今回は、米国「MOTOR TREND」によるホンダ・シビックハッチバックの試乗レポートを紹介します。


Civic Sport Touring

セダンよりもスポーティーな雰囲気が漂う新型シビックハッチバックについては、ホンダ自身、大ヒットを期待しているわけではないそうだ。しかし、ひょっとしたらホンダの予想は覆るのかもしれない。ホンダは既に新型シビックセダンを30万台以上売り上げているのだが、2017年1月に発売予定のシビックハッチバックの年間売上目標台数は5万台だそうだ。

シビックハッチバックはグローバルモデルであり、イギリスのスウィンドン工場で製造されているため、アメリカでは輸入販売となる。シビックハッチバックの米国投入の背景には、おそらく米国内でのハッチバック人気の盛り上がりがあるのだろう。それに、シビックハッチバックの荷室は一般的なSUVよりもいくらか広い。発表後のソーシャルメディアでの反応は賛否両論あったのだが、個人的には意外にヒットするのではないかと予想している。

セダンとプラットフォームを共有する5シーター5ドアの本モデルはコンパクトハッチバックの中で荷室容量が最大だ(通常時728L、リアシートを畳んだ状態で1,308L)。つまり、フォード・フォーカスやマツダ3(日本名: アクセラ)、そしてフォルクスワーゲン・ゴルフに勝っているということだ(ただし、シートを畳んだ状態だとゴルフの荷室のほうが広い)。シビックセダンのトランク容量が428Lであることを考えるとかなりの差があるようにも思えるかもしれないが、セダンとハッチバックでは荷室容量の計算方法に違いがあることを考慮する必要がある(セダンの場合は出っ張りなどが考慮に入るが、ハッチバックやステーションワゴンは縦x横x高さで単純計算される)。

リアハッチはかなり傾斜しているため、ボクシーな形状の一般的なハッチバックとは一線を画している。その結果、リアハッチの開口面積はかなり大きい(960mm x 1,120mm)。マウンテンバイクやベビーカーやゴルフバッグなどの大荷物も楽に入れることができる。また、荷室には一般的なかさばるトノカバーの代わりに、サイドに格納することができる布状のトノカバーを装備している。そのため、わざわざトノカバーを車から外さなくても大きな荷物を搭載することができる。

グレード構成はセダンと同じで、「LX」、「EX」、「EX-L Navi」が設定される。全グレードに1,000ドルのオプションとしてホンダセンシング(アダプティブクルーズコントロール、自動ブレーキ、車線維持支援システムなど)が用意される。また、「LX」をベースとした「Sport」、「EX-L Navi」をベースとした「Sport Touring」というグレードも設定される。この2グレードにはインテリアのレッド照明、アルミニウム・カーボンパネル、グロスブラックエクステリアガーニッシュが装備される。

全グレードにCVTが設定され、6速MTは「LX」と「Sport」のみに設定される。また、「Sport Touring」のCVTにはパドルシフトも付く。エンジンは全グレード1.5L 4気筒直噴ターボエンジンのみの設定なのだが、最高出力はグレードやトランスミッションにより異なる。「LX」、「EX」、「EX-L Navi」は最高出力176PS、最大トルク22.4kgf·m(「LX」のMT車は23.1kgf·m)なのだが、「Sport」および「Sport Touring」は最高出力182PSとなる(最大トルクはCVTの「Sport Touring」が23.1kgf·m、MTの「Sport」が24.5kgf·m)。

シティ/ハイウェイ/複合燃費は、「Sport Touring」がそれぞれ12.8/15.3/13.6km/L、「LX」および「EX」 CVTが13.2/17.0/14.5km/Lとなる。価格帯は、20,535ドル(「LX」 6MT)から29,135ドル(「Sport Touring」)までとなる。

interior

インテリアに関しては基本的にシビックセダンと同じなのだが、最大の違いはリアのレッグルームだ。ハッチバックはセダンよりもレッグルームが40mm短くなっている。センターカラーディスプレイもセダン同様に装備されており、ナビはHonda AppsやApple CarPlay/Android Autoに対応している。

「LX」と「Sport」はエンジン始動に鍵が必要だが、それよりも上のグレードにはプッシュエンジンスイッチが装備される。「LX」および「Sport」はエアコンがシングルゾーンとなり、ディスプレイは5.0インチで、160W 4スピーカーオーディオシステムとUSBポート1つが付く。一方、「EX」および「EX-L Navi」にはデュアルゾーンエアコンやフロントシートヒーター、7.0インチディスプレイ、180W 8スピーカーオーディオシステム(SiriusXMおよびHDラジオ対応)、そしてUSBポート2つが付く。「Sport Touring」には540W 12スピーカーオーディオシステムおよびリアシートヒーターも付く。

「Sport」はベースグレードをベースとしているため、装備に乏しい。「Sport」ではホンダセンシングが選択できないし、上級オーディオを装備することもできない。ただし、シフトレバーやステアリングは本革巻きだし、6MT車のエンジン性能は最も高い。それでも価格は安く設定されており、6MT車が22,135ドル、CVT車が22,935ドルとなる。一方で、29,135ドルの全部乗せ最上級グレード「Sport Touring」にはLEDヘッドランプをはじめとした各種贅沢装備が備わっている。

シビックのサスペンションはどれもフロントがストラット式、リアがマルチリンク式なのだが、ハッチバックではフロントスタビライザーが大型化され、ダンピングレートが変更されている。ステアリングのセッティングも変更されており、セダンよりもわずかに操作性が向上している。シビックのステアリングギア比は基本的に10.9:1なのだが、「Sport」および「Sport Touring」は例外的に11.1:1となっている。

今回は「EX」と「Sport」6MTに試乗した。最初は「Sport」に試乗したのだが、専用サスペンションチューニングが施され、235/40R18タイヤを履くこのモデルは、通常のシビックセダンと比べて安定性が高く、より鋭い印象だった。グリップの太い本革ステアリングは使い心地が良かったのだが、マツダ3ほどフィードバックに富んでいるわけではなかった。グリップやコーナリング性能に関しては普通のシビックセダンとさほど変わらなかったのだが、全体的にシャシの完成度は高く、シビックタイプRほどスパルタンでもなく、ほどよく楽しかった。

クラッチは非常に軽く、繋がる位置を覚えるためには数回の試行錯誤が必要なのだが、すぐに慣れたし、渋滞した街中でも山道でも扱いやすい。ギアも軽かったし、ホンダらしく非常に操作しやすかった。

1.5Lターボエンジンは最大トルクが2,000rpm未満から5,000rpmまでフラットに発揮されるので、非常にリニアに加速してくれた。レッドラインは6,500rpmで、出力ピークはトルクが落ち込みはじめる5,500rpmだ。5,000rpm周辺のスイートスポットでは初心者ドライバーでも気持ち良く変速できるだろう。トルクバンドが広いため、ギアレシオはワイドに設定されており、加速に山や谷は存在しない。

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「Sport」6MTはシビックハッチバックの中でもおそらく最も速いモデルだろう。0-100km/h加速は7秒を切る程度と予想される。

「EX」に乗り換えると、インフォテインメントシステムの優秀さに感激したのだが、インテリアはさほどスポーティーではなかったし、なにより残念だったのはステアリングが本革巻きでなかったことだ。シビックセダンとも共通のウレタンステアリングは安っぽかった。

タイヤは215/50R17サイズのものを履いており、「Sport」と比べるとグリップを失うのが早かったのだが、サイドウォールが柔らかく、乗り味がしなやかになっていた。セダンでもCVTの応答性の高さに感激したのだが、ハッチバックでもそれは変わらず、CVT特有のラバーバンドフィールもなかった。加速もリニアだったし、エンジン音も気持ち良かった。ただし、追い越しのような場面では変速比が連続的に変化するため、あまり気持ちの良い走りとは言い難い。

今回試乗したモデルは「Sport」にしても「EX」にしても非常に静粛性が高かった。風切り音やエンジン音はしっかりと抑えられていた。一番気になったのはロードノイズなのだが、それでもこのクラスの車としては静かなほうだ。

ホンダはハッチバックの魅力を過小評価しているように思う。シビックの独特のハッチバックスタイルはひょっとしたら新しい流行を生み出すかもしれない。かつて、ドイツ人がクーペのようなセダンを生み出して人気を博したときのように、ホンダも新しい人気ジャンルの生みの親になれるかもしれない。もっとも、古くは1954年のシトロエン・トラクシオン・アバン、あるいはマツダ・626(日本名: カペラ)やマツダ6(日本名: アテンザ)のような前例はある。

シビックの複雑なデザインには好き嫌いもあるだろうが、ハッチバックの実用性はセダンよりもずっと高い。セダンより荷室が広くなっただけでなく、居住性や装備内容はセダンとほとんど変わらないし、走りはセダン以上に優秀で、それでいて乗り心地も犠牲になっていない。車好きでなくとも、シビックセダンと比較してハッチバックを選ぶ人はたくさんいるだろう。シビックハッチバックは間違いなくヒットするはずだ。ただし、唯一、6MTの「Sport」のインフォテインメントシステムの貧弱さだけは残念だ。


2017 Honda Civic Hatchback First Drive: Incremental Business or Next Big Thing?