今回は、インド「Top Gear」によるルノー・クウィッドの試乗レポートを日本語で紹介します。


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小型車は売れる。マルチスズキだけで、毎月3万台の小型車が売れている。インドはAセグメントの世界最大の市場だ。そんな中で、スズキ・アルトは長らくトップに立ち続けている。10年以上の間、その独走は続いている。

そして、ルノー・クウィッドこそ、あるいはアルトにとっての最大の悪夢かもしれない。

クウィッドに乗り込んで最初に感じるのは、そのインテリアがエントリーレベルのコンパクトカーとは思えないということだ。上級感がある。プラスティックの質感も良い。上質とまでは言えないが、価格を考えればかなり良い。他の同クラスのモデルにはない装備(マルチメディアシステム付ナビ、Bluetooth, USB連携機構、フロントパワーウインドウ、トリップコンピューター、ギアインジケーター)も備わっている。

室内空間もクラスを超えている。フロントシートはかなり快適だし、リアシートの足元スペースも十分にある。ただ、リアシートは座面のサポート性に欠けている。荷室容量は300Lで、これはクラス最大だ。1クラス上のヒュンダイ・i20にも勝る。収納スペースも豊富で、グローブボックスは2つあるし、ドアポケットも大きく、センターコンソールにも物を置くことができる。

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搭載されるのは、クウィッドのために専用に新設計された799ccの3気筒エンジンだ。最高出力は54PS、最大トルクは7.3kgf·mを発揮する。スペック上はパワーが足りないようにも思えるが、実際には十分な実力がある。加速はリニアだし、5速MTはショートレシオなため、街中では扱いやすい。シフトストロークも短く、変速も非常にスムーズだ。

乗り心地も良い。ルノーはインドの道路状況の悪さをしっかりと考慮し、それに合うようなセッティングとなっている。相当に酷い道でもない限り、道路の凹凸はしっかりといなしてくれる。リアサスペンションは特に柔らかい。ただし、サスペンションが柔らかいことや、180mmという地上高の高さの代償として、かなりのロールが生まれている。

ステアリングは非常に軽い。おかげで狭い街中や駐車場での操作は楽なのだが、高速走行時には常にステアリング操作に気を使わなければならない。そのため、高速走行時の疲労感はそれなりにあるのだが、それでもアルトに比べると安定感は高い。

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クウィッドは見た目も良い。SUV風のデザインはアルトやヒュンダイ・イオンよりも格好良い。エンジンフードのプレスラインは筋肉質な印象を与えているし、ボディサイドやリアの曲面的なデザインは存在感を高めている。

価格設定もなかなかだ。ルックスはSUV風で装備も豊富なのだが、価格は最上級グレードでも39万ルピーだ。ベースグレードを選べば価格はわずか29万ルピーで、コストパフォーマンスは非常に高い。

クウィッドはアルトにとって史上最大の脅威となることだろう。クウィッドの実力は間違いなく高い。ABSが装備されていない点や、ブレーキの制動力に不足が感じられる点は残念だが、全体的に見れば優秀だ。バーゲンプライスと言えるだろう。


Review: Renault Kwid