今回は、英国の人気自動車番組「Top Gear」でもおなじみのリチャード・ハモンドが英国「Top Gear」に寄稿した自身の愛車、フォード・マスタング 390 GTのレビュー記事を日本語で紹介します。

写真のマスタングは僕の愛車だ。僕は自分の手よりもこの車を愛している。
マスタングを愛しているのはなにも僕だけじゃない。1964年に初代モデルが製造開始されてから、わずか18ヶ月で40万台が製造されている。フォードは低価格な小型2+2スポーツカーというコンセプトで見事にヒットを当て、工場の生産能力以上の需要を生み出した。
マスタングは流行に敏感な若者だけでなく、子供が独立して大きな車が手に余るようになった中高年にも受けた。
マスタングは特に先進的というわけではなかった。シトロエン・DSのような革新的発想はなかった。しかし、マスタングのデザインの美しさについては誰もが認めるところだろう。この車の美しさを論理的に説明しようと思えばそれも不可能ではないのだろうが、そんなことをするつもりはない。
ともかく、見た目さえ良ければズボンの中を熱くすることができる。それでいいじゃないか。論理的かどうかなんて関係ない。
シニカルになってアメリカ車を貶すのは簡単だ。アメリカ車といえば、作りも酷いし、燃費も悪いし、サイズも巨大だ。その点を批判するならどうぞ勝手にしてほしい。
マスタングは小型とはいってもあくまでアメリカの基準での小型であり、当時の欧州車の基準で考えればミドルサイズセダンとほぼ同じ大きさだ。
同時期に売られていたダッジ・チャージャーを所有していたこともあるのだが、こちらはあまりにも巨大だった。田舎の道を走るのも怖かったし、街中を走るなんてとんでもなかった。しかし、マスタングならば心配はいらない。しかも、サーキットでも楽しむことができる。
僕のマスタングにはリミテッドスリップデフが付いており、飛ばしてもあまり暴れることはない。フロントディスクブレーキだってちゃんと効く。ただし、ロータス・エキシージのような車と比較してはいけない。それに、V8のエンジン音が好きだろうが合わなかろうが、マスタングのV8エンジンならきっと気に入ることだろう。
登場から40年も過ぎたような車に過度な期待をするべきではないのだが、6.4L(390立方インチ)のエンジンは269PSを発揮するので、0-100km/h加速は6.2秒でこなし、最高速度は209km/hを記録する。しかし、それ以上に素晴らしいのはこの車の醸し出す"雰囲気"だ。ルームミラーさえまるでスクリーンのようであり、後ろの光景がまるで映画の中の世界のように思える。しかも、その映画のBGMがまた素晴らしい。
ところで、イギリス人はこれまでずっとヴィンテージのアメリカ車を求めてきたのだが、最近はまったく逆のことが起きているそうだ。アメリカは自国の自動車の価値に気付いたようで、クラシックマッスルカーの価値は急激に高騰している。その結果、アメリカ人がわざわざイギリスまでマスタングを取り戻しに来ている。
もしマスタングを所有しているのであればこれからも大事にするべきだろう。もしマスタングが欲しいのであれば、今のうちに確保しておいたほうがいいかもしれない。
ところで、僕のマスタングは現在、写真とは少し変わっている。『ブリット』と同じハイランドグリーンに塗り直されている。
最後にアメリカ人に謝らなければならないことがある。僕はこの車を手放すつもりはない。
Richard Hammond's icons: the Ford Mustang

写真のマスタングは僕の愛車だ。僕は自分の手よりもこの車を愛している。
マスタングを愛しているのはなにも僕だけじゃない。1964年に初代モデルが製造開始されてから、わずか18ヶ月で40万台が製造されている。フォードは低価格な小型2+2スポーツカーというコンセプトで見事にヒットを当て、工場の生産能力以上の需要を生み出した。
マスタングは流行に敏感な若者だけでなく、子供が独立して大きな車が手に余るようになった中高年にも受けた。
マスタングは特に先進的というわけではなかった。シトロエン・DSのような革新的発想はなかった。しかし、マスタングのデザインの美しさについては誰もが認めるところだろう。この車の美しさを論理的に説明しようと思えばそれも不可能ではないのだろうが、そんなことをするつもりはない。
ともかく、見た目さえ良ければズボンの中を熱くすることができる。それでいいじゃないか。論理的かどうかなんて関係ない。
シニカルになってアメリカ車を貶すのは簡単だ。アメリカ車といえば、作りも酷いし、燃費も悪いし、サイズも巨大だ。その点を批判するならどうぞ勝手にしてほしい。
マスタングは小型とはいってもあくまでアメリカの基準での小型であり、当時の欧州車の基準で考えればミドルサイズセダンとほぼ同じ大きさだ。
同時期に売られていたダッジ・チャージャーを所有していたこともあるのだが、こちらはあまりにも巨大だった。田舎の道を走るのも怖かったし、街中を走るなんてとんでもなかった。しかし、マスタングならば心配はいらない。しかも、サーキットでも楽しむことができる。
僕のマスタングにはリミテッドスリップデフが付いており、飛ばしてもあまり暴れることはない。フロントディスクブレーキだってちゃんと効く。ただし、ロータス・エキシージのような車と比較してはいけない。それに、V8のエンジン音が好きだろうが合わなかろうが、マスタングのV8エンジンならきっと気に入ることだろう。
登場から40年も過ぎたような車に過度な期待をするべきではないのだが、6.4L(390立方インチ)のエンジンは269PSを発揮するので、0-100km/h加速は6.2秒でこなし、最高速度は209km/hを記録する。しかし、それ以上に素晴らしいのはこの車の醸し出す"雰囲気"だ。ルームミラーさえまるでスクリーンのようであり、後ろの光景がまるで映画の中の世界のように思える。しかも、その映画のBGMがまた素晴らしい。
ところで、イギリス人はこれまでずっとヴィンテージのアメリカ車を求めてきたのだが、最近はまったく逆のことが起きているそうだ。アメリカは自国の自動車の価値に気付いたようで、クラシックマッスルカーの価値は急激に高騰している。その結果、アメリカ人がわざわざイギリスまでマスタングを取り戻しに来ている。
もしマスタングを所有しているのであればこれからも大事にするべきだろう。もしマスタングが欲しいのであれば、今のうちに確保しておいたほうがいいかもしれない。
ところで、僕のマスタングは現在、写真とは少し変わっている。『ブリット』と同じハイランドグリーンに塗り直されている。
最後にアメリカ人に謝らなければならないことがある。僕はこの車を手放すつもりはない。
Richard Hammond's icons: the Ford Mustang
ありがとうございます