今回は、米国「MOTOR TREND」による新型プリウス プライム(日本名: プリウスPHV)の試乗レポートを日本語で紹介します。

普通、海外行きの長距離フライトでは、じっと座り、本を読んだり大量に食べたりして過ごし、隣の席の乗客とは決して目を合わせない。しかし、今回のフライトでの私は違った。
「こんにちは。私はキムといいます。」
私がそう言うと、相手は「デイヴィッドです」と言って握手を交わした。2人とも日本からロサンゼルスに向かう便に乗っていた。
「お仕事ですか?」
「そうです。そちらは?」
「私も仕事です。」
「お仕事は何をされているのですか?」
「○○(ハイテク企業)の製造責任者をしています。携帯電話メーカーにチップを納入しているんですよ。そちらはどんなお仕事を?」
そう訊かれたので、私は車を乗り回して生計を立てるという自分の仕事を正直に話すことにした。
「私はMOTOR TRENDで働いているんです。」
すると、デイヴィッドは車の話をしはじめた。
「私は65年式のコルベットに乗っているんですよ。ちょっと前に愛車の911を売ったばかりで、テスラ・モデル3も予約しているんです。ですが、普段はプリウスに乗っています。」
私はしばらく窓の外を眺めた。熱狂的な車好きでありながら、プリウスに乗っている。ついちょっと前に新型プリウス プライムの試乗をしてきた私は、他の人の意見も聞きたかった。特定の車のオーナーの意見は非常に貴重であり、私の隣に座っていたのは、コルベットのオーナー兼ポルシェのオーナー兼テスラのオーナー(予定)兼プリウスのオーナーだった。
デイヴィッドはプリウス プライムについてもよく知っていた。

「私がプリウスを買ったとき、プラグインハイブリッドモデルは6,000ドルも高かったんです。モーター単独で18kmしか走れないのに、これだけの価格差には納得がいきませんでした。私の通勤距離は片道22kmですから、それにすら届いていません。とはいえ、無料で充電できる施設もたくさんあるので、その点は魅力的です。一度プリウス プラグインを3日間借りたこともあるんです。モーターだけで走るのは楽しかったのですが、結局燃費は25km/Lくらいでした。なので、プリウス プラグインを購入するメリットはないと判断したんです。」
私からすると、初代プリウス プラグインハイブリッドの問題点はまったくもって電気自動車らしくないという点だった。テスラ・モデルSのような電気自動車を経験してしまうとどうしても見劣りした。運転しはじめて、オーディオの使い方を覚えるよりも前にエンジンが始動してしまった。それに、普通のプリウス同様、モーター単独で走らせるためにはかなり慎重に運転しなければならない。
新型プリウス プライムには従来の2倍の容量(4.4kW→8.8kW)の空冷式リチウムイオンバッテリーが搭載され、EV走行可能な距離も、EV走行時のパワーも向上している。充電出力は3.3kWなのだが、充電にそれほど時間はかからない。家庭用電源の場合は5.5時間、240V電源の場合は2時間ちょっとで満充電できる。
プリウス プライムのモーター単独航続距離は35kmで、デイヴィッドの片道の通勤距離よりは多いのだが、これでもまだ彼は満足できないそうだ。
しかし、35kmもの距離を1.8Lのアトキンソンサイクルエンジンを動かすことなく走り切ることができるのは凄いことだ。しかも、エンジンとプラネタリーギアの間にワンウェイクラッチが組み込まれたことで、充電用のモーターを駆動用にも使うことができるようになり、モーターのみで135km/hまで加速することも可能になっている。
私はサーキットでプリウス プライムの試乗を行った。プライムは高速域からの加速もよく、発進加速性能も高かった。
ドライブモードは3種類ある。EVモードにすると最初にバッテリーの電気を使い切る。ハイブリッドモードではなるべくバッテリーが温存される。EVオートモードでは最も経済的になるようなセッティングとなり、ナビに目的地を入力すると高度まで含めた3次元的な経路を考慮してセッティングが変更される。
コーナリング中や凹凸を乗り越えた際にはPHV用バッテリーの重さが感じられ、まるで後部座席に見えないアメフト選手が乗っているかのようだった。VRの時代でも重さは隠し切れない。制動時にも重さが感じられたし、ターンイン時にも鈍重さを感じた。ただし、乗り心地に関しては重さが良い方向に働いており、標準のプリウスよりも改善していた(ただし、強い衝撃には対処しきれていない)。走行性能ではプリウスとシボレー・ヴォルトの中間くらいだ。
統計的には51%の人間が35kmというEV航続距離に満足するのだが、デイヴィッド含め49%の人間は不足を感じてしまう。デイヴィッドはこんなことも話していた。
「プライムと価格帯の近いテスラ・モデル3やシボレー・ボルトを買えば、300km以上の距離を電気だけで走ることができます。もちろん、私は愛車のプリウスを気に入っているんですが、プラグイン化したプリウス プライムには取って付けた感があるんです。」

取って付けた感があるという彼の意見には同意しかねる。プラグイン化によるメリットはちゃんと存在するはずだ。ただし、バッテリーが大型化したことによる弊害があるのもまた事実だ。
荷室のフロアには約2.5cmの盛り上がりができているし、リアシートは2人乗りになってしまっている。開発者いわく、リアに3人乗ると車が重くなりすぎるそうだ。それに、リアシートを畳んでも荷室はフラットにならない。ひょっとしたら、TNGAはこれほど大きなバッテリーを搭載することを想定していなかったのかもしれない。
自動車とは常に競争に晒されるものだ。そんな中でプリウス プライムは健闘している。世界で最も効率の優れたプラグインハイブリッドカーとも謳われるプライムは実質51km/Lという燃費を誇り、航続距離は966kmだ。それに、11.6インチのHDモニターやカーボンファイバー製リアハッチなど、魅力的な装備も多い。しかも、Toyota Safety Sense Pは標準装備だ。
デザインに関しては、個人的には気に入ったのだが、デイヴィッドはあまり気に入らなかったようだ。
「私はこのデザインが好きになれません。パネルの面が多すぎてパッチワークのように見えてしまいます。それに、複雑な形状のリアウイングは横からだと変に見えます。ただし、私は見た目が好きでプリウスを買ったわけではありません。」
標準のプリウスと差別化されたプライムの前後デザインはポンティアックを彷彿とさせる。私から見れば恰好良いと思う。
そうこうしているうちに、デイヴィットは見ていた映画を止め、シートを倒して眠りに落ちた。私はボーイング787の窓から外の景色を眺めながら物思いに耽った。
プリウス プライムには多くの人を満足させるだけの容量を持ったバッテリーが搭載されているし、電気自動車の走りも兼ね備えているし、そのベースとなっているのは世界で最も人気のあるハイブリッドカーだ。材料はちゃんと揃っている。
トヨタはさらに上を目指し、デイヴィットのような理屈で物を考える人も納得できるような車を作るべきだろう。
2017 Toyota Prius Prime First Drive Review

普通、海外行きの長距離フライトでは、じっと座り、本を読んだり大量に食べたりして過ごし、隣の席の乗客とは決して目を合わせない。しかし、今回のフライトでの私は違った。
「こんにちは。私はキムといいます。」
私がそう言うと、相手は「デイヴィッドです」と言って握手を交わした。2人とも日本からロサンゼルスに向かう便に乗っていた。
「お仕事ですか?」
「そうです。そちらは?」
「私も仕事です。」
「お仕事は何をされているのですか?」
「○○(ハイテク企業)の製造責任者をしています。携帯電話メーカーにチップを納入しているんですよ。そちらはどんなお仕事を?」
そう訊かれたので、私は車を乗り回して生計を立てるという自分の仕事を正直に話すことにした。
「私はMOTOR TRENDで働いているんです。」
すると、デイヴィッドは車の話をしはじめた。
「私は65年式のコルベットに乗っているんですよ。ちょっと前に愛車の911を売ったばかりで、テスラ・モデル3も予約しているんです。ですが、普段はプリウスに乗っています。」
私はしばらく窓の外を眺めた。熱狂的な車好きでありながら、プリウスに乗っている。ついちょっと前に新型プリウス プライムの試乗をしてきた私は、他の人の意見も聞きたかった。特定の車のオーナーの意見は非常に貴重であり、私の隣に座っていたのは、コルベットのオーナー兼ポルシェのオーナー兼テスラのオーナー(予定)兼プリウスのオーナーだった。
デイヴィッドはプリウス プライムについてもよく知っていた。

「私がプリウスを買ったとき、プラグインハイブリッドモデルは6,000ドルも高かったんです。モーター単独で18kmしか走れないのに、これだけの価格差には納得がいきませんでした。私の通勤距離は片道22kmですから、それにすら届いていません。とはいえ、無料で充電できる施設もたくさんあるので、その点は魅力的です。一度プリウス プラグインを3日間借りたこともあるんです。モーターだけで走るのは楽しかったのですが、結局燃費は25km/Lくらいでした。なので、プリウス プラグインを購入するメリットはないと判断したんです。」
私からすると、初代プリウス プラグインハイブリッドの問題点はまったくもって電気自動車らしくないという点だった。テスラ・モデルSのような電気自動車を経験してしまうとどうしても見劣りした。運転しはじめて、オーディオの使い方を覚えるよりも前にエンジンが始動してしまった。それに、普通のプリウス同様、モーター単独で走らせるためにはかなり慎重に運転しなければならない。
新型プリウス プライムには従来の2倍の容量(4.4kW→8.8kW)の空冷式リチウムイオンバッテリーが搭載され、EV走行可能な距離も、EV走行時のパワーも向上している。充電出力は3.3kWなのだが、充電にそれほど時間はかからない。家庭用電源の場合は5.5時間、240V電源の場合は2時間ちょっとで満充電できる。
プリウス プライムのモーター単独航続距離は35kmで、デイヴィッドの片道の通勤距離よりは多いのだが、これでもまだ彼は満足できないそうだ。
しかし、35kmもの距離を1.8Lのアトキンソンサイクルエンジンを動かすことなく走り切ることができるのは凄いことだ。しかも、エンジンとプラネタリーギアの間にワンウェイクラッチが組み込まれたことで、充電用のモーターを駆動用にも使うことができるようになり、モーターのみで135km/hまで加速することも可能になっている。
私はサーキットでプリウス プライムの試乗を行った。プライムは高速域からの加速もよく、発進加速性能も高かった。
ドライブモードは3種類ある。EVモードにすると最初にバッテリーの電気を使い切る。ハイブリッドモードではなるべくバッテリーが温存される。EVオートモードでは最も経済的になるようなセッティングとなり、ナビに目的地を入力すると高度まで含めた3次元的な経路を考慮してセッティングが変更される。
コーナリング中や凹凸を乗り越えた際にはPHV用バッテリーの重さが感じられ、まるで後部座席に見えないアメフト選手が乗っているかのようだった。VRの時代でも重さは隠し切れない。制動時にも重さが感じられたし、ターンイン時にも鈍重さを感じた。ただし、乗り心地に関しては重さが良い方向に働いており、標準のプリウスよりも改善していた(ただし、強い衝撃には対処しきれていない)。走行性能ではプリウスとシボレー・ヴォルトの中間くらいだ。
統計的には51%の人間が35kmというEV航続距離に満足するのだが、デイヴィッド含め49%の人間は不足を感じてしまう。デイヴィッドはこんなことも話していた。
「プライムと価格帯の近いテスラ・モデル3やシボレー・ボルトを買えば、300km以上の距離を電気だけで走ることができます。もちろん、私は愛車のプリウスを気に入っているんですが、プラグイン化したプリウス プライムには取って付けた感があるんです。」

取って付けた感があるという彼の意見には同意しかねる。プラグイン化によるメリットはちゃんと存在するはずだ。ただし、バッテリーが大型化したことによる弊害があるのもまた事実だ。
荷室のフロアには約2.5cmの盛り上がりができているし、リアシートは2人乗りになってしまっている。開発者いわく、リアに3人乗ると車が重くなりすぎるそうだ。それに、リアシートを畳んでも荷室はフラットにならない。ひょっとしたら、TNGAはこれほど大きなバッテリーを搭載することを想定していなかったのかもしれない。
自動車とは常に競争に晒されるものだ。そんな中でプリウス プライムは健闘している。世界で最も効率の優れたプラグインハイブリッドカーとも謳われるプライムは実質51km/Lという燃費を誇り、航続距離は966kmだ。それに、11.6インチのHDモニターやカーボンファイバー製リアハッチなど、魅力的な装備も多い。しかも、Toyota Safety Sense Pは標準装備だ。
デザインに関しては、個人的には気に入ったのだが、デイヴィッドはあまり気に入らなかったようだ。
「私はこのデザインが好きになれません。パネルの面が多すぎてパッチワークのように見えてしまいます。それに、複雑な形状のリアウイングは横からだと変に見えます。ただし、私は見た目が好きでプリウスを買ったわけではありません。」
標準のプリウスと差別化されたプライムの前後デザインはポンティアックを彷彿とさせる。私から見れば恰好良いと思う。
そうこうしているうちに、デイヴィットは見ていた映画を止め、シートを倒して眠りに落ちた。私はボーイング787の窓から外の景色を眺めながら物思いに耽った。
プリウス プライムには多くの人を満足させるだけの容量を持ったバッテリーが搭載されているし、電気自動車の走りも兼ね備えているし、そのベースとなっているのは世界で最も人気のあるハイブリッドカーだ。材料はちゃんと揃っている。
トヨタはさらに上を目指し、デイヴィットのような理屈で物を考える人も納得できるような車を作るべきだろう。
2017 Toyota Prius Prime First Drive Review
