今回は、米国「Car and Driver」による新型BMW X1 xDrive28i(欧州名: xDrive25i)の試乗レポートを日本語で紹介します。


X1

BMWの熱狂的なファンにとって、今は辛い時期かもしれない。今のBMWはダウンサイジングエンジンや"i"のサブブランドに力を入れており、ついには前輪駆動車に手を出した。北米に投入される最初のFFプラットフォーム採用車は新型X1で、これは後輪駆動ベースであった旧型X1に取って代わるモデルだ。新型X1はミニやBMW 2シリーズアクティブツアラーおよびグランツアラーとプラットフォームを共有する。北米仕様のX1は全車4WDだが、欧州市場向けのFF車もいずれ北米に投入されるかもしれない。一方で、ピープルムーバーの2シリーズが北米へ投入される予定はないと公式に発表されている。

新型X1はアメリカのBMWにとっても重要なモデルだ。新型X1はFFベースとなっただけでなく、旧型にはあった直列6気筒エンジン搭載車も廃止されている。また、新型はルーフラインが高くなり、結果的に重心も高くなっている。ここからは、新型はあまり期待できなさそうに思える。

interior

ただ、公平を期して見れば、先代モデルでは問題であった室内空間は明らかに拡大している。フロントシートを後ろまで下げても後部座席に快適に座ることができる。また、フロントシートの着座位置は従来よりも高くなっている。これはサーキットではデメリットになるだろうが、こういった車の主戦場である日常での通勤ではむしろ喜ばしいことだろう。

実際、ダッシュボードはBMWの上級モデルとも共通性があり、操作系にも手が届きやすく、室内は居心地が良い。意外なことに、AT車の変速機はコンベンショナルなシフトレバーで、これはBMWのFR車の電子シフトよりも直感的で使いやすい。それに、旧型よりも静粛性や乗り心地は向上しており、2.0Lターボエンジンの音も気持ちいい。

それに、エンジンの性能も十分だ。231PSのエンジンは8速ATと組み合わせられ、0-100km/h加速はBMWの発表によると6秒ちょっとで、スロットルレスポンスも良い。このB48型エンジンは4気筒エンジンとしてはかなりスムーズだし、新型のトランスミッションとの相性も良かった。もちろん、新型X1でもドライブモードを選択することはできるのだが、新型X1にはSPORT+モードが存在しない。

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シャシはこのパワーを路面に伝えるという点では何の問題もないし、スタビリティコントロールシステムの介入は2シリーズアクティブツアラーに比べればよっぽど少ない。それに、重心の高さやFFベースという2つの課題にもうまく対処できている。しかし、ハンドリング性能ではアウディ・Q3やフォルクスワーゲン・ティグアンには劣ってしまうし、車との一体感も足りないように感じられた。特にコーナーでは旧型モデルにあった軽快さが失われており、その点が残念だった。

しかし一方で、オフロード性能は非常に高い。このようなタイプの車では登ろうとなど思わないような傾斜すら登ってしまうし、泥道や厳しい雪道を走ろうと大きな問題は生じないだろう。

この車は万能選手ではないものの、魅力的な車であることは間違いないだろう。室内空間や快適性を求める人にとっては、新型X1はモデルチェンジにより前進したと言えるだろう。


2016 BMW X1