今回は、人気自動車番組「Top Gear」でもおなじみのリチャード・ハモンドが2014年に英「Mirror」に寄稿したテスラ・モデルSのレビューを日本語で紹介します。

イーロン・マスクという名前はまるでボンドの宿敵か香水の名前のようだ。彼はPayPalの創設者であり、民間企業として世界で初めて国際宇宙ステーションに宇宙船を送ったスペースX社の創業者でもあり、そして自動車メーカー、テスラの取締役でもある実業家だ。彼は控えめに表現しても聡明な人間だろう。
今回、我々は右ハンドル仕様のテスラ・モデルSに試乗した。他の大手自動車メーカーが作る電気自動車とは違い、マスクが生み出した電気自動車はメルセデスやアウディ、BMWと競合するような高級車だ。
しかし、マスクは馬鹿ではない。事実、フォルクスワーゲンの電気自動車、e-up!には問題がある。ベースとなったガソリン仕様のup!は非常に低価格なため、電気自動車を選んだほうがランニングコストまで計算に入れてもむしろ高くついてしまう。同じようなことはルノー・ゾエや日産・リーフにも言える。しかしモデルSは違う。
お金の話をする前に、まずは車を観察することにしよう。エクステリアには特別感があり、特に走りだすと引っ込んでしまうドアハンドルは見事だ。しかし、本当に凄いのはインテリアだ。車内には『巨人の惑星』の世界のスクリーンが置かれている。まるで巨大なiPadだ。
ステアリングにある数個のボタンを除けば、この車にはボタンが2つ(ハザードランプ用のボタンとグローブボックスの開閉用ボタン)しか存在しない。それ以外の操作系はすべてスクリーンに集約されている。ステアリングやパワー、サスペンションのセッティングもだ。スクリーンでオーナーズマニュアルを読むこともできるし、近場の充電ステーションを探すこともできる。
センターコンソールはかなり小さく、足元にはかなりの開放感がある。バッテリーは巨大で、フロアの下に搭載されている。
グレードは3種類ある。標準モデルには60kWhのバッテリーが搭載され、「パフォーマンス」には85kWhのバッテリーが搭載される。「パフォーマンス・プラス」にも同じ85kWhのバッテリーが搭載されるのだが、このモデルにはスポーツチューンドエアサスペンション、スポーツタイヤ、大径ホイールが装備される。
60kWhモデルの航続距離は322kmで、85kWhモデルは483kmだ。後者には422PSの誘導電動機が搭載され、圧倒的なパフォーマンスを発揮する。今回試乗したのもこのモデルなのだが、その加速は実に凄まじかった。
0-100km/hは4.2秒を記録する。パワフルな車に乗っていようと、テスラの無音での加速には驚くはずだ。ギアは1段で、発進加速がウサイン・ボルトの如く速いだけでなく、追い越し加速もかなり凄い。最高速度は210km/hなので高速道路でも十分通用する。

新興企業なので多少の欠点には目をつぶる必要がある。なので、インテリアの質感の低さにも目をつぶることにしよう。特にシートの質感は低い。サスペンションやステアリングのセッティングも改善を要する。
しかし、テスラが作り上げた車が革新的であるという事実だけでも十分だ。広大な荷室スペースに2人掛けのシートを装着し、7人乗りにすることまでできる。
航続距離についても触れよう。普段から踏み込んだり、高速道路を飛ばしたりしていれば、480kmの航続距離を実現することはできない。しかし、慎重に運転すれば確実に実現できる。アグレッシヴに運転しても300km以上は走ることができる。
マスクは充電インフラの整備について政府や他企業には頼っておらず、2015年の終わりまでにイギリス中にテスラスーパーチャージャーという充電器を配置する計画だ。これを使うと、85kWhモデルの場合で1時間以内に充電することができる。つまり、ロンドンからエディンバラまで運転することもできるし、ランチの合間に充電してしまうこともできる。
では、お金の話に移ろう。60kWhの標準モデルは5万ポンドを少し超える値段で、パフォーマンスは6万9,000ポンド、パフォーマンス・プラスは8万3,000ポンドだ。フル充電には5ポンドかからないし、税制面での優遇もあるので、車両価格だけで語れる単純な話ではない。
もしかしたら、街中で日常的にテスラを見かけるようになるのかもしれない。あるいは、僕が住むような田舎でもテスラが走るようになるのかもしれない。
Tesla Model S: The luxury electric car with performance to blow away the petrolheads

イーロン・マスクという名前はまるでボンドの宿敵か香水の名前のようだ。彼はPayPalの創設者であり、民間企業として世界で初めて国際宇宙ステーションに宇宙船を送ったスペースX社の創業者でもあり、そして自動車メーカー、テスラの取締役でもある実業家だ。彼は控えめに表現しても聡明な人間だろう。
今回、我々は右ハンドル仕様のテスラ・モデルSに試乗した。他の大手自動車メーカーが作る電気自動車とは違い、マスクが生み出した電気自動車はメルセデスやアウディ、BMWと競合するような高級車だ。
しかし、マスクは馬鹿ではない。事実、フォルクスワーゲンの電気自動車、e-up!には問題がある。ベースとなったガソリン仕様のup!は非常に低価格なため、電気自動車を選んだほうがランニングコストまで計算に入れてもむしろ高くついてしまう。同じようなことはルノー・ゾエや日産・リーフにも言える。しかしモデルSは違う。
お金の話をする前に、まずは車を観察することにしよう。エクステリアには特別感があり、特に走りだすと引っ込んでしまうドアハンドルは見事だ。しかし、本当に凄いのはインテリアだ。車内には『巨人の惑星』の世界のスクリーンが置かれている。まるで巨大なiPadだ。
ステアリングにある数個のボタンを除けば、この車にはボタンが2つ(ハザードランプ用のボタンとグローブボックスの開閉用ボタン)しか存在しない。それ以外の操作系はすべてスクリーンに集約されている。ステアリングやパワー、サスペンションのセッティングもだ。スクリーンでオーナーズマニュアルを読むこともできるし、近場の充電ステーションを探すこともできる。
センターコンソールはかなり小さく、足元にはかなりの開放感がある。バッテリーは巨大で、フロアの下に搭載されている。
グレードは3種類ある。標準モデルには60kWhのバッテリーが搭載され、「パフォーマンス」には85kWhのバッテリーが搭載される。「パフォーマンス・プラス」にも同じ85kWhのバッテリーが搭載されるのだが、このモデルにはスポーツチューンドエアサスペンション、スポーツタイヤ、大径ホイールが装備される。
60kWhモデルの航続距離は322kmで、85kWhモデルは483kmだ。後者には422PSの誘導電動機が搭載され、圧倒的なパフォーマンスを発揮する。今回試乗したのもこのモデルなのだが、その加速は実に凄まじかった。
0-100km/hは4.2秒を記録する。パワフルな車に乗っていようと、テスラの無音での加速には驚くはずだ。ギアは1段で、発進加速がウサイン・ボルトの如く速いだけでなく、追い越し加速もかなり凄い。最高速度は210km/hなので高速道路でも十分通用する。

新興企業なので多少の欠点には目をつぶる必要がある。なので、インテリアの質感の低さにも目をつぶることにしよう。特にシートの質感は低い。サスペンションやステアリングのセッティングも改善を要する。
しかし、テスラが作り上げた車が革新的であるという事実だけでも十分だ。広大な荷室スペースに2人掛けのシートを装着し、7人乗りにすることまでできる。
航続距離についても触れよう。普段から踏み込んだり、高速道路を飛ばしたりしていれば、480kmの航続距離を実現することはできない。しかし、慎重に運転すれば確実に実現できる。アグレッシヴに運転しても300km以上は走ることができる。
マスクは充電インフラの整備について政府や他企業には頼っておらず、2015年の終わりまでにイギリス中にテスラスーパーチャージャーという充電器を配置する計画だ。これを使うと、85kWhモデルの場合で1時間以内に充電することができる。つまり、ロンドンからエディンバラまで運転することもできるし、ランチの合間に充電してしまうこともできる。
では、お金の話に移ろう。60kWhの標準モデルは5万ポンドを少し超える値段で、パフォーマンスは6万9,000ポンド、パフォーマンス・プラスは8万3,000ポンドだ。フル充電には5ポンドかからないし、税制面での優遇もあるので、車両価格だけで語れる単純な話ではない。
もしかしたら、街中で日常的にテスラを見かけるようになるのかもしれない。あるいは、僕が住むような田舎でもテスラが走るようになるのかもしれない。
Tesla Model S: The luxury electric car with performance to blow away the petrolheads