今回は、米国「Car and Driver」による新型 インフィニティ・Q50(日本名: 日産・スカイライン) レッドスポーツ400の試乗レポートを日本語で紹介します。


Q50 Red Sport 400

ご存じの通り、我々Car and Driverはスポーツセダンを愛しており、インフィニティはそんな中でも記憶に残る優秀なスポーツセダンを作っている。それこそがG35であり、パワー、音、ハンドリングが見事にバランスされたモデルだった。その後継車であるG37も同じくらいに優秀な車だった。

ところが、Gシリーズの後継であるQ50は、車としてまともではあるのだが、感覚の優れたステアリングや遊び心のある性格を失ってしまった。しかし、インフィニティはQ50に3種類のターボエンジン(211PSの4気筒と、304PSと406PSのVR30型3.0L V6)の新規搭載を発表し、再び輝きが戻ってくるのではないかと期待が膨らんだ。

期待が裏切られたわけではないのだが、足りない部分もある。Q50 レッドスポーツ400のエンジンは素晴らしく、不足は全く感じない。新設計のVR型3.0Lエンジンは6,400rpmに至るまで徐々に力を増していき、48.4kgfmの最大トルクは1,600-5,200rpmでずっと発揮される。ツインターボチャージャーはエグゾーストマニホールドで統合されており、このレイアウトのおかげでターボラグもほとんどなくなっている。

今回の試乗イベントにはテスト機器を持ち込めなかったのだが、レッドスポーツの0-100km/h加速は4.4秒程度になるだろうと予測されるし、オプションの4WDを選べばさらに速くなるかもしれない。ちなみに、333PSの3.7Lモデルは0-100km/h加速を4.9秒でこなす。

ただし、エンジンだけでは車は動かない。トランスミッションの介在が必要不可欠だ。そして、Q50の7速ATには不足がある。BMW 340iやアウディ・S4のようなライバルと比べると段数が少ないのもあるのだが、こちらは大した問題ではない。むしろ問題なのは、スポーツモードやスポーツ+モードでさえ変速がシャキッとしていない点だ。

このエンジンにふさわしいのは、メルセデス・ベンツ C450 AMGの7速ATのような優秀なトランスミッションだろう。なので、インフィニティには是非、提携先のダイムラーからトランスミッションの供給を受けてほしい。また、マニュアルモデルを欲しがる人も多いだろうが、残念ながらQ50にMTは設定されない。

また、エンジン音に関しても改善を要する。BMW 340iのような車と比べると、Q50のエンジン音は無機質で退屈だ。残念なことに、従来のVQ型3.7L V6エンジンと似ている音だ。

レッドスポーツ400のシャシはしっかりと考えられている。ステアリングシステムは2種類から選べる。標準では新設計の電動パワーステアリングで、もう一つはバイワイヤのダイレクトアダプティブステアリングだ。

普通の電動パワステのモデルについては、乗ってすぐはフィードバックの豊かさや応答性の高さに感激したのだが、90分も乗るとステアリングが過敏すぎるせいで掌がほとんど麻痺してしまった。別にフィードバックを抑えろと言っているわけではないのだが、ステアリングの材質をソフトなレザーやスエードに変えるだけでかなり変わると思う。いずれにしてもレッドスポーツのキャラクターにはちゃんと合うだろう。

最新型のダイレクトアダプティブステアリングにはいくらか命が吹き込まれており、ドライブバイワイヤのおかげで路面の大きな衝撃が抑えられている一方で、路面の状況はある程度ドライバーの手に伝わるようになった。DAS付きのモデルにはあまり長い時間乗れなかったのだが、数年前に最初に試乗したときのような悪印象は感じなかった。

それ以外に関しては、操作性も良く、特にスポーツモードやスポーツ+モードでの「ダイナミック・デジタル」ショックアブソーバーは優秀だった。いずれのモードでもロールはしっかり抑えられており、ブレーキは力、フィールともに素晴らしかった。

タイヤはダンロップのランフラットサマータイヤが標準装着される。後輪駆動モデルの場合、タイヤは前後別サイズで、フロントが245/40R19、リアが265/35R19となる。基本的にグリップ性能は高かったのだが、低速コーナーでアクセルを強く踏むといきなりリアが飛び出してしまうこともあった。レッドスポーツ400には4WDモデルも用意され、こちらには4本とも同じ245/40R19のダンロップ製オールシーズンタイヤが装着される。

レッドスポーツ400と標準モデルの外見上の違いは、排気管にリアタイヤ(後輪駆動モデルのみ)、それからボディサイドとトランクリッドに貼られる赤いSの文字しかなく、おそらくは自己主張しない速いモデルという意図があるのだろう。

インフィニティによると、発売は今春で、価格は5万ドル未満になるそうだが、それ以外は発表されていない。いずれにしても、400馬力程度のセダンとしてはかなりお買い得と言えるだろう。とはいえ、パフォーマンスの劣るメルセデス C450 AMGやBMW 340iの方が洗練されていて魅力的なようにも感じられる。要するに、レッドスポーツ400はQ50にとっては重要なモデルなのだが、スポーツセダンの中で特別な存在になることはなさそうだ。


2016 Infiniti Q50 Red Sport 400 - First Drive Review