今回は、英国の人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのリチャード・ハモンドが2013年に英「Mirror」に寄稿したアウディ・S3の試乗レポートを日本語で紹介します。

フェラーリ・250 GTO は世界で最も価値のある車だ。ある個体は先日3500万ドル(約2200万ポンド)で売れた。
250 GTO は1962年にレース用に製造されたのだが、わずか39台しか製造されなかった。300馬力を発揮する3.0L V12エンジンは素晴らしい音を発する。
ピンク・フロイドのドラマーであるニック・メイスンもこの車を所有している。アルバム1枚を5000万枚売り上げるようなバンドのメンバーになれば、こんな車も購入できる。
今回試乗したのがフェラーリ・GTO なのかといえば、残念ながら違う。今回の車に乗って、僕はGTOを連想した。というのも、今回試乗したアウディ・S3に搭載されるエンジンは、GTOのエンジンと同じく300馬力を発揮するからだ。
700馬力のスーパーカーや500馬力超のステーションワゴン(AMGなんかがそうだ)がある世界において、我々は300馬力の凄さを忘れかけている。1960年代初期のF1マシンは、現在アウディのディーラーで3万ポンドで購入できる車よりもパワーが劣っていた。それに、S3のような車は驚くほど運転しやすい。
今回試乗したのは3ドアモデルのS3なのだが、スポーツバックというモデルを選択することもできる。また、試乗車は6速MTだったのだが、7速DCTもオプションで設定される。
旧型S3は微妙な車だったのだが、新型は一見遅そうで非常に速い。
S3のバッジを取ればディーゼルモデルとまったくと言っていいほど変わらない。リアを覗き込んで排気管の数を数えない限り見分けることはできない。排気管は4本出しで、奇しくも250 GTOと同じだ。
馬力と排気管の数以外にGTOとの共通点はない。ただし、試乗車のボディカラーはレッドだった。
上司に堅実な車を買えと言われてS3を購入しても、きっと見咎められることはないだろう。ただし、上司に運転させてはいけない。この車は走り出したその瞬間にその凄さが分かってしまう。
0-100km/h加速は5.2秒でこなし、最高速度は250km/hだ。その実力は公道では出し切れない。
4WDなので前輪がグリップを求めて悪戦苦闘するような感覚はない。アクセルを踏んでからターボチャージャーが動き始めるまでにはわずかな遅れがあるのだが、ターボがかかるととんでもなく速い。LED表示のブースト計も付いているのだが、わざわざそんなものを見る必要もない。
インテリアはスポーティーではあるが落ち着いている。スポーティーを謳う車によくあるフラットボトムステアリングも付いているのだが、この意味はよく分からない。シートのサポート性は高く、見た目もそれらしい。あちこちにSバッジも付いているのだが、それを抜きにすればエクステリア同様に特別感はあまりない。
見た目も速そうで、汗まみれになりながら運転できるようなホットハッチが欲しいのであれば、ヴォクスホール・アストラVXRを選ぶべきだろう。一方のS3は、ステアリングの正確性が非常に高いとは言いがたいものの、快適性が高く、いともたやすくスピードを出すことができる。ほかにも、変人向けのRS3というモデルもあるし、いとこのゴルフRも手強いライバルと言えるだろう。
Seriously fast Audi S3 brings to mind a Ferrari - it is a wolf in sheep's clothing

フェラーリ・250 GTO は世界で最も価値のある車だ。ある個体は先日3500万ドル(約2200万ポンド)で売れた。
250 GTO は1962年にレース用に製造されたのだが、わずか39台しか製造されなかった。300馬力を発揮する3.0L V12エンジンは素晴らしい音を発する。
ピンク・フロイドのドラマーであるニック・メイスンもこの車を所有している。アルバム1枚を5000万枚売り上げるようなバンドのメンバーになれば、こんな車も購入できる。
今回試乗したのがフェラーリ・GTO なのかといえば、残念ながら違う。今回の車に乗って、僕はGTOを連想した。というのも、今回試乗したアウディ・S3に搭載されるエンジンは、GTOのエンジンと同じく300馬力を発揮するからだ。
700馬力のスーパーカーや500馬力超のステーションワゴン(AMGなんかがそうだ)がある世界において、我々は300馬力の凄さを忘れかけている。1960年代初期のF1マシンは、現在アウディのディーラーで3万ポンドで購入できる車よりもパワーが劣っていた。それに、S3のような車は驚くほど運転しやすい。
今回試乗したのは3ドアモデルのS3なのだが、スポーツバックというモデルを選択することもできる。また、試乗車は6速MTだったのだが、7速DCTもオプションで設定される。
旧型S3は微妙な車だったのだが、新型は一見遅そうで非常に速い。
S3のバッジを取ればディーゼルモデルとまったくと言っていいほど変わらない。リアを覗き込んで排気管の数を数えない限り見分けることはできない。排気管は4本出しで、奇しくも250 GTOと同じだ。
馬力と排気管の数以外にGTOとの共通点はない。ただし、試乗車のボディカラーはレッドだった。
上司に堅実な車を買えと言われてS3を購入しても、きっと見咎められることはないだろう。ただし、上司に運転させてはいけない。この車は走り出したその瞬間にその凄さが分かってしまう。
0-100km/h加速は5.2秒でこなし、最高速度は250km/hだ。その実力は公道では出し切れない。
4WDなので前輪がグリップを求めて悪戦苦闘するような感覚はない。アクセルを踏んでからターボチャージャーが動き始めるまでにはわずかな遅れがあるのだが、ターボがかかるととんでもなく速い。LED表示のブースト計も付いているのだが、わざわざそんなものを見る必要もない。
インテリアはスポーティーではあるが落ち着いている。スポーティーを謳う車によくあるフラットボトムステアリングも付いているのだが、この意味はよく分からない。シートのサポート性は高く、見た目もそれらしい。あちこちにSバッジも付いているのだが、それを抜きにすればエクステリア同様に特別感はあまりない。
見た目も速そうで、汗まみれになりながら運転できるようなホットハッチが欲しいのであれば、ヴォクスホール・アストラVXRを選ぶべきだろう。一方のS3は、ステアリングの正確性が非常に高いとは言いがたいものの、快適性が高く、いともたやすくスピードを出すことができる。ほかにも、変人向けのRS3というモデルもあるし、いとこのゴルフRも手強いライバルと言えるだろう。
Seriously fast Audi S3 brings to mind a Ferrari - it is a wolf in sheep's clothing