イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。

今回紹介するのは、2010年に書かれたフォルクスワーゲン・ポロGTIのレビューです。


GTI

もし、自動車が今ある姿で現代に誕生したとしたら、地球上のどの政府も普通の人間に運転させることを許可することはないだろう。特にイギリス政府など間違いない。イギリス政府は道路が濡れていると警告しなければ人々がまともに歩けるとさえ思っていない。フィッシュ・アンド・チップスにどれくらいの塩をかけるかも、子供が悪いことをした時に尻を叩くべきかどうかも、政府なしではまともに判断できないと考えている。それに、銃やアルコール、ガソリンの扱いについても、国民に任せてはくれない。

ましてや、車を運転する自由など与えられるはずもない。運輸大臣はこう言うはずだ。「10代後半の若者やら高齢者やらアフリカからの移民に、ほんの数mの幅しかない道路を100km/hで運転させるだなんて、本気で言っているのか?」 しかし実際は、福祉国家が確立されるよりもはるか前に自動車が完成していた。それゆえ、運転を禁止することは不可能だった。

その結果、政府は国民が車を運転したくないと思うように画策した。政府は交通監視員を構成させ、戦隊物のような服を着せてどこにも駐車できないようにした。車と、それが動くために必要な液体に対し、懲罰的な額の税金を課した。道路網の半分をバスレーンと自転車レーンに変え、残された道路にもオービスやら移動式のネズミ捕りを点在させ、5km/h以上で走らせないようにした。環境活動家をけしかけ、自転車乗りには合法的に車の屋根を叩くことを許し、右左折時には罪悪感を煽った。しかし、そのどれも意味を成すことはなかった。

ロンドン東部には自転車やバスが車の代替品にぴったりだと考えるような狂人が少数いるものの、大抵のまともな人間は自動車の素晴らしさや便利さを理解し、あらゆるプレッシャーにも抗った。結果、政府はさらなる一手に出た。現在政府は運転免許制度の改定を画策しており、誰も受からないようにしようとしている。現在、試験官は交差点ごとにどちらに進むべきかを受験者に指示している。それゆえ、方向指示器を出したり、周囲の安全を確認したり、オナニストのごとくステアリングを回転させたりすることだけに集中することができる。

しかし、新しい試験では、試験官が目的地だけを伝えて到着するまで試験官は口を閉ざすことになる。それゆえ、方向指示器を出したり、周囲の安全を確認したり、オナニストのごとくステアリングを回転させたりしながら、道路案内看板をいちいち確認しなければいけない。しかも、ノーサンプトンをはじめとした町には、そもそも道路案内標識など存在しない。

神経質になりながら、様々なことを考えなければならない。旗揚げゲームをしながら頭の中では詩を暗唱するようなものだ。それも、処刑人の目の前で。この新試験の草案は労働党政権下に生まれた。労働党は自動車を根絶させたいとしか思えない。

以前に行われた調査によると、運転免許試験の合格率は現在の42%からわずか18%にまで落ちると予想されている。5回に1回すら受からない。紛れもなく政府の勝利だ。理論的にだけでなく、経済的にも。現在、運転免許試験を2回受けるためには124ポンド支払う必要がある。5回受ければ310ポンドとなる。合格率がこれほど低くなれば、車が減り、欧州連合のCO2目標も簡単に達成されるだろうし、金のかかる道路インフラの需要も減るだろうし、公共交通機関の利用も増えることだろう。

事故も減るだろうし、そうすれば誰に責があるのか調べるために金や労力を費やすことも減ることだろう。しかし、私はそれでも運転免許試験の難化には賛成している。私は別に人々に自由があることが許せない狂信的スターリン主義者ではない。しかし、娘が免許を取れる年齢に近づいていくにつれ、狂人や老人の溢れる道路を走らせることが怖くなってきた。それゆえ、彼女には免許に落ち続けてほしいと考えている。それに、そうすれば少なくとも娘に車を買ってやる必要もなくなる。

しかし残念ながら、娘は試験をパスすることだろう。何より、大抵の試験官は受験者にまた戻ってきて欲しいとは思っていない。ところで先週、娘はレーシングスタートのやり方を聞いてきた。そしてそれをマスターしたら、ハンドブレーキターンのやり方を聞いてきた。運転免許試験でハンドブレーキターンが必要なのだろうか。娘だけの話ならいいのだが。

それはともかく。フォルクスワーゲン・ポロGTIの話に移ろう。この車にはパドルシフトが付いており、ここで興味深い疑問が生じる。技術的にこの車はマニュアル車なのだが、クラッチは付いていない。しかし、政府はこれをAT車だと主張している。つまり、この車で試験を受ければ本当のマニュアル車を運転する許可を得ることはできない。それはともかく、車に乗ってみよう。一見すると素晴らしい車だ。フォルクスワーゲンの質感、豊富な装備、想像以上に広い室内。

それに、巨大になった現行ゴルフよりもボディサイズやパワーで初代ゴルフGTIに近い。シートの素材もゴルフGTIと共通で、これも気に入った。エンジンは1.4Lだが、それでがっかりすることはない。これにはスーパーチャージャーが付いており、低回転域でトルクを豊富に生み出すし、ターボチャージャーも付いており、高回転域でもパワフルだ。0-100km/h加速は7秒だし、最高速度は229km/hだ。

当然、前輪駆動車にこれだけのパワーがあれば問題が生じるのではないかと疑問視する声もあるだろう。179PSを発揮する車で前輪を駆動すれば操作性が危うくなり、木にぶつかってしまうドライバーも出ることだろう。これに対処するため、ポロGTIには電子式のリミテットスリップデフが装着されている。7速DSGもそうだが、この車には多くの先進技術が備わっている。なので、1万8,000ポンド以上という値段の高さも頷ける。

他にも問題がある。スピードを出して走らせるとわがままでとげとげしくなる。ただ、それはそれで良い。全盛期のホットハッチの多くもわがままだった。しかし、ポロの運転席に座っていると、車との一体感が掴みづらい。ドライバーはまるで資格を持たずにライオンを調教しているかのようだ。それゆえ、あまりスピードを出したくはならないのだが、そうするとこの車の魅力がスポイルされてしまう。それに、トランスミッションもあまり気に入らなかった。あらゆるパドルシフトの中で、フォルクスワーゲンのデュアルクラッチトランスミッションこそが断然最高であるのは確かなのだが、ポロのDSGには自分の意志があるかのようで、必要に応じてではなく気分に応じて変速しているように感じられた。

この車は決して出来の悪い車ではない。車高は約15mm下げられているものの、快適性は非常に高い。しかし値段も高い。それに、この車からは陰気で事務的な空気が感じられ、それはこのようなポケットロケットにはふさわしくない。シトロエン・DS3は全く速くないし、作りも良くはない。しかし、ポロGTIよりも所有する歓びは大きく、価格も約3,000ポンド安い。私ならこちらを選ぶ。実際、この車は理想的なファーストカーだ。


The Clarkson review: VW Polo GTI (2010)