今回は、英国の人気自動車番組「Top Gear」でもおなじみのリチャード・ハモンドが英国「Mirror」に寄稿したフィアット・500 アバルトの試乗レポートを日本語で紹介します。


Abarth 500

イタリア製のものには不思議な魅力がある。イタリア料理といえば、パンの上にトマトソースとチーズを乗せたものか、スパゲッティにトマトソースをかけて挽肉を混ぜたものくらいしかない。にもかかわらず、誰もがイタリア料理を愛している。

どんなダサいジャケットを着ていたとしても、イタリア製だと言っただけで誰もがそのデザインを褒める。イタリアのオペラは長ったらしいし騒々しいのだが、イタリア製というだけで素晴らしいと見なされ、皆に愛される。

車については特に顕著だ。昔のランチアを例に挙げてみよう。ランチアはまともにエンジンもかからないし、それどころかイギリスに届く頃には錆びて粉々になっている。

フェラーリも似たようなものだ。神経質で、高価で、乗っている(そして事故る)のは大半が変な髪型をしたサッカー選手だ。しかし、イタリア製というだけで、フェラーリは神の乗り物にも等しい。

なので、イタリア製の小型車がスポーツカーへと変身したら、小型車としての魅力、スポーツカーとしての魅力、そしてイタリアの魅力すべてを兼ね備えた非常に魅力的な車となるはずだ。

ご存知かと思うが、ベースとなっているのはフィアット・500という非常に堅実な小型車だ。低価格で、維持費も安く、それでいて人を振り向かせるだけの魅力があり、作りもよく、室内も広く、都市のライフスタイルに見事に合った車だ。

そして、500をベースとするアバルトには最高出力135PSを発揮する1.4Lのターボエンジンが搭載されている。

アバルトはフィアットの作る退屈な車をファインチューンしてスポーツモデルを開発してきた。その実力には定評がある。では、新しいアバルトはその評判に合った車なのだろうか。

この車の実力は高い。実際、我々は2009年のTop Gearのホットハッチオブザイヤーにこの車を選出している。

アバルトにはスポイラー、スカート、ストライプが付いており、イタリアらしい活力が感じられる。子供っぽさを感じることはなく、それでいて情熱的だ。

小さな車にパワフルなエンジンを積んているため、多少は暴れることもあるのだが、ハンドリング性能が高いのですぐに立ち直すことができる。

しかも、室内で過ごしてみて気付いたのだが、実用性も高く、コックピットも整然としているため、日常的に使うこともできる。完璧な車だ。

しかし、イメージの問題はある。フェラーリのバッジが付いていない、小さくて手頃なイタリア製スポーツカーを欲しがるのは一体誰なのだろうか。

おそらく、誰もが欲しがるはずだ。車好きの男性は間違いなく惹かれるだろうし、可愛らしくもセクシーな見た目なので、これに乗っていれば女性にもモテるだろう。逆に、女性がこの車に乗っていても、男性の目には魅力的に映るはずだ。この車は万人が愛する車だ。

このイタリアンスパイスがあれば、きっと人生がより楽しいものになることだろう。もちろん、この車は安くはない。しかし、この車は見掛け倒しの車ではない。この車には値段以上の恰好良さがある。まさしくイタリアらしい車だ。


Why the Fiat 500 Abarth will get your pulse racing