今回は、ジェレミー・クラークソンがAmazonプライム・ビデオで配信予定の新番組「The Grand Tour」について著したコラム記事を紹介します。


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The GT

私とリチャード・ハモンド、ジェームズ・メイの3人が自動車番組を続けることを決めたとき、一つだけはっきりしていたことがあった。番組のスタジオは旧イギリス空軍の飛行場跡にある倉庫ではないということだ。

12年前、私も番組プロデューサーのアンディ・ウィルマンもBBCに所属しており、飛行場で収録する番組というアイディアをBBCに売り込んだ。BBCは我々のアイディアを気に入り、実際に収録で使える飛行場を探すように命じられた。しかし、それはかなりの難題だった。

どこに問い合わせてもイギリス空軍が何らかの目的(グライダートレーニングやブラスバンドパレードの練習、パラシュートの保管など)で使うから無理だと断られた。ようやくイギリス空軍がもう不要だという場所を見つけたかと思えば、今度はイモリやコウモリやバッタや古代の遺跡や珍しい石や希少な植物に関連する多種多様な問題に直面した。

それから、近隣住民との間で騒音も問題になった。収録は週に1度だけだし、静かな普通車しか走らせないと説明したのだが、近隣住民にはまったく理解してもらえず、デモ隊が結成され、主婦らは自分たちを柵に縛り付けて抗議した。

そんな状況でようやく見つけたサリーのダンスフォールドという場所は唯一無二だ。他に代わりとなる場所など存在しないので、Amazonの新番組のために似たような場所を探そうとするのは無意味だ。

雰囲気の近い北フランスや、イモリの保護や健康や安全やその他諸々のイギリスで危険とみなされるものにうるさくない南アフリカも考えてはみた。しかし、弁護士いわく、特定の場所にスタジオを構えて収録を行うのは(我々のアイディアであるにもかかわらず)BBCの権利侵害になるそうだ。これは大問題だ。

私は『TRUE DETECTIVE』のあるエピソードを見ている時にひらめいた。作中ではバプテスト教会の神父が火事で教会を失ったことで仕事も失い、空き地にテントを広げて店を始めた。それを見た次の日、私は同僚にこう言った。
テントで収録を行い、毎週テントの場所を変えて世界中で収録をしてみたらどうだろう。

寒くてじめじめしたバターミアが好きなリチャード・ハモンドはこのアイディアを聞いて喜んでくれた。ジェームズ・メイも喜んでいたのだが、彼は誰かから新しい十徳ナイフを貰ったから喜んでいただけだった。

いずれにしても私の意見が通り、我々は1970年代の音楽教師のように、さすらいの根無し草になることとなった。あるいはジプシーと言ってもいいかもしれない。各週の収録終わりにはペグを売ることになるかもしれない。

シンプルに思えるかもしれないが、実はそうでもない。テントはステージ、照明、クレーン、テレビカメラ5台、車1台、4Kサーバー(これはUSSエンタープライズよりも巨大でUSSエンタープライズよりも複雑だ)、そして250人の観客が収まる大きさでなければならない。少しでも不足があれば雰囲気がしょぼくなってしまう。

そのため、テントはかなり巨大だ。ラスベガスのサーカステントを超える大きさだ。それだけ巨大なものを毎回運搬するのにどれだけの費用がかかるか想像できるだろうか。雨が降って湿ろうものなら、総重量は山よりも重くなってしまうだろう。

そもそも、布が駄目になってしまうので湿った状態でテントを畳むことはできない。それに、テントを撤収して飛行機に載せ、別の場所で再び展開するという作業を1週間で行うのは不可能だ。そのため、テントを2セット用意し、1回おきに使うようにする必要がある。また、テレビカメラを安定して移動させるために頑丈な床を用意する必要もある。つまり、床も2セット用意する必要がある。しかも、それぞれの床はアジアより重い。

いろいろな情報が飛び交っているが、実際のところ、新番組の予算はBBC時代とあまり変わらない。そこからテントにかかるコストを引くと、ガソリン1Lとジェームズ・メイ用のスナック菓子1袋くらいしか用意できなくなってしまう。

幸いにもDHLという素晴らしい企業が「スポンサー料」という形で輸送費を負担してくれることになった。そうして、「The Grand Tour」は出発点に立った。

最初の収録場所を選ぶのは簡単だった。我々3人は以前にもワールドツアーをしており、その際に一つ学んだことがある。南アフリカは世界の他のどの国よりも観客が集まる。ロンドンで金曜の夜に開催されるイベントで冗談を言ってもクスクス笑いが起きる程度だ。同じ冗談をノルウェーで言うと宇宙空間にいる気分を味わうことができる。しかし、南アフリカでは笑いが1年間は続く。

なので、南アフリカの人類化石遺跡群という場所を探し出し、そこをテント1に決定した。ところが、南アフリカの税関にテントの土台が入った荷物を没収されてしまった。これではすべてが台無しだ。とはいえ、遠く離れた海外だろうと、落ち着いて話し合えば案外うまくいくものだ。

正直に言ってしまおう。撮影日は全員がピリピリしていた。このような番組が4Kで撮影された前例はない。マルチカメラサーバーはオランダの会社が製造したもので、ちゃんと動くことは確認している。しかし、果たしてアフリカの荒野でもちゃんと動いてくれるのだろうか。

それに、新しい番組スタイルに対して視聴者はどのような反応を示すのだろうか。有名人レースも、The Cool Wall も、スティグも、すべてダンスフォールドに置いてきた。すべてが新しいものに置き換わっている。知的所有権上の問題から、ローリング・ストーンズがツイードのスーツを着てアバの曲を演奏するようなものなのかもしれない。

ともかく、収録は終わった。新聞記事を読むと、制作費用は各話4億ポンドで、毎週別の星で収録を行うと報じられている。
ジェームズが木星の気圧に押し潰されたぞ。HAHAHA。
ハモンドは木星で火だるまだ。HAHAHAHAHAHA。

実際はすべて地球上で収録されているのだが、視聴者はがっかりするだろうか。それに、出演するのが中年男3人組だという点も変わらない。時々車がめちゃくちゃになるのも変わらない。

しかし、最大の懸念はメイク担当の女性だ。なるべく安上がりな人を雇ってみたのだが、彼女の鞄の中にはDIYセットしか入っていなかった。まずハモンドのメイクを行ったのだが、30分後、彼はイースター島からやって来たかのような風貌に変わっていた。完全に別人になっていた。

彼女は4Kがシワやシミまで細かく映す超高精細映像だと聞いて、顔に塗料を塗りたくるのが正解だと考えたようだ。しかし、固まった塗料のせいで喋ることすらできなかった。ジェームズは呼吸困難に陥った。私は塗料の重みのせいで立ち上がることすらできなかった。

なんとか工具を使って塗料を削り取ったのだが、その結果、我々は遺跡から発掘された骸骨のような姿になった。そんな姿の我々を見て、果たして我々であると気付いてもらえるのだろうか。

しかし、この疑問に答えを出すことはできなかった。観客が南アフリカ人だったからだ。彼らは我々が何か面白いことを言おうとする前から爆笑しており、スタジオは常時拍手喝采に包まれていた。

観客の実際の反応を窺うのはドイツに行ったときになるだろう。そしてドイツの次はロサンゼルスだ。その次はイギリスに2週間滞在し、それからしばらくはヨーロッパを巡る予定だ。

妙な話だ。これまで12年間、我々は毎週水曜日にサリーに行き、お馴染みの場所でお馴染みの面々に囲まれながら仕事をしてきた。しかし、これからは毎回の仕事が新鮮なものとなる。価値観も好みも違うまったく違った人達の前で仕事をしなければならない。

変わらないのは憎きジェームズとリチャードだけだ。しかし、これこそが「The Grand Tour」の核心だ。これからも我々は互いにからかい、からかわれ続けていく。

もちろん、毎週収録場所は変わるし、番組の内容も変わる。しかし、ジェームズがトイレから戻れば、私とリチャードは間違いなく彼をからかうだろう。

スカンジナビアへ行こうが、中東へ行こうが、アメリカ合衆国へ行こうが、きっと我々は何も変わらないのだろう。


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