イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、BMW 320d xDriveのレビューです。


320d xDrive

BBCのニュースキャスター曰く、環境への負荷を基準に車を選ぶ人が増えているそうだ。

当然、これはBBC社内に限って言えば当たっている。実際、多くの社員が折り畳み式の自転車を使い始めている。しかし、現実世界において排出ガスに本当に関心を抱いている人など存在しない。どんなに環境に悪かろうと、眼鏡に適った車であれば迷わず購入するはずだ。

車選びにおいてはコストパフォーマンスが重要だ。燃費性能も、快適性も、楽しさも、信頼性も重要だ。しかし、肛門から出てくるものなど誰も気にしない。それから、意外なことに、デザインを気にする人もあまりいないようだ。

これは奇妙な話だ。不細工な子供が欲しいと思うような人はいないし、見るに堪えないようなデザインの家具をわざわざ家に置くような人もいない。にもかかわらず、毎年のように醜い車が大量に売れている。

今以上に醜い車ばかりが溢れている時代は他にないのではないだろうか。今や、細いタイヤを履いた不格好な化け物が溢れている。不必要な飾りを付けたりもしている。シルクハットをかぶった人をリアシートに乗せるためだけに、ルーフラインがおかしくなったりしている。

シトロエン・カクタスを見て思う。一体これは何だ。どうしてサイドに気泡の入った飾りが付いているんだ。しかし、こんな車でもあちこちに溢れている。多くの人の考えは私とは違うようだ。レクサス・NXについても同じことが言える。どうしてレーザービームが大好きな4歳児にデザインを任せたのだろうか。

それに、ミニ カントリーマンや新型ジープ・チェロキーにも同じことが言える。チェロキーはかつてのポンティアック・アズテックと大口を開けたカエルの融合だ。

しかし、そんな流れに逆らっているメーカーもいる。キアがそうだし、BMWもそうだ。もちろん、BMWにもX3という酷い車はあるが、少なくともセダンやクーペのデザインは素晴らしく、慣れ以外でそのデザインを損なうものは存在しない。5シリーズは特に傑作だ。

今回試乗した3シリーズも負けず劣らず素晴らしいデザインだ。この車を見れば、アウディやメルセデスやレクサスを選ぶ人がどうして存在するのか不思議に思うはずだ。

ただ、その理由の1つは、冬になるとBMWが役立たずになってしまうことにある。実際、冬期に雪が少し積もっただけで道を塞いでいるのは、巨大な後輪をスピンさせているBMWだ。BMWのドライバーはうろたえ、まだ事故も起こしていないのに保険会社に連絡する準備をしている。

しかし、今回私が乗ったBMWではそんな心配はない。なぜなら、これは4WD車だからだ。このモデルは以前からヨーロッパ大陸では販売されていたのだが、BMWは4WDモデルの右ハンドル仕様を作る理由がないと考えていたようだ。きっと、BMWの人間はイギリスの天気は基本的に崩れることはないと思っていたのだろう。まったくもってその通りだ。

とはいえ、今年の冬はかなり厳しいものになりそうだ。BBCはフォルクスワーゲンのせいにすることだろう。しかし、新型320d xDriveがあれば大丈夫だ。

ただし、いくつか問題点がある。まず、価格だ。4WD化にあたってたくさんの部品が追加されているのだから、2WDモデルより高いのは当然のことだ。しかし、1,500ポンドという上乗せ金額は経済学者ですら高いと表現することだろう。

それだけではない。センターコンソールとホイールアーチの間の空間が非常にタイトで、アクセルを踏もうとするたびにブレーキに触れて減速してしまう。

それに、燃費も悪い。4WDモデルは2WD車よりも燃費が2.3km/L悪化している。それに、加速性能も落ちている。それから、多分読んではいないと思うが、BBCの人間が読んでいることも想定して書いておこう。CO2排出量も10g/km増えている。

要するに、この車があれば、冬将軍が到来した2月の朝も車で家を出ることはできる。ただし、隣人が乗っている2WDの3シリーズが道を塞いでいるため、きっとどこに行くこともできないだろう。

結局、xDriveを選ぶかどうかの選択は個々に委ねるしかない。上述したような代償を払うだけの価値を4WDに見出すかどうかだけが決め手だ。

ただ、どちらにしても素晴らしい車であることに変わりはない。ホイールアーチが出っ張っていることを除けば、基本的なドライビングポジションは適正だし、ステアリングの材質や太さは完璧だ。

BMWのiDriveシステムの黎明期には理解不能なサブメニューが乱雑に並んでいたのだが、今のBMWは非常に常識的で論理的になっている。リアシートの広さも、トランクの広さも、操作系も、乗り心地も、どれもが理想的だ。

ただ、当然ながら気に入らない点もある。電動ステアリングの動きは50ペンス硬貨的だ。これで伝わるだろうか。要するに、かつてBMWが"究極のドライビングマシン"というキャッチコピーを使っていた頃のような滑らかさがない。それに、パーキングセンサーはあまりに悲観的すぎる。後ろの障害物までまだ何メートルもあるのに、ヒステリックに叫ぶ。
事故るぞ! 事故るぞ!!!!

それに、ディーゼルエンジンも問題だ。2年前、エコ狂信者は軽油こそ理想の燃料だと嘯いていた。ところが突然掌を返し、軽油など使ってはいけないと言い始めた。なぜなら、地球温暖化が地球を冷やして…。いや、違ったかな…。

気象庁という巨大組織でさえ明日の天気も予想できないのに、1,000年後の地球の気候を予測できると豪語するような頭のおかしい人間の言うことなど理解できるはずがない。なので、そんな人間のことなど無視しよう。このディーゼルエンジンは優秀だ。音もそれなりに良いし、トルクも莫大だし、高速道路では驚くほど静かだ。

それに、ガソリン車よりも燃費が良い。上述したように、燃費は窒素酸化物の排出量よりもよっぽど重要だ。


The Clarkson review: BMW 320d xDrive SE