今回は、英国の人気自動車番組「Top Gear」でもおなじみのリチャード・ハモンドが英国「Mirror」に寄稿したメルセデスAMG C63/C63Sの試乗レポートを日本語で紹介します。


C63

メルセデスAMGには新型C63のターボの問題を解消するという課題があった。このエンジンは4.0L ツインターボV8であり、これはAMG GTにも搭載されているものだが、GTがドライサンプ方式を採用している一方で、C63はコンベンショナルなウェットサンプ方式を採用している。

旧型C63に搭載されていた6.2L 自然吸気V8エンジンは失われた。そしてこれこそが問題だ。AMGは当然以下のことを理解していたはずだ。
    a) かつての大排気量自然吸気エンジンの音はまるでアメリカのマッスルカーの如きであり、別の表現をすれば素晴らしかった
    b) もし新エンジンの音が屁のような音であれば、エンジンに代わって客が騒ぐことになるか、あるいは代わりにアウディ・RS4を買うことになる
これがターボの問題点だ。ターボチャージャーはいわばトランペットに突っ込んだ靴下のようなものであり、これにより排気ガスの流れが妨げられて排気音に影響する。

AMGはこれに対し、エグゾーストシステムに電子制御式のフラップを取り付ける(最後部のサイレサー部分に2つ、エンジン後方にある左右のデュアルエグゾーストを接続するバランスパイプ部分に1つ)という解決策を生み出した。バランスパイプ部のフラップがV8のエンジン音を片バンクずつ交互に反響させることで、正統なV8の轟きを生み出す。説明すると難しいかもしれないが、要するに期待通りの音が生まれたということだ。

セダンとステーションワゴンというボディタイプの選択肢の他に、C63にはもう1つ二択の選択肢が存在する。476PSのC63と、ハイチューン版である510PSのC63Sだ。どちらもエンジンは共通で、チューニングが異なっている。

もちろん、それ以外にもスペック上の違いは存在する。標準モデルのフロントブレーキは360mmだが、Sのブレーキ径は390mmだ(いずれもブレンボ)。あるいは、4,000ポンド追加で支払えば402mmのカーボンセラミックブレーキにすることもできる。また、C63には機械式のリアリミテッドスリップデフが装着されるが、C63SのLSDは電子制御式となる。

いずれもドライブモードとして、コンフォート、スポーツ、スポーツプラス、インディビジュアルが設定され、Sにはそれに加えてレースモードも追加される。レースモードではスタビリティコントロールをオフにすることができ、スライドさせることも可能となる。インディビジュアルモードでは自分の好きなようにセッティングを調節することができる。例えば、スポーツやスポーツプラス同様に排気音は勇ましくしながらも、サスペンションはソフトなセッティングとすることも可能だ。つまり、近所の人を叩き起こしながらも、自分の腰がスピードバンプに痛めつけられることはない。

エンジン音が退屈になってしまったのではないだろうかという心配は、エンジンを掛けて鳴り響く音を聞いた瞬間にどこかに消えてしまうだろう。スポーツモードを選べばなおのことに良くなる。

パフォーマンスに関しても心配は無用だ。今回はC63とC63Sのどちらにも試乗したが、私ならばSを選ぶ。実際に公道ではそのパフォーマンスの全てを出し切ることはできないだろうが、多くの人はわざわざ高い値段を払ってでもさらなる馬力を得たいという欲求には抗えないだろう。もしサーキットへとこの車を放ち、法律から開放されれば、大いなる歓びを得ることができる。

旧型のC63は非常に楽しかったが、新型はなおのことに実力があり、大きな音を響かせてタイヤスモークを発生させ、高額のタイヤ代を求めるだけの車ではなくなった。標準のCクラスよりもトレッドが拡大され、優秀なLSDや電動パワーステアリングが採用されたことで、ハンドリングはより洗練されている。

最高速度は250km/hでリミッターがかかり、0-100km/h加速は4.0秒だ。追い越し加速も驚異的だ。しかし残念ながら、デュアルクラッチではなくコンベンショナルなオートマチックトランスミッションが採用されている。ただし、マニュアルモードは用意されている。

新型C63には旧型と同じくらいにドラマと興奮があり、馬力や操作性は先代を超え、音は先代に比肩する。BMW M4やアウディ・RS4の良きライバルと言える。


Mercedes AMG C63 S review by Richard Hammond: This is ready to rumble