イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、メルセデスAMG C63のレビューです。


C63

はっきりさせてしまおう。もしあなたがBMW 3シリーズやメルセデス・Cクラス、もしくはアウディ・A4に乗っているなら、車選びを間違えている。選ぶべき車はジャガー・XEだ。

XEも普通の4ドアセダンに見えるかもしれないが、じっくりと観察してみると非常にハンサムであることが分かるはずだ。ボディは引き伸ばされてタイヤを覆っているかのように見えるため、筋肉質で引き締まっているような印象を受ける。

ここまではまだ序の口だ。先週V6モデルを運転したのだが、エンジンがとんでもなかった。出力やトルクに関しては普通だ。予想以上でもないし、予想以下でもない。しかし、加速時に聞こえてくる音が崇高だった。これほどまでに抑制の効いた甘美な音はアルファ ロメオ GTV6以来聞いたことがない。それに、この音は排気管を電子制御して作ったわざとらしい音ではなく、エンジン自体から聞こえてくる真っ当な音だ。

それだけではない。塗装かと思うくらいに薄い35扁平のタイヤを履いているにもかかわらず、この車はまったくもって落ち着いている。ダイナミックモードにすると少し暴れ気味になるのだが、そんなことはどうでもいい。ノーマルモードにして完璧な椅子に腰掛ければ、それこそがジャガーのあるべき姿だ。

あえて粗探しをするなら、ダッシュボードが少し残念だ。スイッチはどれも小さくて、余ったスペースがすべて退屈なプラスチックで覆われてしまっている。それに、スイッチに描かれている図形は1974年式のラーダかと思うくらいに古臭い。しかし、この程度の欠点があったところで、購入をやめる動機にはならない。なるはずがない。

唯一XEを選ばない理由となりうるのは、XEのエンジンラインアップだ。咆哮し、火を噴くモンスターが欲しい人もいるだろう。ジャガーも将来的にはそんなモデルを追加する予定らしいのだが、現時点では存在しない。つまり、熱々のミドルセダンが今すぐ欲しいのであれば、BMW M3か、あるいは今回の主題であるメルセデスAMG C63のどちらかになるだろう。

C63の見た目は良くない。リアはまるで溶解しているかのようだし、あちこちごちゃごちゃしすぎている。アブダビのインテリアショップに車ごと突っ込んで、店にあるものすべてを装着してしまったかのようだ。

インテリアはずっとまともだ。特別感がある。作りもしっかりしているし、個性もちゃんとある。ジャガーに乗っている時、誤ってナビのデータカードを抜いてしまったのだが、再び挿入したところ、画面に「エンジンを切ってシステムを再起動してください」と表示された。しかし、メルセデスではこんなことなど起こるはずがない。もしこんなことが起これば開発責任者が砂漠送りになってしまうだろう。

もちろん、エンジンについても言及する必要があるだろう。大排気量の名機、AMGの6.2L V8エンジンは失われてしまった。排ガス規制のせいで4Lで我慢しなければならない。確かに、ターボのおかげで出力は従来よりも向上しているのだが、かつての咆哮や爆発音は失われてしまった。ただやかましいだけになってしまった。

interior

しかし、エンジン以上にタイヤがやかましい。とんでもなく騒々しい。バークシャーのブレーまでランチに出掛けたのだが、到着する頃には食べたいものがニューロフェンに変わっていた。

それに快適性も欠けていた。かつて私がAMGを気に入っていたのは、操作性やニュルブルクリンクのラップタイムのために乗り心地が犠牲になるということがなかったからだ。かつてのAMGは、直線では速く、コーナーでは横向きに走った。

ところが、AMGの誰かがコーナリング性能やラップタイムを重視しようと決めてしまったため、サスペンションが強化され、コーナリング速度が向上し、恐ろしいくらいにバタつくようになった。とんでもなくバタついていた。試乗車にはオプションの19インチホイールが装着されており、おかげで乗り心地は最悪だった。硬いどころの話ではなかった。

とはいえ、魅力的な部分もある。中回転域の加速は強烈だし、コーナーでは路面に吸い付くように走る。

そうなると、AMGがヨーロッパのマッスルカーから完璧なバランスのロードレーサーに真面目に方針転換したのだから、最新のデュアルクラッチトランスミッションが使われて然るべきだと思うことだろう。しかし妙なことにそれは間違いだ。トランスミッションは従来型と共通のトルコンレスATだし、さらに妙なことに、操作はコラムから生えたキャデラック風のレバーを介して行う。

私の記事を長らく読んでいる人なら知っているだろうが、私はずっとAMGのファンだった。AMGのモデルは3台も所有してきた。しかし、その情熱も薄れてきている。最近のメルセデスはやたらに派手だ。それに、AMGの方向性にも自信をなくしてしまっている。AMGは一瞬の快楽を求める戦艦であるべきだ。高速魚雷艇なんかではない。

速くて機敏な高速魚雷艇が欲しいなら、BMW M3を買ったほうがいい。運転する道具として考えれば、メルセデスを圧倒する実力を有している。見た目だってM3のほうが優れているし、快適性でも勝っている。それでも、完璧からは程遠い。ステアリングは重いし感覚もどこかおかしい。通知表風に書くとしたらこうだ。
BMWならもっとできるはず

もし私が速いミドルセダンを購入しようと考えているなら、6ヶ月待ってアルファ ロメオ・ジュリア クアドリフォリオを買うだろう。これは最高出力が510PSだし、後輪駆動だし、なによりアルファだ。しかし、スペック以下の実力しか持たないであろう車のために6ヶ月も待ちたくはないかもしれない。事実、これまでのアルファはスペック以下の実力しかなかった。

ここで冒頭の話に戻る。ジャガーのV6は十分優秀だ。250km/hまで出すことができるし、速度計を見るよりも前に100km/hまで加速してしまうし、コーナリングも美しい。それに、ドイツのライバルより価格もランニングコストも安いし、見た目でも勝っている。

現時点において、愚かな私ならアルファを待つが、賢明な読者はジャガーを選ぶべきだろう。頭を使って選ぶのであれば、ジャガーこそが明らかな正解選択肢だ。


The Clarkson Review: Mercedes-AMG C 63