今回は、米国「Car and Driver」によるホンダ・アコードクーペの試乗レポートを日本語で紹介します。


Accord Coupe

現代の低価格2ドアクーペは、その多くが後輪駆動だ。シボレー・カマロ、フォード・マスタング、BRZ/FR-Sがその典型例だ。一方、前輪駆動のまともなクーペはアコードを例外にほとんど絶滅してしまっている。

しかし、アコードクーペはマイナーチェンジ後も生き残った。その点は称賛に値するだろう。日産はアルティマクーペの販売をやめてしまったし、トヨタも随分昔にカムリベースのソラーラを廃止した。もちろん、キア・フォルテクープやホンダ・シビッククーペ、あるいはサイオン・tCなどの前輪駆動クーペも存在する。しかし、これら3台はデザインも地味だし、大した魅力がない。一方、アコードにはちゃんとしたスポーティーさがある。

走行性能の面ではいくらか問題もある。ホイールベースは2,725mmで、車重の61%以上は前輪にかかる。それに、マイナーチェンジを経ても中身はほとんど変わっていない。今回試乗したのはV6エンジンを搭載する6速MTモデルだったのだが、282PSというスペックも以前と変わっていない。なお、0-100km/h加速は5.8秒を記録している。

interior

フォード・マスタングやシボレー・カマロとは違い、アコードクーペのパフォーマンスはさほど凄いわけではない。スペックを見て驚くような人はいないだろう。けれど、これは誰もが速く走らせることのできる車だ。フロントヘヴィーでありながらも、ステアリングが軽いおかげで運転しやすい。ステアリングからブレーキペダル、クラッチ、サスペンションに至るまで、どれもが一体化して動いているかのように感じられる。アンダーステアがあるので攻めまくるというわけにはいかないのだが、アンダーステアは突然現れるということもなく、十分対処可能なレベルにある。

甘美な音を発する3.5LのV6エンジンはパワフルにアコードを加速させる。トルクステアが出現するのはタイトコーナーの出口くらいだ。V6の6速ATモデルや2.4L 4気筒のCVTモデルも選択できるが、MTモデルこそ至高だろう。シフトストロークは短いし、ペダルの間隔も完璧だ(4気筒のMTモデルもあるのだが、V6に比べると出力が94PS低下してしまう)。

rear

マスタングやカマロと比べると、アコードが高価に思えるかもしれない。しかし、カマロのフルモデルチェンジによりその価格差は縮まっているし、アコードはその2台に比べれば装備内容も充実している。確かにアコードは後輪駆動車ではないかもしれないが、装備の充実した速い車を求める人にはぴったりだ。

アコードクーペは前輪駆動の2ドアクーペという定石に反した車だが、それでも魅力的な車であることに変わりはない。マイナーチェンジを経ても現行のホンダ車の中では最高とも言えるデザインは崩れていないし、リアシートには平均的身長の二足歩行生物が乗り込むことができるし、トランクは広い。魅力的なMTモデルを走らせていると、後輪駆動という要素が必須なわけではないと理解できる。


2016 Honda Accord Coupe V-6 Manual