今回は、米国「Car and Driver」によるサイオン・iM(日本名: オーリス)の試乗レポートを日本語で紹介します。


iM

太平洋湾岸の高速道路で未発売の車に試乗すれば注目されると思うことだろう。しかし違う。今回我々は自動車文化の中心とも言えるロサンゼルスでおそらくはまだ誰も公道で見たことがないはずの車に乗ったのだが、誰の目を引きつけることもなかった。

しかしそれにも驚かなかった。今回試乗したのは、米国外ではトヨタ・オーリスとして販売されるモデルのリバッジ版であるサイオン・iMであり、サイオンのセールスマンでもない限り誰も知らないような車だ。もしフォルクスワーゲン・ゴルフの新型のプロトタイプにでも乗ろうものなら、10kmごとにあらゆるGTIのドライバーが追いかけてくることだろう。もし次期型のホンダ・シビックに乗ろうものなら、まるで1964年のビートルズのように周りを囲まれてしまうことだろう。しかし、現時点において、サイオンには熱心なファンなど存在しない。

まずはデザインについて説明しよう。サイオンは台形のオーリスに17インチホイールや光輝マフラーを追加した。それにより、派手すぎることなく迫力を増している。iMはまるでカローラと初代マツダ・3(日本名: アクセラ)の中間のようであり、現行マツダ・3ほど情緒的でもないが、フォルクスワーゲン・ゴルフほどに落ち着いているわけでもない。

interior

真っ黒なインテリアデザインは平凡というレベルを脱しきれてはいないものの、それでも魅力的ではある。他のサイオン車同様、iMも単独グレード設定で(エクステリアカラーとトランスミッション以外は選択できない)、装備内容はかなり充実している。装備類は合理的に配列されており、ソフトな素材がふんだんに用いられていて、シートやドア、それに天井までにも質感の高いファブリックが採用されている。ピアノブラックを使いすぎている感は否めないものの、クラスを超えた質感があり、安っぽさは感じられない。しかし、ライバル車に設定されるようなサンルーフやレザーシートなどは設定されておらず、この点はもったいないと感じた。

ライバル車にはiMよりもパフォーマンスの高い車が多い。オーリスの中では最もハイスペックな139PS/17.4kgf·mの1.8L 4気筒エンジンが搭載されているが、157PSのマツダ・3や162PSのフォード・フォーカス、172PSのフォルクスワーゲン・ゴルフ、175PSのキア・フォルテには及ばない。それに、6速MT車のシティ/ハイウェイ燃費は11.5/15.3km/L(CVT車は11.9/15.7km/L)と、パワーが低いにもかかわらず平凡だ。公式な加速性能についての数字は明らかになっていないものの、マリブの山道で試乗した際にはやたら踏み込まなければならず、エンジン音から気持ちよさを感じ取ることもなかった。この点でもこの車は平凡だ。

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CVTとMTならばMTを推したい。しかし、だからといってMTに操る楽しさがあるわけではない。一方のCVTの正式名称はCVTi-Sといい、スポーツモードにすれば回転数が高くなるだけでなく7速の仮想ギアを変速していき、さらにヨーセンサーも搭載されており、コーナーではあらかじめエンジン回転数を上げてくれる。

コーナリングはおそらくはiMの最も優れた点だろう。ステアリングフィールは大したことはないものの、正確にフロントタイヤを操舵してくれる。今回の試乗車にはTRD車高調スプリングにTRDスタビライザー、それにTRDエアフィルターが装着されており、結果、ボディーの動きは抑えられ、応答性も高めることで、ストラットフロントサスペンション/ダブルウィッシュボーンリアサスペンションの性能を底上げしていた。それゆえ、このオプションは是非付けるべきだろう。

おそらく、この車の最大の利点はコストパフォーマンスの高さだろう。価格は、MT車が1万9,255ドル、CVT車が1万9,995ドルで、今秋発売予定だ。MTモデルに約900ドルのナビや今回の試乗車に装備されていたTRDキットを加えても、価格は2万3,000ドルを切る程度になると想定されており、これでもゴルフのエントリーグレードとほとんど同じ値段だ。しかし、サイオンが生き残るためには、願わくばもう少し見た目が良くて運転の楽しい車であって欲しかった。少なくとも、現状のままではiMという車に先はないだろう。


2016 Scion iM - First Drive Review