イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2007年に書かれたキャデラック・SRX 4.6のレビューです。


SRX

昨晩、アウディ・TTロードスターを運転した。青々と輝く空のもと、澄んだ空気が広がる中、静やかな道を走り抜けるのは実に楽しかった。怒鳴ってほしい時には怒鳴り、落ち着いてほしいときには落ち着き、"フィール"も素晴らしく、乗り心地も完璧だった。

ドライバーズカーとしては非常に優秀に思えた。なので、欲しいとさえ思ってしまった。けれど、私は男であり、一方でTTは、ブラやハイヒールを身に着けていないのが不思議なくらいに女性的な車だ。ワイパーの付いたジェーン・オースティンだ。

股間にジャングルを持ち、ダンガリーを着るような本格的フェミニストの言葉を信じるなら、男は基本的に強姦魔であり、妻に暴力を働くことにより性衝動を抑え込んでいるそうだ。男には巨体と強靭な筋肉、それにありとあらゆる女性に子供を残そうとする本能があり、恐ろしく危険で不愉快な存在だそうだ。

しかしそれは事実だろうか。自然界を見てみると、まったく逆のように思えてしまう。

つい先日、他のライオンの子供に攻撃したライオンがその母ライオンに殺され、木の下まで引きずられて食べられている様子を撮影した写真が新聞に掲載された。

それに、ご存知かとは思うが、カマキリのメスはオスの頭を噛みちぎることで受精の成功を祝福する。

あるいは、ヘザー・ミルズという動物には、オスの住処に近寄ってほとんどのものを奪ってすぐに去ってしまう習性がある。

最新の研究によると、セネガルに住むメスのチンパンジーはジャングルを駆け回って他のサルを殺しまくるのが大好きだそうだ。実際、サルを殺すために木の枝を槍に改造する手法まで会得している。

研究者いわく、この発見は人間の技術の根源が女性にあることを証明しているらしい。なので、イザムバード・キングダム・ブルネルは女性に違いないそうだ。

ひょっとしたらそうなのかもしれないが、私なら、この発見から、メスは自然界において暴力的な強姦魔であるという結論を導く。それに、これはなにもカマキリやチンパンジーやライオンに限った話ではない。ゴールデンハムスターやハイエナや様々な魚を見てもメスの強さは観察できる。

rear

実際、トゲウオはオスと生殖行為をして産卵した直後、すぐに別の生殖相手を探しに出かける。サタデーナイトのニューカッスルでも同じような行為をする女性が観察できる。

そうなると、アウディ・TTが本当に女性的な車なのか怪しくなってしまう。怖さのない曲面的なデザインや内気そうなフロントフェイスを見るに、この車はむしろ男性的なのではないだろうか。

TTは子供を殺したり食ったりしそうにない。男を犯し、事後に首をもいだりしそうにはない。それに、トラクションコントロールやエアバッグ、それに4WDまで備わっているので、オーナーに対して凶器を突き立てるようなこともないだろう。

根拠はまだある。カモを見て欲しい。カモのメスは単調な茶色でデザインやら見た目やらにはまったくこだわっていない。一方、オスは頭を緑に染め、羽は青く飾り付けている。

私がインターネットを見ながら数分間かけて行った先駆的研究から、男の中の男でもアウディ・TTを買っていいという結論に至った。TTは男の本質に合った車だ。それにコーナリング性能も高い。

では、暴力的でデザイン性が欠如した女性的な車とはなんだろうか。女性が持つべき車とはなんだろうか。

ご存知の通り、ヒトのメスは巨大な4WD車に乗るのが好きだ。巨大な4WD車を使えば街行く人々を殺戮して他者の資産を壊滅させることができる。女性の要求に適った車だ。これが、新しく登場した大型4WD車、キャデラック・SRXの話に繋がる。

この車はデザイン性に欠けている。あまりに酷いデザインなので、可及的速やかに車に乗り込んでドアを閉めてしまいたくなる。しかし残念ながら、室内はなお酷い。

あらゆる平面にハーフティンバー様式の木材が打ち付けられており、平面どころかステアリングのような曲面にまで木材が打ち付けられている。こんなものはエリザベス朝時代の遺物だ。組み合わせられているのが茅葺きや漆喰ならばまだいいのだが、限界まで磨き抜かれた木材の横に並んでいるのはプラスチックだ。残念だがまったく調和していない。

interior

それだけではない。4.6Lエンジンを始動させて走り出すとさらなる問題が浮き彫りになる。即座にガソリンが尽きてしまう。

公式には6.8km/Lだそうだが、非公式には、別の言い方をすれば現実世界では、5km/L以上を実現するのは難しい。3万6,895ポンドという価格や、ビルから落としたピアノのように落ちていくであろうリセールバリューまで考慮すれば、この車にはイラク戦争以上にお金がかかることだろう。

しかも、この車は7シーターのはずなのだが、実際は違う。後部座席に座るためにはかなり無理な体勢をとらなければならず、ありとあらゆる生命維持装置にお世話になる羽目になる。しかし、車内に人工呼吸器など入らない。

しかも、後部座席には運転席側からしか乗り込めず、ようやく席に座れた頃には腕も脚も頭ももげており、まるで粘土のようになってしまっているはずだ。後部座席を電動格納するボタンが付いているので、それを押して後部座席などないものだと思った方がいいだろう。

SRXはハーフティンバー様式の醜いSUVだ。しかも、車両価格も維持費も燃料代も高いし、ボルボ・XC90よりも巨大なので取り回しも非常に悪い。

ここまでさんざん酷評してきたので、良いところも指摘するべきだろう。

あー…。V8のノーススターエンジンは踏み込めば結構強力だし、オフロードカーとしては乗り心地もかなりソフトだと思う。あまりにソフトなので、子供たち3人全員が酔ってしまった。

それに、大型サンルーフも気に入った。ただ、ドライビングポジションは気に入らない。ステアリングはあまりに遠すぎるにもかかわらず、チルト調節しかできない。確かにペダルの位置を調節することはできるのだが、ペダルを動かしたところで状況が悪化するだけだ。

不必要に巨大な反社会的4WDが欲しい人、すなわち女性にとってさえ、SRXは最適とは言えない。ボルボ・XC90の方がずっと良い車だ。レイアウトは理に適っているし、値段はリーズナブルだし、エクステリアはさほど脅迫的ではない。ただ、XC90と同じくらい実用的で、見た目はずっと男らしいランドローバー・ディスカバリーの方が女性には受けるかもしれない。

ではキャデラックはどうだろうか。この車の性別は判別しがたい。しかし、動物に例えることならできる。この車はライオンでもカマキリでもチンパンジーでもない。この車は、何の役にも立たない、ただ鬱陶しいだけのスズメバチだ。


Cadillac SRX4