今回は、米国レガシー社がレストアした1940年代登場のクラシックピックアップトラック、ダッジ・パワーワゴンの米「PickupTrucks.com」による試乗レポートを日本語で紹介します。


PowerWagon

現在、クラシックピックアップトラックを愛しながらも、乗り心地を犠牲にしたくはないという人々をターゲットにしている中小企業が増えてきている。アイコン・D200やスリフトマスターをご存知だろうか。

こういった「レストモッド」に新規参入したのがアイダホ州ドリッグスに拠点を置くレガシー・クラシック・トラックスという小さな会社だ。この会社は、ダッジ・パワーワゴンを古来のトラックの個性を失うことなくレストアしている。

このレガシー・パワーワゴンは、かつてのパワーワゴンの見た目や堅牢さはそのままに、その土台は近代化されている。

2007年にレガシーを創業したウィンスロー・ベントはオリジナルモデルのシャシやボディ、フレームを集め、それを元にレストアモデルは製造されている。パワーワゴンの車重は装備内容によっては3,000kg以上にもなる。強化サスペンションや冷却・ドライブラインコンポーネンツなどは標準で備わっているものの、エンジンは複数の選択肢があるし、各種先進装備やオフロード走行向け装備、それに除雪装置までオプションリストに含まれている。

レガシーの商法はかなり巧いように思える。

「誰もがこのようなカスタムビルドのトラックを欲しがるというわけではありませんが、欲しいという人は喜んで買ってくれます。」そうベント氏は語った。

レガシー・パワーワゴンを購入する顧客は、マーケティングの目的のために印象的なトラックを求める企業と、異様でユニークな商品を求める個人とに分かれている。

面白いことに、ベント氏によると、顧客の半数近くはレストアされていないパワーワゴンを自分から持ち込んでくるそうだ。錆びついたその車には様々な思い入れがあるそうだ。

ベント氏はこうも話している。「多くの場合、我々が扱うのは家宝であったり家族の歴史であったりします。それゆえ、丁寧に扱わなければならず、レストアに時間がかかってしまうんです。」

レガシーがレストアする個体の多くは何十年も忘れ去られたような車であり、場合によっては野ざらしになっていたものもある。しかし、レストアされたトラックは完全に調整されており、作りもしっかりしている。

interior

今回はエクステンドキャブの試乗を行ったのだが、これは思わず笑顔になってしまうような車だった。誇張抜きでこの車は印象的だった。今回試乗したレッドのパワーワゴンには600馬力近くを発揮するGM製の6.2L LSA スーパーチャージャー付きV8エンジンが搭載されており、強化型の4速ATが組み合わせられていた。スロットルレスポンスは強力かつリニアで、遅れを感じることもなく、エンジン音は迫力に満ちていたものの不快に感じることはなかった。実際、このエンジン音こそ我々を笑顔にさせた最大の要因だ。

試乗車にはオプションの40インチ トーヨー OPEN COUNTRYタイヤが装着されており、これはトラックのボディサイズにぴったりで、またトレッドパターンは非常にアグレッシブながら高速走行時にやかましいパターンノイズを発することもなかった。確かに巨大で重いタイヤであるのは確かなのだが、スムーズで車とうまく調和しているように感じられた。レガシー・パワーワゴンには全車にDYNATRAC製の強化アクスル(フロントにはDana 60が、リアにはDana 80が装着される)や変速比4.56:1のギアが装着されるが、よりオフロード走行に適したギアに変更することもできる。

今回の試乗で、唯一気になったのは、たくさん回さなければならないステアリングであり、慣れるためには時間がかかった。これには恐らく巨大なタイヤやエンジンのトルクが関係しているのだろう。とはいえ、街中を走っても高速を走っても、この車は非常に落ちついていた。ただし、走っていれば注目を集めることは覚悟しなければならないだろう。

今回はローレンジでオフロード走行する機会もあったのだが、巨大なタイヤや超ローギアなセッティングのためにピックアップトラックというよりはむしろ戦車でも運転しているような気分だった。この車には軍のDNAが多分に含まれている。ローレンジで走行していると、まるで周辺の環境を制圧しながら走っているかのようだ。

レガシーは現在年間で約12台のトラックを製造しているが、人気を博せば生産台数も増える見込みだそうだ。実際、人気になるのも頷ける。しかし、唯一の問題は価格だ。レギュラーキャブ(荷台長2.7m)は18万5,000ドルから、エクステンドキャブ(荷室長2.1m)は22万5,000ドルから、4ドアクルーキャブ(荷室長1.5m)は25万ドルからとなる。また、SUVのダッジ・キャリオールのレストア車も用意されており、価格は23万5,000ドルからとなる。

この価格が高過ぎると感じるなら、待つのも一手かも知れない。ベント氏によると、1950年代のシボレー・ナプコをベースとしたより安価な新型車両も計画されているという。また、それ以外にも様々なプロジェクトが存在するそうだ。

レガシーのような企業が新たなビジネスを始めることで、アメリカの経済はゆっくりでも成長していくことだろう。


Legacy Power Wagon: First Drive