イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。
今回紹介するのは、2006年に書かれたレクサス・IS250のレビューです。

妻にはときどき、某女性誌から「車の記事を書いてくれないか」という依頼が来る。女性の視点から車の評価をしてほしいのだそうだ。
なるほど。しかし、自動車に対する女性の視点とは一体何なのだろうか。色だろうか。ドアハンドルに爪をひっかけてしまうとかそういう話だろうか。子供に十分なスペースがあるとかそういう話だろうか。
しかし、私の妻はこういった点については非常に無関心だ。車に興味のある女性の視点は、車に興味のある男性の視点と変わらない。重要なのは、パワー、デザイン、ハンドリングだ。そもそも、車に興味のない女性読者は、著者の性器がどんな形状であろうと車に関する記事など読みはしない。
妻はケータハム・コスワースについて1,000単語の原稿を書いた。そこには、この車に乗ると目は飛び出し、髪は燃え盛り、名作映画『ターミネーター』を見ている時と同じくらいに楽しめると書かれていた。言うまでもなく、この記事はお蔵入りとなった。
3児の母である私の妻について振り返ってみよう。かつてはケータハムに乗っていて、今でも懐かしんでいるし、それから、ロータス・エリーゼ 111Sには静かすぎると言ってスポーツエグゾーストを付けていた。BMW Z1や何かバイク的なものにも乗っていたことがある。そして今の愛車はアストンマーティン・V8ヴァンテージだ。
そんな妻に対して室内空間は十分かだの、ハンドバッグをかけるフックは付いているかだのと尋ねようものなら、コンロッドを尻に挿入されてしまうだろう。妻はそんなことに関心はない。燃費についてなど決して言及してはならない。そんなことを話そうものなら、ガソリンをかけられて燃やされてしまう。
だから、私が車の批評をする時には、「男向け」、「女向け」とは絶対に書かない。そんなことを書いてしまえば妻にアイロンがけされてしまう。あるいは、戸棚に監禁されてしまうかもしれない。
しかし、私はそもそも男女差別するほうではないので、これに不自由を感じたことはない。飛行機のパイロットが女性だったからといって慌てて飛行機を飛び降りることもないし、女医に診られても何の不安も感じない。
しかし、今回の主題となる車、レクサス・IS250についてはいくらかの偏見を持たずにはいられない。この車を運転している女性を見たことがあるだろうか。それ以前に、レクサスを運転している女性を見たことがあるだろうか。
映画『ターミネーター3』でT-Xに強奪されたSC430は例外として、ほかには見たことがない。エボVIIIやフェラーリやアストンに乗っている女性なら見たことがある。ランボルギーニ・LM002に乗っている女性すらも見たことがある。けれど、レクサスに乗っている女性は見たことがない。
おそらく、これを読んだレクサスの広報部門は、レクサスの購入者のx%は女性だという資料をメールで私に送ろうとしていることだろう。しかし、この資料にある「女性」には確実に喉仏があるはずだ。
レクサスが男向けのブランドである理由は何なのだろうか。ISのデザインは素晴らしいし、仕立ての良さでこれに勝る車など地球上には他に存在しないだろう。
当然、問題点もある。リアシートは狭いし、シートのサポート性も足りないし、ステアリングはシャープすぎるし、ドアミラーのサイズはドアと同じくらいだ。けれど、ミラーが大きすぎることに不満を言う女性などこれまでにいただろうか。
また、レブカウンターはレッドゾーンに近付くにつれてオレンジ色に輝きはじめる。妻曰く、この機能は非常に気に入ったそうだ。
で、結局のところ、何が女性を遠ざけてしまっているのだろうか。ISは私の妻すら遠ざけた。妻曰く「なんか好きになれない」そうだ。
けれど、私は気に入った。当然、この車は大して速いわけではない。私のセカンドサーブと同じくらいのパワーしかない。しかし、この超シャープなステアリングはなかなか悪くない。もし奇跡的にスピードが出せたなら全神経を尖らせる必要がある。この車でスピードを出すとかなり暴れやすい。
それに、タッチスクリーンナビはあまりに複雑だ。女性ならば取扱説明書を読んで解決することもできるはずだ。しかし、私はこの車の快適さに感激することに忙しかった。エンジンはほとんど無音だし、1万坪はあろうドアミラーが付いているにもかかわらず、風切り音も存在しない。
乗り心地も良い。スピードバンプに乗り上げるたびに暴れるほど硬いわけではないし、コーナーのたびに横転するほど柔らかいわけでもない。
それに、操作系が太陽よりも長続きしそうなくらいに頑丈だったという点も気に入った。オーディオはエンジンなんかよりもずっとパワフルで魅力的だ。
装備内容を考慮すれば、BMW 3シリーズよりも数千ポンドは安い計算になる。それに、見た目も3シリーズより良い。それどころか、メルセデス・Cクラスよりも、アウディ・A4よりも、ジャガー・Xタイプよりも恰好良い。
私なら、このクラスではアルファ ロメオ 159を選ぶ。この車にはレクサスには存在しない魂がある。けれど、故障が嫌なのであればIS250という選択も十分にありだ。
ここで最初の疑問に戻ろう。なぜレクサスに乗っている女性がいないのだろうか。答えを見つけるためには少し論理的な思考をする必要がある。男であれ女であれ、車に興味がない人はレクサスを購入するはずだ。レクサスはほどよくつまらない。
要するに、レクサスは車に興味がない人のための車だ。しかし、ここで分岐が起こる。男はレクサスで満足するのだが、女はそこで満足できない。
これについて検証するために、少し変わった実験をしてみた。無作為に女性に電話をかけてレクサスについて尋ねてみた。するとその返答はこんなものだった。
「レクサス? 最悪よ。ゴルフをする奴の車でしょ。」
「レクサスに乗っているような奴とは知り合いになりたくないわ。」
疑いようのない結論が出てしまった。レクサスを購入すると2つのことが証明される。一つは、その購入者が男であるということ。もう一つは、その購入者がパワーやハンドリングにまったく興味がないということだ。こんな男性にはどんな女性も近寄ってくるはずがない。
なので、アルファは嫌だと言う前にもう一度よく考え直して欲しい。
今回紹介するのは、2006年に書かれたレクサス・IS250のレビューです。

妻にはときどき、某女性誌から「車の記事を書いてくれないか」という依頼が来る。女性の視点から車の評価をしてほしいのだそうだ。
なるほど。しかし、自動車に対する女性の視点とは一体何なのだろうか。色だろうか。ドアハンドルに爪をひっかけてしまうとかそういう話だろうか。子供に十分なスペースがあるとかそういう話だろうか。
しかし、私の妻はこういった点については非常に無関心だ。車に興味のある女性の視点は、車に興味のある男性の視点と変わらない。重要なのは、パワー、デザイン、ハンドリングだ。そもそも、車に興味のない女性読者は、著者の性器がどんな形状であろうと車に関する記事など読みはしない。
妻はケータハム・コスワースについて1,000単語の原稿を書いた。そこには、この車に乗ると目は飛び出し、髪は燃え盛り、名作映画『ターミネーター』を見ている時と同じくらいに楽しめると書かれていた。言うまでもなく、この記事はお蔵入りとなった。
3児の母である私の妻について振り返ってみよう。かつてはケータハムに乗っていて、今でも懐かしんでいるし、それから、ロータス・エリーゼ 111Sには静かすぎると言ってスポーツエグゾーストを付けていた。BMW Z1や何かバイク的なものにも乗っていたことがある。そして今の愛車はアストンマーティン・V8ヴァンテージだ。
そんな妻に対して室内空間は十分かだの、ハンドバッグをかけるフックは付いているかだのと尋ねようものなら、コンロッドを尻に挿入されてしまうだろう。妻はそんなことに関心はない。燃費についてなど決して言及してはならない。そんなことを話そうものなら、ガソリンをかけられて燃やされてしまう。
だから、私が車の批評をする時には、「男向け」、「女向け」とは絶対に書かない。そんなことを書いてしまえば妻にアイロンがけされてしまう。あるいは、戸棚に監禁されてしまうかもしれない。
しかし、私はそもそも男女差別するほうではないので、これに不自由を感じたことはない。飛行機のパイロットが女性だったからといって慌てて飛行機を飛び降りることもないし、女医に診られても何の不安も感じない。
しかし、今回の主題となる車、レクサス・IS250についてはいくらかの偏見を持たずにはいられない。この車を運転している女性を見たことがあるだろうか。それ以前に、レクサスを運転している女性を見たことがあるだろうか。
映画『ターミネーター3』でT-Xに強奪されたSC430は例外として、ほかには見たことがない。エボVIIIやフェラーリやアストンに乗っている女性なら見たことがある。ランボルギーニ・LM002に乗っている女性すらも見たことがある。けれど、レクサスに乗っている女性は見たことがない。
おそらく、これを読んだレクサスの広報部門は、レクサスの購入者のx%は女性だという資料をメールで私に送ろうとしていることだろう。しかし、この資料にある「女性」には確実に喉仏があるはずだ。
レクサスが男向けのブランドである理由は何なのだろうか。ISのデザインは素晴らしいし、仕立ての良さでこれに勝る車など地球上には他に存在しないだろう。
当然、問題点もある。リアシートは狭いし、シートのサポート性も足りないし、ステアリングはシャープすぎるし、ドアミラーのサイズはドアと同じくらいだ。けれど、ミラーが大きすぎることに不満を言う女性などこれまでにいただろうか。
また、レブカウンターはレッドゾーンに近付くにつれてオレンジ色に輝きはじめる。妻曰く、この機能は非常に気に入ったそうだ。
で、結局のところ、何が女性を遠ざけてしまっているのだろうか。ISは私の妻すら遠ざけた。妻曰く「なんか好きになれない」そうだ。
けれど、私は気に入った。当然、この車は大して速いわけではない。私のセカンドサーブと同じくらいのパワーしかない。しかし、この超シャープなステアリングはなかなか悪くない。もし奇跡的にスピードが出せたなら全神経を尖らせる必要がある。この車でスピードを出すとかなり暴れやすい。
それに、タッチスクリーンナビはあまりに複雑だ。女性ならば取扱説明書を読んで解決することもできるはずだ。しかし、私はこの車の快適さに感激することに忙しかった。エンジンはほとんど無音だし、1万坪はあろうドアミラーが付いているにもかかわらず、風切り音も存在しない。
乗り心地も良い。スピードバンプに乗り上げるたびに暴れるほど硬いわけではないし、コーナーのたびに横転するほど柔らかいわけでもない。
それに、操作系が太陽よりも長続きしそうなくらいに頑丈だったという点も気に入った。オーディオはエンジンなんかよりもずっとパワフルで魅力的だ。
装備内容を考慮すれば、BMW 3シリーズよりも数千ポンドは安い計算になる。それに、見た目も3シリーズより良い。それどころか、メルセデス・Cクラスよりも、アウディ・A4よりも、ジャガー・Xタイプよりも恰好良い。
私なら、このクラスではアルファ ロメオ 159を選ぶ。この車にはレクサスには存在しない魂がある。けれど、故障が嫌なのであればIS250という選択も十分にありだ。
ここで最初の疑問に戻ろう。なぜレクサスに乗っている女性がいないのだろうか。答えを見つけるためには少し論理的な思考をする必要がある。男であれ女であれ、車に興味がない人はレクサスを購入するはずだ。レクサスはほどよくつまらない。
要するに、レクサスは車に興味がない人のための車だ。しかし、ここで分岐が起こる。男はレクサスで満足するのだが、女はそこで満足できない。
これについて検証するために、少し変わった実験をしてみた。無作為に女性に電話をかけてレクサスについて尋ねてみた。するとその返答はこんなものだった。
「レクサス? 最悪よ。ゴルフをする奴の車でしょ。」
「レクサスに乗っているような奴とは知り合いになりたくないわ。」
疑いようのない結論が出てしまった。レクサスを購入すると2つのことが証明される。一つは、その購入者が男であるということ。もう一つは、その購入者がパワーやハンドリングにまったく興味がないということだ。こんな男性にはどんな女性も近寄ってくるはずがない。
なので、アルファは嫌だと言う前にもう一度よく考え直して欲しい。
リクエストなのですが、トップギアの3人のパガーニかケーニグセグのレビューはないでしょうか?
ありましたら是非お願いします。