イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、フォルクスワーゲン・ゴルフRエステートのレビューです。


Golf R Estate

どんな車を購入しようか考えるのは、実際に車を購入するよりも10倍は楽しい。なので、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIを買おうと決めた私はオンラインコンフィギュレーターを使って何時間もかけてボディカラーやオプションを検討したり、大径ホイールを付けることで得られるデザイン上のメリットと失われる快適性を天秤にかけたりした。

とはいえ、いつまでも引き延ばすわけにはいかないので、実際にオーダーをすることにした。これは簡単なことではなかった。あるディーラーに電話をすると、納車まで6ヶ月待ちになると言われた。別のディーラーには、ゴルフGTIよりも素晴らしいシロッコRという車があると言われた。しかしそんなものはいらない。

結局、電話で交渉するのは諦め、近所のディーラーに行くことにしたのだが、土曜日は定休日だった。いったい商売をなんだと思っているのだろうか。あとで分かったのだが、そもそもそこはディーラーでもなんでもなかった。

もっと別の車を買うこともできたのだが、心はGTIに決まってしまっていた。これまでたくさんの高級車を運転してきたのだが、それに乗ると周りの人間からコンスタントに携帯で写真を撮られてしまう。私は誰からも注目されることのない車が欲しかった。それに、1980年からずっとGTIに乗りたかったという憧れもあった。その憧れは長らく憧れのままだったのだが、数年前に7代目GTIが登場してから、どうしようもなく欲しくなってしまった。7代目GTIは本当に素晴らしい車で、本気で欲しくなってしまった。

私はついに強権を発動し、フォルクスワーゲンの本部に掛け合うことにした。そして9月にはトラックに載って家に新車がやって来た。あまりの嬉しさに飛び跳ねたい気分になったのだが、ふと冷静に見てみると、その車は5ドアだった。私の欲しかったモデルよりもドアが2枚多かった。3ドア車ではBピラーが邪魔で窓から腕を出して運転することができない。車を選んでいる時、私はそんなことまで考えていた。しかし、注文する時にチェックするのを忘れてしまった。

それはいいのだが、問題はまだあった。今年の休暇はフランスで過ごしたのだが、その際にはゴルフRを借りていた。この車はGTIよりも79PSだけ馬力が多い4WDのモデルだ。私はこの車がとても気に入った。誰であろうと気に入るはずだ。現在どんな車に乗っていようとも、試乗すればすぐにでも欲しくなるはずだ。

しかし、ゴルフRは知ったかぶりでスバル的だから、GTIの方がいいと自分に言い聞かせた。そしてつい先週、ゴルフRエステートの試乗車が家にやって来た。

この車はレンタカーレベルの装備しかないベーシックモデルでも3万3,000ポンドを超えてしまう。これはゴルフにしては高すぎるし、世の中にはそれを批判する人も多い。私だって基本的にはそれに同意する。

そうはいっても、この車について検証してみようじゃないか。そもそもこれはステーションワゴンなので、リアシートを畳むと小型の馬と各種馬具を搭載することができる。

搭載されるのはGTIと共通のエンジンなのだが、ピストンやバルブが改良されており、ターボチャージャーも強化されたことで、実に300馬力を発揮する。これにローンチコントロール付きのデュアルクラッチトランスミッションが組み合わされる。ただ、馬を乗せている時には馬が倒れてしまうのでローンチコントロールを使うべきではない。この車はそれほどまでに俊敏だ。

馬と馬力の間にはドライバーのためのスペースがある。このインテリアはかなり高い水準で仕上げられており、しかもオプションを厳選すれば何の不自由を感じることもない。

高速道路で車線を維持してくれる機能も、前の車にぶつかりそうになると自動でブレーキをかけてくれる機能も付いているので、運転中にメールを読むこともできる。

要するにこの車は、空間にゆとりがあって、速くて快適で静粛性も高く、装備内容も豊富な4WD車だ。レンジローバーを連想させる。

私の住んでいるチッピングノートンでは、近所の人間の多くがレンジローバーに乗っていた。しかし今や、多くどころかほぼ全員がレンジローバーに乗るようになった。先週末に地元の農産物直売所に行ったのだが、その駐車場には37台のレンジローバーが停まっていた。ここで私が言っているのはイヴォークの話ではない。大きな方のレンジローバーだ。

今や、レンジローバーは制服だ。しかし、ドレスコードがあると言われたら、私はあえて違う服を着たくなるような人間だ。私はレンジローバーが大好きだ。しかしここで疑問が生じる。レンジローバーはゴルフRエステートよりも優秀なのだろうか。スペックで比較してみたいのだが、フォルクスワーゲンという企業の体質を考えるに、その数字は信頼に値しないかもしれない。フォルクスワーゲンのことだ。最高速度は100万km/h、燃費は2,000km/Lなどと言い出すかもしれない。

それでも、とても速く、とても楽しいことは事実だ。乗り心地とハンドリングのバランスは完璧だし、音も素晴らしい。基本的には静かなのだが、アクセルを踏み込むと咆哮し、ドライバーをやる気にさせてくれる。それに、もし万が一事故を起こしてしまったとしても、大半の部品はゴルフディーゼルと共通なので、修理は安く済ませることができる。

あらゆる点を考慮すると、これは満点をあげられる車だ。ただし、一つだけ大きな問題がある。デザインだ。フォルクスワーゲンはRの名前を冠する車に一切の派手さを付け加えないことにしているようだ。RにはGTIにあるようなちょっとした赤い飾りさえない。相当な好き者でもない限り、平凡なゴルフと区別できない。ただ、それでもいいと思う。そういう考え方自体は嫌いではない。

ハッチバックなら、そもそものデザインが良いので何の問題もない。しかし、エステートでは話が変わってくる。エステートはずんぐりしている。そんなずんぐりした車から排気管が4本出ているのはどこか滑稽に見えてしまう。まるでターボの付いたクジラだ。

確かにゴルフRは素晴らしい車だ。しかし、たった一つの欠点のせいで台無しになってしまっている。


The Clarkson review: Volkswagen Golf R estate (2015)