イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2006年に書かれたランボルギーニ・ガヤルド スパイダーのレビューです。


Gallardo

人類の長い歴史において、ランボルギーニを買うことのできる人間はロッド・スチュワートくらいしかいなかった。ランボルギーニを乗り回すのは、ヒョウ柄の下着で街中を練り歩き、道行く人々にセクシーかどうか尋ね回るようなものだ。あまりにも馬鹿らしい。

もともと、ランボルギーニは業務用ヒーターを製造していたのだが、こんな事業内容ではランボルギーニの名が廃ると考えた。スタン・アークライトという名前の人間が業務用ヒーターを作るのはいいが、フェルッチオ・ランボルギーニという名前の人間が作るべきなのは、ロッド・スチュワートのための銃付きの車だ。

ランボルギーニに車作りの才能はなかった。ミウラは130km/h以上で走らせようとすると離陸したし、カウンタックは人間に扱える代物ではなかった。クラッチはコンクリートで固められ、ステアリングはダッシュボードに釘で固定され、関節炎に苦しむ人が仰ぐ団扇のようなエアコンが付いていた。

しかし、ひとたび音を響かせれば、どうしようもなく魅力的だった。果たしてランボルギーニはセクシーなのだろうか。車として考えれば答えはノーだ。けれど、部屋の壁に貼るポスターとしてなら、尻を掻く女性テニスプレイヤー以上にセクシーだ。

ポルシェが売っているのは精密機械だ。強力で緻密な道具であり、頑丈さや耐久性も兼ね備えている。一方、ランボルギーニは車の形をしたものにオレンジ色のペンキを塗り、上向きに開くドアを付けているだけだ。

カウンタックが世を去ったあと、ディアブロが登場した。この車は0-100km/h加速を…1回だけしか遂行できなかった。ついさっきまでクラッチだったはずのものは塵に変わってしまう。そして、ディアブロはムルシエラゴとなった。この車はタイヤスモークにまみれながらパーティーに登場するためだけに作られた車だ。

ところが、悲しいことに、ある日ランボルギーニはアウディに吸収されてしまった。

かつて、ランボルギーニの少年たちは魚雷とロケットを備えた車を作りたいと夢見ていた。ところが、新しく着任した校長先生は、空飛ぶ車を作ることも、ガンマ線を放つテールランプを作ることも禁止し、代わりにまともに機能するクラッチを開発することを命じた。

そうして生まれたのがガヤルドだ。カロリーオフのランボルギーニ・ライトだ。見た目にはランボルギーニらしさがあるものの、狂気は削がれている。そして中身はこれまでのランボルギーニとはまったく違う。驚くべきことに、雨が降っていようとちゃんと動く。

厳しい校長先生はその結果に満足し、少年たちに優しさを見せるようになった。そして、少年たちは再び狂気を取り戻した。ガヤルドの屋根を取り外し、エンジンの馬力を増やし、オレンジ色のシートを取り付けた。はっきり言ってしまおう。私はこの車を大いに気に入った。

もちろん、問題もある。例えば、リアスポイラーは130km/h以上で走るとせり出してくる。しかも、他の車とは違ってこの機能を無効にすることはできない。リアスポイラーが展開しているということは、「どうだ、俺はスピード違反をしているぞ」と宣言しているようなものだ。

他にもある。シートを一番後ろまで下げるとレザーがこすれて音がしてしまう。それに、アウディ・A8と同じナビが搭載されているのだが、機能の半分は使うことができない。ハンズフリーフォンやiPod連携機能などもない。

それに、スピードは欠如している。最高出力520PS、二酸化炭素400gを発揮する5LのV10エンジンが搭載されているのだが、ルーフを開いた状態だと最高速度はわずか306km/hだ。しかも、4WDであるにもかかわらず、Top Gearテストトラックでのラップタイムは1分25秒7だった。フェラーリ・360CSと比べると3秒も遅い。

スパイダーが重いことも理由の一つなのだが、最大の問題はピレリのタイヤだ。最初の2ラップか3ラップくらいならかなり優秀なのだが、それ以上走ろうとしてもまったくグリップしてくれない。アストンやフェラーリでも同じことが言える。そうなると、ヒルマン・アヴェンジャーと同等のハンドリング性能になってしまう。

ブリヂストンのタイヤを選んだほうがいいかもしれない。ただ、こちらの場合、最初から大してグリップ力がない。

要するにガヤルドスパイダーは、キーキーやかましく、iPodと接続することもできず、やたらに重く、タイヤは3分も保たず、現実的にはBMW Z4くらいの性能しかない。にもかかわらず、どうして私はこの車が好きになったのだろうか。

理由を説明しよう。シートがオレンジだからだ。あまりにも美しいからだ。3,500rpm以上で回すと絶叫する力士のような音がするからだ。着座位置がかなり前なので、巨大な猛獣の鼻先に乗っているような気分になれるからだ。

しかし、実のところガヤルドは巨大なわけではない。写真で見ると、マリリン・モンローの尻を持つ超巨大スーパーカーのように見える。しかし、実際の全長はフォード・フォーカスとさほど変わらない。

それに、スピードバンプに対処するためにノーズを上げるデバイスも付いているし、エアコンはちゃんと作動するし、ルーフは電動式だし、他のスーパーカーとは違って癇癪を起こすこともない。この車は毎日使うことができる。

オレンジのシートに似合うボディカラーは何かと考えつつ、ふと価格表に目を向けると、思わず笑ってしまった。オプションのジャーニーパックとやらは400ポンドらしい。これはカップホルダーのことだ。もう笑うしかない。

私はロッド・スチュワートではない。ヒョウ柄の下着など穿かない。にもかかわらず、気付けば私はコンフォートパック(サスペンションをソフトにするオプション)を付けるべきかどうか悩んでいた。周りから見て違いが分からないのであれば、このオプションは付けるべきだろうと考えた。

そんなことを考えるなんて、私は狂ってしまったのだろうか。ミッドシップのスーパーカーが欲しいのであれば、ガヤルドよりも速くて実力も高いフェラーリ・430を選んで然るべきだ。しかし、最近のフェラーリはやたらと自意識過剰だ。

愛犬を亡くしたような顔でピットウォールに座るジャン・トッドは好きになれない。彼に言ってやりたい。
あなたはフェラーリのレーシングチームを引っ張る立場じゃないか。もっと気楽に構えていいんだ。ロン・デニスのズボンに消火器を噴射するくらいでいいんだ。

レースゲーム『グランツーリスモ』にフェラーリの車を出すことを拒むような姿勢も気に入らない。それに、ピクサー映画『カーズ』では、フェラーリが2台のマセラティ・クアトロポルテに囲まれて登場している。

この並びを考えたのは、ハリウッドの人間ではなく、フィアットグループの人間だろう。
フェラーリに似た車を映画に出すことは許可するし、ミハエル・シューマッハを声優として出演させることも許可するが、その代わり、マセラティも一緒に登場させろよ。いいな。

ピクサーのプロデューサーは登場する車としてフェラーリではなくガヤルドを選ぶべきだった。ランボルギーニの人間は細かい口出しなど決してしないだろう。映画を見ても、今度は胸のある車を作ってみようかと考えるくらいだ。

フェラーリは、真面目な顔で運転する真面目な人のための真面目な車だ。ガヤルドも同じように真面目になることができる。アウディの技術が入っているのだから当然だ。しかし、爆音を響かせながら走らせると、思わず猿のように叫び、裸になりたくなってしまう。

ザ・フーのライブに似合う車はガヤルドだ。一方、チェシャーで開かれる走行会に似合う車はフェラーリだ。

ロッド・スチュワート以外の人間にも買えるランボルギーニが初めて登場した。ひょっとしたら私も購入するかもしれない。


Ice-cool cutie, you stole my heart