今回は、英国「Auto Express」によるジーリー・エムグランドEVの試乗レポートを日本語で紹介します。


Emgrand EV

ボルボの親会社でもある中国企業の吉利汽車は近く、ヨーロッパ向けの新ブランドを立ち上げる予定らしい。既にイギリスでは2012年にジーリー・エムグランドEC7が発表されており、ユーロNCAPでは四ツ星を獲得しているのだが、結局発売には至っていない。既にオーストラリア市場では発売されているのだが、その販売成績は芳しくなく、エムグランドEC7は西洋の消費者には受けないと判断されたようだ。

現在、ジーリーのデザインは元ボルボのデザイナーのピーター・ホルバリー氏が担当しており、ジーリーのモデルがより面白くなろうとしている。昨年は、2020年までに全販売車種の90%を次世代燃料車とする「ブルー・ジーリー・イニシアティブ」という計画も発表された。

「L」というコードネームが付いたジーリーの新ブランドにも、おそらくは電気自動車やハイブリッドカーがラインアップされるだろう。ジーリーはヨーテボリ、上海、バルセロナ、ロサンゼルスにデザインスタジオを所有しており、ホルバリー氏はヨーテボリのデザインセンターのトップを務めている。

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エムグランドEVはジーリーが独自開発した最初の電気自動車だ。ベースとなっているのは、中国のベストセラーセダンでもあるエムグランドEC7で、デザイン面、メカニズム面ともに変更が施されている。ジーリーによると、現実的な航続距離は253km程度になるそうだ。

このモデルにはボルボとジーリーが共同開発したCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)プラットフォームが用いられている。エムグランドEVに使われているEVシステムは将来的にはボルボの電気自動車にも使われるかもしれない。同じくCMAプラットフォームを採用する新型V40およびXC40にもEVが設定される予定だ。

エムグランドEVを運転していると、アクセルから足を離した時に回生ブレーキがかかり、急激に車が減速するのが体感される。ドライブセレクターはあるのだが、実際にはギアが存在しないので、ボタンなどで代用してもいいかもしれない。スポーツモードを選ぶと加速が少し強くなるのだが、エコモードとの違いはさほど大きくない。

残念ながら、航続距離は公称値と大きくかけ離れていた。出発前、メーターには航続可能距離241kmと表示されていた。暑い日にエアコンを使って街中から高速道路までさまざまな場所を走ってみたところ、200kmも走らないうちにバッテリーが切れそうになり、必死に充電ステーションを探す羽目になった。メーターの航続距離は実際の走行距離よりも早く減っていった。急速充電器を使えばわずか48分で満充電できるのだが、一般的な家庭用電源を使うと14時間もかかってしまう。

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ステアフィールは自然だしバランスも良かった。路面の凹凸もうまくいなしてくれたし、コーナリング性能や高速安定性にも大きな問題はなかった。加速性能はガソリンモデルのエムグランドEC7よりもずっと優れている。

中国においてはブルーがグリーンの証なので、デザインにはブルーが多用されている。フロントグリルにはLEDデイライトに沿ってブルーのストライプが入っている。それに、色のアクセントのおかげで、平凡なインテリアも少しは個性的になっている。質感にも基本的には問題ない。唯一、センターコンソール部分の収納スペースの安っぽさだけは残念だった。


Emgrand EV 2016 review