イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2009年に書かれたシュコダ・オクタヴィア スカウト 1.8 TSIのレビューです。


Octavia Scout

ローバーという会社を終わらせたのはなんなのだろうか。ローバーを買収したフェニックス・ベンチャー社の連中だと考える人もいる。この人達は髭を伸ばしてウォリックシャーのハーフティンバーの世界で踊っていた。

ローバーのトップ、ケヴィン・ハウとその髭仲間たちがやってくるよりも前からローバーは終わっていたと考える人もいる。そうではなく、偉大なるストークス卿がローバーを終わらせたそうだ。彼は非常に温厚な人間で、労働組合とした約束を本気で信じ込んでいた。

しかし、レッド・ロッボの主導により、労働組合は年間で350回のストライキを行った。その後、従業員1人あたりの年間製造台数が4台にまで落ち込み、ジェームズ・キャラハンはローバーのトップにマイケル・エドワーズを指名した。

あるいは、ローバーを終わらせたのはローバーが作っていた車それ自体だと考える人もいる。モーリス・マリーナという悲惨な車があった。オースチン・アレグロは出荷時にドアに工場労働者の食べ残しのサンドイッチが残っていることもよくあった。トライアンフ・TR7も酷い車だったし、オースチン・ランドクラブは塗装が乾く前に出荷された。新車なのにもう錆びているということもよくあった。

しかし、ローバーが本当に終わったのは2003年にストリートワイズという車が登場した時だと思う。

ストリートワイズはそもそも出来の悪かったローバー・25がベースとなっており、車高が上げられ、タフに見せかけるために仰々しいゴム製のバンパーやサイドストライプが装着された。しかし、実際にはドクターマーチンを履いた高齢者にしか見えなかった。

しかも、この車は「アーバン・オンローダー」と謳われた。これを翻訳すると「街中で運転することのできる車」という意味だ。つまりごく平凡な車という意味なのだが、実際は違った。それよりも酷かった。

言うまでもなく、このような試みには前例があった。マトラというフランスのメーカーがランチョという車を作っている。この車は前輪駆動車なのだが、ポリエステル製のパネルやルーフバーなどのオフロード風の装飾品を身に纏っていた。しかし、この車は失敗に終わった。

車のデザインはその本質に一致していなければならない。フェラーリは低く、滑らかであるべきだ。ボルボはアンティークショップのようなデザインであるべきだ。ロールス・ロイスは大富豪に似合う車であるべきだ。しょうもないエンジンを積んだ車をランボルギーニのようなデザインにしてはいけない。ストリートワイズやランチョのような2WD車にオフロード風のドレスを着せても間抜けなだけだ。

これがシュコダ・ルームスターの話に繋がる。一体何を考えているのだろうか。私は普通のルームスターが好きだ。まともに動かない3気筒ディーゼルは例外だが、小型車としては非常に優秀だ。ところが、地上高を上げ、ストリートワイズ風のデザインを身に纏ったモデルが追加された。しかも4WDモデルは存在しない。つまり、これでオフロードに突っ込めば再び戻って来ることはできない。

なので、わざわざこんな車に試乗するつもりすらない。代わりに、その兄貴分に当たる車、オクタヴィアスカウトを試乗することにした。

ランチョやローバーやルームスター同様、この車も基本的には前輪駆動だ。しかし、オフロードを走ると駆動力が自動的に後輪に配分されて四輪駆動に変貌する。

今朝この車に乗って田舎に向かったのだが、レンジローバーのドライバーすら引き返そうかと悩ませるような路面ですらしっかりと進んで驚かされた。この4WDシステムはスポーツカーのアウディ・TTとも共通のはずなのだが、ちゃんと働いてくれる。それに、プラスティック製のスカートが付いているためボディを傷付ける心配もなく、車高が高いので障害物に当たることも少ない。

こんな車はいらないと思う人もいるはずだ。しかし、サスペンションのストロークが長いおかげでオンロードでの乗り心地も良い。眠っているのと同じくらいに快適だ。M40のジャンクション8とジャンクション9の間は道が非常に悪く、ロールス・ロイスすらも揺すられてしまう。しかし、スカウトは滑るように走り抜けた。

当然、欠点もある。2WDの車高の低い標準モデルと比べるとサーキットでの操作性は劣る。しかし、こんなことは大した問題ではない。シュコダにそんなものを求める人など存在しない。

そもそも、操作性やステアリングは非常に優秀だし、パフォーマンスも同様に素晴らしい。試乗したのは1.8Lのガソリン車だったのだが、アクセルを踏むと遅すぎず速すぎずのちょうどいい加速をした。高速道路では静かで落ち着いている。ただし、急坂では5速に落とす必要があるかもしれない。最高速度は211km/hだ。

室内も素晴らしい。ナビなんて付いていないし、ステアリングスイッチなんてものもない。ステッチのような軽薄なものはない。まったくもってまっすぐな車だ。それに室内は広いし、実質フォルクスワーゲンであることを考えても十分に作りは良い。

以前、合理性だけで車を買うとしたらフォルクスワーゲン・ゴルフを購入すると言ったことがある。2人の子供がいる父親なら、ゴルフを買えばいい。ドバイの裕福なプレイボーイに必要なのもゴルフだ。子供を学校に送り迎えする母親に必要なのもゴルフだ。学生に必要なのは中古のゴルフだ。土地の管理業者だろうと、宇宙飛行士だろうと、ゴルファーだろうと、答えは変わらない。

しかし、価格まで考えるとシュコダ・オクタヴィアスカウトはゴルフ以上に万能だ。ボルボにもアウディにもオフロードを走ることのできるステーションワゴンはある。しかし、A4オールロードは一番安いモデルでも3万ポンドする。

また、スバル・アウトバックは使いものにならないディーゼルモデルさえ避ければ素晴らしい車だ。私はアウトバックを気に入っている。しかし、アウトバックは最も安いモデルで2万6,295ポンドかかる。

一方、私が試乗したスカウトはわずか1万8,750ポンドだった。この価格では2Lディーゼルのゴルフすら買えない。わずか1万8,750ポンドで、快適で室内が広く、作りの良い4WDステーションワゴンが買えるというのは実にお得な話だ。

オクタヴィアスカウトには欲求や渇望を惹起させるような特徴がない。この車に恋に落ちることはないだろうし、シュコダという安物ブランドを笑われてしまうかもしれない。しかし、冷静に論理的に車を選ぶのだとすれば、これ以上の車を探すのはほとんど不可能だろう。


Comfort for all the family in a Skoda Octavia Scout