今回は、米国「Car and Driver」によるキア・ソウルターボの試乗レポートを紹介します。


Soul

キアやヒュンダイはスポーツコンパクト市場において苦戦している。フォルクスワーゲン・ゴルフGTI やフォード・フィエスタSTおよびフォーカスSTのような優秀なモデルが他にあることを考えればそれも当然かもしれない。これまで韓国メーカーは、ヒュンダイ・ヴェロスターターボキア・フォルテSXターボなどのスポーツコンパクトを投入してきたのだが、いずれもステアフィールや変速特性などにホットハッチとしてどうかと思うような欠点を持っていた。

一見すると、キア・ソウルに新設定されたターボモデルも同じような道を辿るように思えた。赤いアクセントラインは GTI を彷彿とさせるし、フラットボトムステアリングにはいかにもな雰囲気があるし、18インチ大径ホイールのおかげでボクシーなソウルもそれなりにスポーティーに見える。搭載される1.6L 直4ターボエンジンは最高出力204PS、最大トルク27.0kgf·mを発揮する。特段優れたスペックとは言えないものの、かといってお粗末な値というわけでもない。

キアはこのソウルがスポーツコンパクトでもホットハッチでもないということを強調している。ソウルはマツダ・CX-3やシボレー・トラックス、フィアット・500Xなどと競合するクロスオーバーだそうだ。コンパクトクロスオーバー市場においてソウルは現時点でも最も売れているモデルなのだが、キアはさらなる高みを目指しているようだ。これまでにも、パフォーマンスの不足や4WDモデルがないことについて不満が出ていたそうだ。パッケージングやコストの面で4WDモデルを新設定するのは難しいようだが、1.6Lターボエンジンを搭載する最上級グレード「!」("Exclaim"と発音するそうだ)の追加は実現した。

キア・オプティマやヒュンダイ・ツーソンおよびソナタと共通のこのエンジンには7速DCTのみが組み合わせられ、ターボモデルにはMTが設定されない。キアはこの理由として、MT需要の低下やコストの問題を挙げている。もし1.6LターボとMTの組み合わせを求めるのであれば、キア・フォルテSXターボの6速MTを選択する手もある。

上述したように、ソウルターボのデザインにはスポーティーな雰囲気が漂っているのだが、かといってこれが本気のスポーツモデルというわけではない。サスペンションは標準モデルと同じくフロントストラット、リアトーションビームだ。ただし、ターボモデルはスプリングとダンパーのセッティングがわずかに変更されているそうだ。それに、45扁平のオールシーズンタイヤと18インチホイールはいずれも163PSの2.0Lモデルにオプション設定されるものとまったく同じだ。フロントブレーキローターはわずかに大型化して12インチになっているのだが、リアの10.3インチディスクは他のモデルと変わらない。

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とはいえ、ホットハッチのような走行性能を求めない限り、ソウルターボの走りはそこそこスポーティーで好印象だ。1.6Lターボエンジンは滑らかで元気があるし、中域トルクも強力で、エンジン音も適度だ。DCTも滑らかだし変速も早く、低速域でギクシャクすることもあまりない。残念ながらパドルシフトは付いていないのだが、シフトレバー操作でマニュアル変速をすることはできる。

スポーツモードにすると変速タイミングやスロットルレスポンスがややアグレッシヴになる。ノーマルモードだとシフトダウンを躊躇いがちになるし、その結果ターボラグが気になるようになるので、スポーツモードのほうが良いように感じた。また、スポーツモードにするとステアリングがやや重くなるのだが、いずれのモードでもフィードバックや安定感には欠けている。

とはいえ、剛性は高いし、ダンピング性能も優れているため、乗り心地とハンドリングはうまく両立されている。コーナリング中のロールはうまく抑えられているし、タイヤもグリップを十分発揮してくれる。それに、トルクステアがほとんど起こらない点は賞賛に値する。

ソウルはフォルクスワーゲン・ゴルフやマツダ3(日本名: アクセラ)のような優秀なコンパクトカーと比較すると完成度で劣るのだが、コンパクトクロスオーバーSUVの中で見ると、ソウル以上の走りを見せてくれるのはマツダ・CX-3くらいしかない。ちなみに、CX-3にはソウルにはない4WDモデルも設定される。

実用性や室内空間に関しては、CX-3をはじめとしたほとんどのコンパクトクロスオーバーSUVに勝っている。室内は開放感があるし視界も良い。リアシートは広大でヘッドルームにも余裕があるし、荷室はそのままでも十分広いうえ、リアシートを畳めばさらに広大なスペースが生まれる。リアシートを畳んだ状態だと荷室容量は1,727Lとなる。これは実用性の高さに定評のあるホンダ・HR-V(日本名: ヴェゼル)にも勝る数字だ。

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価格の安さもソウルターボの強みで、価格設定は23,500ドルからとなる。2.0L自然吸気エンジンを搭載するモデルとの価格差はわずか1,350ドルだ。装備内容も充実しており、全車にプッシュエンジンスイッチが備わり、Android AutoおよびApple CarPlayにも対応している。試乗車にはパノラミックサンルーフやブラインドスポットモニター、ナビ、harman/kardonオーディオシステムも付いていたのだが、それでも値段は27,620ドルとリーズナブルだ。インテリアは標準モデル同様使いやすく、3万ドル未満の車としては質感もトップクラスだ。

ターボを選ぶべきか悩んでいるのなら、燃費も考慮してみるといい。最高出力は2.0Lモデルよりも41PS、ノンターボの1.6Lモデルよりも72PS高いにもかかわらず、ターボモデルのEPA燃費はシティ11.1km/L、ハイウェイ13.2km/Lで、ほかのエンジンを搭載するモデルよりも燃費性能が優れている。

キアの顧客は比較的価格に敏感なので、今後もターボよりも安価な自然吸気モデルのほうが売れ続けるだろう。いずれのモデルを選ぼうとも、キア・ソウルは魅力的で実用的な車だ。

ソウルターボにも独特の魅力がある。本気のホットハッチではないのだが、普通のソウルよりも刺激的で楽しく、それでいてもともとあった実用性を犠牲にしてはいない。もっと本格的なモデルを欲している人も悲観することはない。ひょっとしたら、250馬力・3ドアのトラックスターが市販化されるかもしれない。


2017 Kia Soul Turbo