今回は、英国「Telegraph」による新型レクサス・LC500 プロトタイプの試乗レポートを日本語で紹介します。


LC500

報道陣が溢れるデトロイトショーのプレスカンファレンスで発表されたレクサス・LCはまったくの新型車のようにも見えるのだが、その始まりはおよそ5年前に遡る。

LCは2012年に発表されたLF-LCコンセプトが元になっており、市販モデルはアメリカおよび日本では2016年に、ヨーロッパでは2017年に発売される予定だ。

LCには最高出力475PS、最大トルク54.0kgf·mを発揮するRC FやGS Fと共通の5.0L V8エンジンが搭載され、パドルシフト付きの新設計10速ATが初めて採用される。

LCは軽量なカーボンファイバーを用いており、車重は1,800kgで、0-100km/h加速は4.5秒を記録する。また、この車には次期LSにも採用される予定のコンポーネンツが使われている。

ここで2011年8月に行われたペブルビーチ・コンクール・デレガンスを振り返ることにしよう。トヨタの最高責任者でトヨタの創業者の孫でもある豊田章男氏は、ペブルビーチにおいて、レクサスの「新しい顔」であるスピンドルグリルを身に纏った4代目GSを発表した。

しかし、章男氏は満足していなかった。彼はレクサスのデザインについてデザイン部門と意見を違えた。しかも、彼の災難はそれだけに留まらなかった。当時は東日本大震災からもまだ完全に立ち直っていなかったし、世界的に行われた大規模リコールのダメージも残っていた。それに、レクサスが11年間にわたって死守し続けていたアメリカ高級車市場のトップの座も奪われてしまった。

結局のところ、ただ信頼性が高くて作りが良く、荷室にゴルフバッグが入って価格に競争力がある、というだけでは不十分だった。

ドイツ車はデザインや走行性能の優れた車を出すことで反撃した。実際、はっきり言ってしまえばレクサスは退屈な車だったし、レーシングドライバーでもある章男氏もその点は認めている。そして、章男氏はレクサスに感情を取り戻すことを宣言した。

チーフエンジニアの佐藤浩二氏は以下のように語った。
ペブルビーチでのスピーチは出発点でした。我々はただクーペを作ったわけではありません。新しい世代のレクサスを創ったんです。

LCの開発は型破りの方法で行われた。社内だけで開発を進めると視野が狭くなってしまうと考え、レーシングドライバー、ジャーナリスト、ディーラーの社員などの社外の人材を確保した。

レクサスのような秘密事項の多い企業では、このような試みに反発の声も多かった。そのため、私含め社外の「アドバイザー」は守秘義務を守ることを誓約書に明記しなければならない。

開発最後の年には佐藤氏率いるイレギュラーなチームが一堂に会し、テストコースやアメリカの公道においてテストを行った。最後のテストはクリスマス前にロサンゼルス北部のウィロースプリングス・レースウェイで行われた。

車に施された最後の変更は、サスペンションジオメトリーとフロントウィッシュボーン用ボールジョイントの設計変更と、エアサスペンションおよび後輪操舵システムのセッティング変更だった。これにより、LCのフィーリングはかなり改善している。

個人的には、後輪操舵システム(オプション設定される予定だ)はもう少し強化してもいいと思うし、前輪の操舵は軽すぎるようにも感じるのだが、ベンチマークにした車(BMW 6シリーズ、マセラティ・グラントゥーリズモ、ポルシェ・911、メルセデス・ベンツ Sクラスクーペ)と比べても十分に良く仕上がっている。

市販モデルには最新のブリヂストン製ランフラットタイヤが装着される。トレッドパターンやゴム構造が新しくなり、ツープライではなくシングルプライ構造を採用しており、サイドウォールに使われるゴムは16%少なくなっている。これにより、軽量化とランフラット化による乗り心地の悪化の防止が実現している。

プロジェクトマネージャーの友松秀夫氏から10速ATについて話を聞くこともできた。私はレクサスがデュアルクラッチトランスミッションを使わない理由を尋ねると、こう答えてくれた。

私にはDCTの必要性が理解できないんです。スポーティーなフィールのためだとも言われているのですが、10速ATでもそれは達成できます。それに、DCTは効率性こそ高いのですが、湿式クラッチは大パワーに十分に耐えることができません。それから、これが一番重要なのですが、アメリカと日本のお客様はDCT特有の低速域でのギクシャク感を嫌います。

佐藤氏は、後輪操舵システムに関しては私の意見に賛同してくれたのだが、ステアリングが軽すぎるという考えについてはあまり賛同してくれなかった。とはいえ、ターンインはソフトながら応答性が高いし、コーナリング時の路面追従性も高い。LCにはちゃんとした個性が存在する。この点は佐藤氏と意見が一致した。

佐藤氏はこんなことも話してくれた。
私が一番気に入っているのは、ステアリングの正確性とヨーのかかり方です。依然として理想と現実にはギャップがありますし、後輪操舵システムもその一つなんですが、それでも、BMWでもジャガーでもない、レクサスの"味"が生まれたと思います。

開発はあと数ヶ月で終了する予定だ。プロトタイプはこれからカーボンファイバー製パーツが付くなどして市販モデルに近付いていくことだろう。

佐藤氏によると、開発にあたっては基本に立ち返ることを重視したそうだ。また、一番大変だったのは最後の10%を突き詰めることだったそうだ。

佐藤氏率いるイレギュラーなチームは既に解散しているのだが、私のような人間が新型車の開発に携われたことを誇りに思っているし、LCを開発したチーム全体のことが好きになった。

発売に至る前にLCには重大な試練が待ち受けている。2月終わりには章男氏がLCをテストすることになっている。章男氏は厳しいことで有名だが、LCを気に入ってくれればいいと願っている。


2016 Lexus LC prototype driven