今回は、インド「Top Gear」によるタタ・ジカ(後にティアゴに車名変更)の試乗レポートを日本語で紹介します。


Zica

タタは長らく日本や韓国のメーカーを追いかけてきたが、ジカの登場によりタタはなおいっそう日韓の自動車メーカーに近付くことだろう。新型ジカはヒュンダイ・i10と同クラスのモデルであり、ナノボルトの間に空いていた大きなギャップを埋めるモデルだ。

このクラスの車はスペース効率が良くても質素なモデルが多く、一般向けではなく商用車として用いられることが多くなっている。しかし、ジカは一般向けに焦点を合わせ、小型車を求める層にアピールしようとしている。

ジカには完全新設計のプラットフォームが採用されており、デザインは小綺麗にまとまっている。他社のモデルに似ている部分もあるのだが、それほど気になるわけではない。タタ・インディカとは根本的に違うデザインにしようと意図したそうだが、その目的は達成されている。

ジカのデザインは古臭くないし、フロントフェイスは個性的だ。大型ヘッドランプや横長のメッシュグリルのおかげで独特の印象を与えている。また、ウエストラインに沿ってプレスラインが入っており、フレッシュな印象もある。上級グレードに装着される14インチホイールのデザインも独特だ。小型のリアスポイラーのおかげでスポーティーさも感じられる。

interior

インテリアもなかなかだ。色使いも良いし、ファブリックの質も高い。使われているプラスティックには安物丸出しのものから上質のものまであるのだが、幸い後者のほうが多い。それに、スイッチ類の質感も高いし、配置も適切だ。ステアリングは小径でスポーティーだし、オーディオ・ハンズフリーフォン操作用のステアリングスイッチも付いている。当然、これは上級グレードにしか付かない装備だ。また、小型のマルチメディアディスプレイも付いており、スマートフォンと連携させることでナビを表示することもできる。本物のナビに比べれば劣るが、何もないよりはましだ。

シャシだけでなく、エンジンも新設計だ。最高出力85PS、最大トルク11.6kgf·mを発揮する1.2Lガソリンエンジンが搭載される。これは第二世代のレボトロンエンジンだ。オールアルミとなっており、軽量化されてはいるのだが、代償として高回転域では少しやかましくなっている。トランスミッションは5速MTのみで、現時点ではAMTは設定されない。ギアレシオはうまく設定されており、エンジンともよく合っている。変速はあまりきっちりしているわけではないが、シフトストロークは十分に短い。パワーバンドは広いが、速く走るためにはエンジンを全力で回す必要がある。

また、最高出力70PS、最大トルク14.3kgf·mを発揮する1,050ccのディーゼルエンジン、通称レボトルクエンジンも設定される。こちらはトルクが十分にあるため、ガソリンエンジン以上に扱いやすかった。燃費については公表されていないのだが、試乗時の燃費計の数字は、ガソリン車で11~12km/L、ディーゼル車で14~15km/Lだった。スズキのライバルには劣るかもしれないが、ジカの方が重いということも考慮する必要がある。

rear

ジカの走りは優秀だ。ステアリングは低速では軽いし、速度を上げるにつれて重くなっていき、むしろ競合車より優れている。試乗車には175/65R14のグッドイヤー製タイヤが装着されていた。旋回時・制動時には十分グリップ力があると感じられた。試乗車にはABSやデュアルフロントエアバッグも付いていた(いずれも全車標準装備かは現時点では不明)。

タタらしく乗り心地も良い。シートは十分大きいし作りも良く、エアコンも十分パワフルなので室内は非常に居心地が良い。

ジカはまもなく発売される。価格設定については未発表だが、ガソリン車は39万ルピー、ディーゼル車は44万ルピー程度になると推測される。当然、低グレードにはエアバッグやエンターテインメントシステム、ハンズフリーフォンなどは装備されないことだろう。

そういった装備が付く上級グレードは50万ルピー程度になることだろう。上級グレードは安くて装備が豊富な車を求める人の興味をそそるはずだ。ジカはライバルに十分太刀打ちできる車に仕上がっている。品質にさえ気をつければ、ライバルを脅かす存在にもなりうる。


Review: Tata Zica