今回は、英国「Auto Express」によるトヨタ MIRAIの試乗レポートを日本語で紹介します。

トヨタは1997年に初代プリウスを発売し、環境対応車のパイオニアとなった。ハイブリッドは内燃機関のありかたを大きく変えた革新的なアイディアだった。
それから15年ちょっとのうちに、トヨタはヨーロッパでプリウスを100万台売り上げ、新型プリウスも登場目前にある。新型の成功もほとんど約束されていると言っていいかもしれない。
しかし、トヨタはその栄光に縋り続けることを良しとせず、さらなる未来への一歩を踏み出した。それが、100%ゼロ・エミッションのトヨタ MIRAIだ。
この車は、我々が以前に試乗したヒュンダイ・ix35 FCV(別名: ツーソンフューエルセル)と基本的に同じ燃料電池車だ。空気中の酸素とタンクに貯蔵された水素を混ぜ合わせることによりエネルギーを発生させ、前輪に繋がれたモーターを動かすというシステムだ。理論値では480kmの航続距離を実現しているそうだ。
MIRAIは長らくの研究と実験の果てに生まれており、トヨタ初の市販燃料電池車でもある。トヨタが2008年に生み出したFCHV-advコンセプトと比べると、車重が48%も軽くなり、パワーも26%向上している。
154PSという最高出力は不十分のようにも思えるのだが、電気自動車同様、この出力を即座に発揮することができる。つまり、信号加速では十分にパワフルだ。ただし、これはドライ路面の場合の話だ。
試乗したのは雨の降る10月のハンブルグで、MIRAIはトラクションを確保するにも、コーナーを曲がるにも悪戦苦闘した。ただし、運転がつまらないというわけではなく、ステアリングは元気だし、操作性もそれなりに良いので、自信を持ってコーナーを曲がることができる。それに、レザーシートの出来も良いし、足は柔軟なので、快適性も高い。
電気自動車でもそうなのだが、これだけ静かな車を作れば、本来エンジンに掻き消されていたはずの騒音をいかに潰すかが重要になってくる。トヨタは遮音性の高いアコースティックガラスを採用し、ボディフレーム内部には遮音材を配置したため、130km/hでも静粛性は非常に高い。
遮音材はボンネットなどにも配されており、ドアミラーは風切り音を最小限に抑えるように設計されている。高速域ではタイヤノイズが聞こえてくるが、雨が降っている状況でも声を上げて会話をする必要はなかった。
6万6,000ポンドという価格は非常に高くも思えるが、トヨタは補助金獲得に向けて働きかけており、1万5,000ポンド程度の補助は得られる見通しだ。また、点検、タイヤ、燃料すべて含んで毎月750ポンドのリースプランもある。
先進装備・安全装備はてんこ盛りで、タッチスクリーンナビ、シートヒーター、自動ブレーキ、死角警報はすべて標準装備だ。グレードは1種類しか設定されない。
エクステリアデザインは良いとは言えないものの、インテリアの品質には文句無しだ。レクサスバッジが付いていない車としてはトヨタの中で最も高級感がある。ダッシュボード、シート、ステアリングはいずれもレザーに包まれている。
MIRAIはDセグメントセダンであり、マツダ・6(日本名: アテンザ)やフォルクスワーゲン・パサートなどと同じ車格だ。しかし、室内空間ではその2台には到底敵わない。リアシートのレッグルームは充分あるのだが、リアには2人しか乗れないし、ルーフが傾斜しているので背の高い人は閉塞感を覚えるだろう。
それに、荷室も狭く、パサートというよりもむしろゴルフ的だ。底が浅いため、実用性ではハッチバックにも劣ってしまう。それに、ボディ下には水素タンクが2つ搭載されているため、スペアタイヤも載っていない。
チーフエンジニアの田中義和氏いわく、燃料電池車の普及に向けたインフラの整備は「長くて厳しい道」で、「10年から20年、あるいはそれ以上かかるかもしれない」そうだ。しかし、この車は未来への第一歩であり、きっと輝かしい未来が待っていることだろう。
New Toyota Mirai hydrogen fuel cell car review

トヨタは1997年に初代プリウスを発売し、環境対応車のパイオニアとなった。ハイブリッドは内燃機関のありかたを大きく変えた革新的なアイディアだった。
それから15年ちょっとのうちに、トヨタはヨーロッパでプリウスを100万台売り上げ、新型プリウスも登場目前にある。新型の成功もほとんど約束されていると言っていいかもしれない。
しかし、トヨタはその栄光に縋り続けることを良しとせず、さらなる未来への一歩を踏み出した。それが、100%ゼロ・エミッションのトヨタ MIRAIだ。
この車は、我々が以前に試乗したヒュンダイ・ix35 FCV(別名: ツーソンフューエルセル)と基本的に同じ燃料電池車だ。空気中の酸素とタンクに貯蔵された水素を混ぜ合わせることによりエネルギーを発生させ、前輪に繋がれたモーターを動かすというシステムだ。理論値では480kmの航続距離を実現しているそうだ。
MIRAIは長らくの研究と実験の果てに生まれており、トヨタ初の市販燃料電池車でもある。トヨタが2008年に生み出したFCHV-advコンセプトと比べると、車重が48%も軽くなり、パワーも26%向上している。
154PSという最高出力は不十分のようにも思えるのだが、電気自動車同様、この出力を即座に発揮することができる。つまり、信号加速では十分にパワフルだ。ただし、これはドライ路面の場合の話だ。
試乗したのは雨の降る10月のハンブルグで、MIRAIはトラクションを確保するにも、コーナーを曲がるにも悪戦苦闘した。ただし、運転がつまらないというわけではなく、ステアリングは元気だし、操作性もそれなりに良いので、自信を持ってコーナーを曲がることができる。それに、レザーシートの出来も良いし、足は柔軟なので、快適性も高い。
電気自動車でもそうなのだが、これだけ静かな車を作れば、本来エンジンに掻き消されていたはずの騒音をいかに潰すかが重要になってくる。トヨタは遮音性の高いアコースティックガラスを採用し、ボディフレーム内部には遮音材を配置したため、130km/hでも静粛性は非常に高い。
遮音材はボンネットなどにも配されており、ドアミラーは風切り音を最小限に抑えるように設計されている。高速域ではタイヤノイズが聞こえてくるが、雨が降っている状況でも声を上げて会話をする必要はなかった。
6万6,000ポンドという価格は非常に高くも思えるが、トヨタは補助金獲得に向けて働きかけており、1万5,000ポンド程度の補助は得られる見通しだ。また、点検、タイヤ、燃料すべて含んで毎月750ポンドのリースプランもある。
先進装備・安全装備はてんこ盛りで、タッチスクリーンナビ、シートヒーター、自動ブレーキ、死角警報はすべて標準装備だ。グレードは1種類しか設定されない。
エクステリアデザインは良いとは言えないものの、インテリアの品質には文句無しだ。レクサスバッジが付いていない車としてはトヨタの中で最も高級感がある。ダッシュボード、シート、ステアリングはいずれもレザーに包まれている。
MIRAIはDセグメントセダンであり、マツダ・6(日本名: アテンザ)やフォルクスワーゲン・パサートなどと同じ車格だ。しかし、室内空間ではその2台には到底敵わない。リアシートのレッグルームは充分あるのだが、リアには2人しか乗れないし、ルーフが傾斜しているので背の高い人は閉塞感を覚えるだろう。
それに、荷室も狭く、パサートというよりもむしろゴルフ的だ。底が浅いため、実用性ではハッチバックにも劣ってしまう。それに、ボディ下には水素タンクが2つ搭載されているため、スペアタイヤも載っていない。
チーフエンジニアの田中義和氏いわく、燃料電池車の普及に向けたインフラの整備は「長くて厳しい道」で、「10年から20年、あるいはそれ以上かかるかもしれない」そうだ。しかし、この車は未来への第一歩であり、きっと輝かしい未来が待っていることだろう。
New Toyota Mirai hydrogen fuel cell car review