今回は、米国「AUTOWEEK」による日産 ムラーノ ウィンターウォリアー コンセプトの試乗レポートを日本語で紹介します。


Murano Winter Warrior

ロサンゼルスの気温が20℃を下回ることはない。風が吹くことさえほとんどなく、ちょっとでも雨が降ろうものなら我々住人はうろたえてしまう。そんなロサンゼルスにおいて、冬はあくまで相対的なものでしかない。大げさな書き方をしてしまったが、ロサンゼルスの住人は太陽が輝いていないだけでも混乱してしまう。しかし当然、ほかの地域の住人は雪をはじめとしたさまざまな悪天候に対処しなければならない。

そんな我々が晴れ渡る南カリフォルニアで試乗したのが、先月にシカゴオートショーで発表されたばかりの日産・ウィンターウォリアー コンセプトだ。

そんな場所に雪があるのだろうかと訝しんでいたのだが、実際に街中にも雪が積もっていた。ビッグベアレイクにはスキー場があり、悪天候が続いていたおかげで3月中旬まで営業が続けられていた。

日産の広報担当であるティム・ギャラガー氏がベアマウンテンスキー場と交渉し、残雪の残る300万平米の土地の一角を借り、我々はその場所で車に試乗することができた。

スノーモービルを降ろされた場所には雪をかぶったムラーノ ウォリアーが停まっており、そこから知り合いの記者が降りてきた。先にこの車に乗っていた彼にアドバイスを求めると、ステアリングは4分の3回転以上回さないほうがいいとアドバイスしてくれた。

キャタピラ付きの改造車なので、そのアドバイスももっともだろう。写真を見て分かる通り、ムラーノ ウォリアーにはチャッセルに本拠地を置くアメリカン・トラック・トラック社製の無限軌道システムが装着されている。チャッセルはミシガン州のアッパー半島にあり、豪雪地として知られている。

なので、改造費に1,000ドルとかかっていないこの車も、ロサンゼルスの冬をものともしないのではないかという期待を持っていた。

3台のウィンターウォリアー コンセプト(パスファインダー、ムラーノ、ローグ)のうち、今回試乗したムラーノには標準の260PSのV6エンジンと標準のCVTが使われていた。理論上は33.2kgf·mのトルクのうちのおよそ半分がCVTに取られ、およそ半分が無限軌道システムに取られるはずだ。実際、車を動かすために使えるトルクはあまり残っていなかった。

この車をちゃんと走らせるためには常にアクセルを床まで踏み込む必要がある。パワーが出ている状態では狙った方向に概ね進んでくれる。ゆっくり走るとスタックする傾向にある。30度以上の坂を登ろうとしても0km/h以上は出なかったし、逆に坂を下ろうとすると50km/hくらいまで急加速してしまい、あちこちに雪を撒き散らしてリスを怯えさせてしまった。

もし私が設計したなら、もっとパワーのある4WD車をベースとしただろうし、トランスミッションにも手を入れたことだろう。しかし、パワーが足りていなかったとはいえ、このクレイジーなSUVは非常に楽しかった。雪山の王者になったような気分だった。

試乗はすぐに終わってしまい、その後は普通の車に乗って普通の道を走った。そうして、我々は厳しい冬に別れを告げた。


Spraying snow in a Nissan Murano Winter Warrior