イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2013年に書かれた旧型スバル・アウトバック ディーゼルのレビューです。


Outback

イギリスで土曜の午前に運転しているドライバーは、日曜の午後に運転しているドライバーよりも酷い。今や、土曜の午前のドライバーは下手すぎて、それに比べれば日曜の午後のドライバーがキミ・ライコネンのように見えてしまう。

このようなドライバーは、ただ郊外に行って安物や特価品を買うだけのために車を持っている。彼らは小型車でスーパーマーケットに行くことを趣味にしているが、何よりも愛しているのはホームセンターだ。そこで彼らはハッチバックの荷室いっぱいにDIY用品を購入する。

"サタデードライバー"は平日には運転しないため、運転が下手だ。にもかかわらず、法令に従うことだけは得意だ。制限速度を厳密に守り、燃費のために穏やかに加速をし、止まるたびにパーキングブレーキをかける。それに当然車はいつも綺麗だ。彼らはDIYと同様に、洗車をすることも好きだ。

彼らはRadio 2や移民を嫌い、Top Gearを嫌悪している。車に楽しさを求めることが理解できない。車は必要経費の1つに過ぎない。土曜日にホームセンターに行く必要がなくなれば、車なんて持つことはなくなるだろう。

走行性能や排気音やデザインは馬鹿と目立ちたがり屋のためのものだ。車は園芸店の駐車場が空くまで座っているための場所でしかない。当然、その時にはエンジンをオフにしておく。パーキングブレーキはオンだ。

当然、こんな人達が乗るような車は一般に最悪だ。今時ローバー・200やオースチン・メトロを見かけるのは土曜の午前中くらいだろう。彼らはこう言うことだろう。「一体何がいけないんだ。今の車は外人が作っているし、自分で修理もできないじゃないか。」

しかし、こんなポンコツもいずれは壊れ、新しい車を買わなければならない時が来ることだろう。新車の選択基準は5つある。価格。『Which?』誌で高く評価されているか。価格。価格。冷蔵庫が載せられる荷室があるか。

人気なのがトヨタ・ヤリスヴァーソ(日本名: ファンカーゴ)やスズキ・ワゴンR、フィアット・ドブロ、それにシトロエンの何かだ。『Which?』はそんな車が大好きだ。『Which?』は安全と健康の指標だ。

それではスバル・アウトバックの話に移ろう。もし土曜の午前の男がこの記事を読んでいたとしたら(ただし、彼らにとって私は悪魔なので、読んでいるはずはない)、この驚異的な車について言及した途端に気絶してしまうことだろう。というのも、この車は巨大な4WDステーションワゴンでありながら、19km/Lという低燃費を実現しており、価格もわずか2万9,995ポンドからと安いからだ。

それだけではない。この車にはガソリンエンジンなんて用意されていないし、ナビなどという軟弱なものは付いていないし(わざわざ米軍にホームセンターの場所など教えてもらわなくても結構だ!)、ボディカラーは、メタリックシルバー、ダークグレー、ディープブルー、サテンホワイトの4色しかない。

それに、荷室も広大だ。確かにシトロエン・ベルランゴ マルチスペースほどには広くはないし、ルーフキャリアも付いてはいないが、装備内容が少ないため、収納スペースは豊富にあり、ホームセンターに行くために必要な物資を収納することができる。飴、ペットボトル、財布、それと予備の飴。

ドアポケットが広いので地図を入れることもできるし、グローブボックスが広いので道路交通法の条文のコピーを入れておくこともできる。これはサタデードライバーの愛読書だ。

この車はサタデードライバーにぴったりの車だ。作りもよく、経済的で、無駄なものは付いておらず、荷室も広大だ。それに、見た目は悪い。

しかし、土曜日以外にも車を乗るような人からしてみると、この車にはいくつか問題がある。1つ目がトランスミッションだ。この車には普通のオートマチックの代わりにスバルのリニアトロニックというものが載っている。要するにこれはCVTであり、まともに動くはずがない。パドルシフトはあるがそれでは誤魔化せない。

普通の車は、速度が上がるに連れて回転数も上がる。しかし、CVTでは回転数が上がってから速度が上がっていく。結果、発進時にはエンジンが唸る。『ボナンザ』がボンネットの下で上映されているかのようだ。

それに、CVTはディーゼルエンジンの粗さを目立たせる。本来なら、粗いエンジンのはずはない。これはボクサーエンジンだ。4気筒が対称的に配置されたこのエンジンの動きは、理論的には滑らかになるはずだ。

乗り心地も良くはない。ガタつくというほどではないが、それでも硬い。それに、試乗車の3万1,495ポンドという価格を考えると、室内は少しスパルタン過ぎるように感じられた。それに装備内容も異常だった。どうしてクルーズコントロールなど付いているのだろうか。イギリスでそんなものが必要なのだろうか。それに、ステアリングの左下に付いている3つのボタンの意味も分からない。一番上のボタンは走行距離を教えてくれる。中央のボタンは表示されている走行距離を消してくれる。一番下のボタンを押すと再び走行距離を教えてくれる。無意味だ。

かつてのスバル・レガシィアウトバックはTop Gearの司会者3人が揃って気に入った3台の車のうちの1台だった。まともで良い車だった。

確かに新型も様々な点で優れている。地上高は高いし、4WDだし、燃費も良いので、農場で使うにはぴったりだろう。それに、これよりも安い車でこの車と同等のはたらきをしてくれるような車はない。確かに走りはつまらないし、見た目は悪いし、必要のない装備しか付いていない。しかしこの車は賢明だ。それだけだ。この車は楽しさのために作られているわけではない。この車は悪路でも洗濯機を運搬できるように作られている。


The Clarkson review: Subaru Outback (2013)