今回は、米国「AUTOWEEK」によるシボレーのプラグインハイブリッドカー、新型ヴォルトの試乗レポートを日本語で紹介します。

※Voltは一般的に「ボルト」と表記されていますが、シボレー・ヴォルト (Chevrolet Volt) とシボレー・ボルト (Chevrolet Bolt) を区別するため、当サイトでは「ヴォルト」と表記させていただきます。


Volt

偶然かどうかはともかく、次期型プリウスが登場する直前である今、ハイブリッドシステムやトランスミッション、インテリア、エクステリアまで含めてほとんど全てが刷新された新型シボレー・ヴォルトが発売された。

バッテリー容量は初代の初期型が16.5kWhで、後に17.1kWhまで向上しているが、新型ではさらに向上して18.4kWhになっている。最高出力151PSを発揮する電動ドライブユニットはプラネタリーギアを用いる2つのモーターで構成され、必要に応じてパワーを発揮する。電動ドライブユニットだけで45kgの軽量化を果たしている。

4気筒直噴ガソリンエンジンは排気量こそ1.4Lから1.5Lに増加したものの、サイズや重量は小さくなっている。直噴システムを採用する圧縮比12.5:1のこのエンジンは、レギュラー燃料指定で102PSを発揮する。

エクステリアも刷新されており、チーフエンジニアのアンドリュー・ファラー氏いわく、より滑らかでスムーズなデザインになっているといい、「金属を砂漠の砂に見立てて、そこに風が吹き付ければこんな曲線を生み出す」そうだ。もっとも、見た目の変化はさほど劇的ではないが、それでも悪くはない。

interior

インテリアは、IKEAが設計した男子トイレのようなデザインから、一般的な車らしいデザインに変わっている。触覚フィードバックセンターコンソールなどという怪しげな装備はなくなり、より一般的なインターフェイスに置き換わっている。それに、リアシートには3人が座ることができる。

EPA基準のモーター単独航続距離は85kmと驚異的で、旧型よりも40%も伸びている。しかしこのような車では、航続距離が本当に信頼に値するものなのか気になることだろう。

試乗車に乗り込むと、航続可能距離は84kmと表示されていた。ほぼ平坦な道路を慎重に運転すると(そうは言っても慎重過ぎる運転はしていないが)、ガソリンエンジンがかかるまでに87km走行することができた。再び試してみたところ、今度はバッテリー1つで99km走ることができたのだが、このとき最初の15kmほどは下り坂だったので、結局のところ82km程度といったところではないだろうか。

ステアリングには回生ブレーキの効率を高めるスイッチも付いており、これを使えばさらにエネルギーを節約することができる。それを考えれば、EPA基準の85kmという数字もおおむね正しそうだ。GMによると、110km程度までならバッテリー単独で走行可能だそうだが、それが本当かどうかは分からない。

rear

エコドライブにこだわらなければ加速性能も良い。シボレーによると、0-100km/h加速は8.4秒だそうで、これはプリウスよりも2秒速い。それに、プリウスよりも車との一体感は強い。スポーティーとまでは言えないものの、プリウスに比べれば運転していて楽しい。ドライブフィールではフォード・フュージョンプラグインハイブリッドにも似ているが、ハンドリングではヴォルトの方が勝っているかもしれない。

静粛性は旧型よりも明らかに向上しているし、居住性も格段に改善している。ただし、ライトグレーのインテリアを選ぶと、日光がドライバーの方に反射してしまう点は気を付けて欲しい。暗めのインテリアを選んだほうが賢明だろう。

この車はプリウスよりも確実に運転していて楽しいし、デザインは巷に溢れる3ボックスの大衆セダンよりもスタイリッシュだ。しかし、2010年の初代ヴォルトの登場以来、ヴォルトの販売台数は累計でわずか7万7,000台で、一方のプリウスは2015年7月だけで10万台を売り上げている。価格は3万3,995ドルからで、カリフォルニアのような優遇の手厚い州では実質2万4,995ドルで購入することができる。それに、この車はプリウスとは違って"アメ車"だ。


2016 Chevrolet Volt first drive: More range, more style