今回は、英国「Auto Express」による新型トヨタ・プリウスの試乗レポートを日本語で紹介します。


Prius

トヨタ・プリウスはハイブリッドカー人気の火付け役であり、環境意識の高いセレブやタクシードライバー、それに車のランニングコストを削減したいと考えている一般顧客に広く受け入れられた。しかし、車自体の評価は決して高くはなかった。事実、我々もプリウスのことはあまり好きではなかった。

では、新型プリウスにその評価を覆すことはできるのだろうか。今回、我々はイギリス国内で新型プリウスに初めて試乗し、旧型プリウスからどれだけの進化を遂げているかを確かめた。

鋭角が多用された新型のデザインは決して万人受けするものではない。フロントはまだいいのだが、リアのデザインはあまりにも破茶目茶だ。とはいえ、中身は称賛に値する。効率性を向上するためにあらゆる面が改善されている。賛否両論あるだろう新しいエクステリアも、空気の流れを最適化して燃費性能を改善するようにデザインされている。

エンジン、トランスミッション、バッテリー、モーターのすべてに手が入っている。そして、新型プリウスには今後トヨタのありとあらゆるモデルに使われることとなっている新設計プラットフォームが使われている。

では、果たして我々は新型プリウスを気に入ったのだろうか。その答えはイエスだ。この車は、エコで経済性が高いだけでなく、扱いやすく、快適性も高い。

新型は旧型に比べて路面と繋がっている感覚が強い。ホットハッチと同等というわけではないのだが、旧型のような路面の上を跳ね回る感覚はない。乗り心地も完璧とは言えないが、旧型に比べるとよっぽどましだ。ステアリングも改善している。フィードバックに富んでいることを期待したらがっかりするだろうが、軽いし応答性も高く、安心して操作することができる。

発進時は旧型同様モーターのみで加速するため非常に静かだし、旧型よりもモーターのみで走行できる距離がわずかに長くなっている。ラジオを聞いていれば何の騒音も感じないだろう。それに、運転しているとかなり頻繁にモーターのみの走行に切り替わる。

トランスミッションは変わらずCVTなのだが、効率性は向上しているし、アクセルを踏み込まない限りはエンジンの回転数がむやみやたらに上昇することはなくなった。

rear

ブレーキの感覚も良い。多くのハイブリッドカーにあるような回生ブレーキ特有の違和感もない。ハイブリッドカーを長らく製造してきたトヨタだからこそこれを実現できたのかもしれない。もし新型プリウスのタクシーの走りがスムーズでなかったとしても、その原因は車ではないだろう。

ただし、ヨコハマ製のエコタイヤが生み出すノイズのせいでせっかくの静粛性も少し損なわれている。また、ドアを閉める音に重厚感がないのも不満点の一つだ。軽量化をしようとするとどうしても高級感が損なわれてしまう。

進化はインテリアにも見て取れる。旧型と比べると質感は段違いに向上している。とはいえ、フォルクスワーゲン・ゴルフと比べると見劣りする。視界は全方向にわたって良好だ。

操作系は質感よりも使いやすさや耐久性を重視して設計されているようだが、おかげでプリウスらしい落ち着いた印象を醸し出している。ダッシュボード中央部にはタッチパネルのマルチメディアシステムがあり、その上にはスピードや燃費を表示する計器が並んでいる。プラットフォームが刷新されたことでリアや荷室の空間は拡大しているのだが、ヘッドルームにはあまり余裕がないし、リアシートを倒すと荷室に段差が生じてしまう。

試乗した最上級グレードの価格は27,450ポンドと高価だが、先進安全装備や面白いガジェットもたくさん備わっている。

CO2排出量は76g/kmなので課税額も低くなるだろう。では実際の燃費はどうだろうか。我々が調べた実測値では、途中までは平均燃費26.6km/Lだったのだが、復路に高速道路を使ったところ、平均燃費は23.0km/Lまで落ち込んだ。30.3km/Lというカタログ燃費には届いていないのだが、驚異的な燃費性能であることに変わりはないだろう。


New Toyota Prius 2016 review