Lという微妙な値だった。もっとも、穏やかな運転をすればもっと良い値が出るだろう。

無個性なエクステリアと違い、インテリアはそこそこ個性的だ。ただし、同価格帯のBMWやアウディほど質感が高いわけではない。メーター部分は8.0インチの液晶ディスプレイとなっている。ダッシュボード中央にも同じサイズのディスプレイが鎮座しており、インパネは使いやすい設計となっている。Android AutoおよびApple CarPlay対応のIntelliLinkシステムや OnStar 4G LTE Wi-Fi 機能も標準で備わる。ダッシュボードにはアナログ時計も付いているのだが、ディスプレイに表示されるデジタル時計から10cmと離れていない場所にある。
試乗車は黒のレザーインテリアで全体的には暗めの印象だったのだが、ダッシュボードやドアの明るい木目調パネルのおかげでやや印象が和らいでいた。車幅が1,839mmあるにもかかわらず、やや閉塞感があり、リアシートに3人が横並びで座ると窮屈だ。ただ、リアシートはスライドもリクライニングもできるため、2人座る分には十分に広い。荷室容量は765Lと広く、6:4分割可倒式リアシートを倒すと1,614Lとなる。フロントシートは豪華なのだが、サポート性には欠けている。
静粛性は特段優れているというほどではないのだが、アクティブノイズキャンセリングシステムにより不快な騒音は抑えられていたし、遮音性も高かったため、2.0Lエンジンの音も気にならなかった。
装備内容はグレードによって大きく変わるのだが、34,990ドルのベースグレードでも装備は豊富で、10エアバッグやフロントシートヒーター、デュアルゾーンオートエアコン、バックカメラは標準装備となる。5万ドル近い最上級グレードの「Premium II」にはありとあらゆる装備が付く。BOSEプレミアムオーディオシステム付きのナビやシートの振動によって危険を伝えてくれる運転支援システム、リアシートヒーター、フロントシートベンチレーション、ブラインドスポット警報、車線逸脱警報、ヘッドアップディスプレイ、オートマチックパーキングアシスト、アダプティブHIDヘッドランプなどが装備される。これよりもやや装備内容が少ない「Premium I」は43,245ドルで購入できる。
エンビジョンと価格帯の被るクロスオーバーSUVは数多くあり、多くの人はビュイックよりも個性的な他のモデルを選ぶだろう。しかし、ゆったり快適に走りたい人にとっては、ひょっとしたらエンビジョンがぴったりなのかもしれない。
2017 Buick Envision 2.0T AWD