ホンダが北米で販売する3列シートSUV、パイロットがフルモデルチェンジにより3代目となりました。
今回は、米国「Forbes」による新型パイロットの試乗レポートを日本語で紹介します。

これまでのホンダ・パイロットは他の車とは一味違った。2002年に登場した初代パイロットは3列シートSUVとしては初めてモノコックボディを採用し、初の3列シートクロスオーバーSUVとなった。当時はラダーフレームのSUVが主力だった。フォード・エクスペディションにシボレー・サバーバン、トヨタ・セコイア、日産・パスファインダーアルマーダなどのラダーフレームSUVが巨大SUVの主流にあったが、ホンダはその流れに乗ることを拒んだ。2008年にパイロットが2代目へとモデルチェンジする頃には状況は一変しており、ラダーフレームが隅に追いやられ、クロスオーバーSUVが主流となっていた。そして2016年モデルとしてパイロットは2度目のフルモデルチェンジを果たしたが、新型パイロットも依然として他とは一味違う車なのだろうか。
2代目パイロットのデザインはトラック的な無骨なもので、基本的なデザインはピックアップトラックのリッジラインとも共通性を持っていた。一方、新型はより滑らかで現代的なデザインへと変貌している。滑らかなのは見た目だけではなく、ホンダによるとCd値はクラス最高だそうだ。新型パイロットがターゲットとしているのは、高級志向で、無骨さよりもモダンさを求める消費者だ。ただ、個人的には最近の空力的なデザインのクロスオーバーSUVには懐疑的だ。新型パイロットとパスファインダーとエクスプローラーとハイランダーとサンタフェをシルエットだけで見分けられる自信は私にはない。
ただ、エクステリアをじっくりと見ていると良い面も見えてくる。アラバマ州リンカーンに位置する工場で作られるパイロットは仕上がりが非常に良く、塗装も美しいし、ボディパネルのチリもしっかりと合っている。LEDの使い方もうまく、フロントデイライトやテールランプのLEDは格好良い。また、LEDプロジェクターヘッドランプもオプションとして設定される。「LX」および「EX-L」には18インチアルミホイールが標準で装着され、「Touring」と「Elite」には20インチアルミホイールが装着される。
インテリアにはほどほどの高級感があり、室内空間はミニバンにも近いレベルにある。ダッシュボードは水平基調の質実剛健なデザインで、左右にアーチが架かったようなイメージになっている。大型のセンターコンソールの最上部(ベストポジションだ)には大画面タッチディスプレイが鎮座しており、その両側にはエアコン吹き出し口が、下には比較的数の抑えられたオーディオ・エアコン用のボタン類が並んでいる。センターコンソールにはスイッチ式のギアセレクターと2つのカップホルダーがある。ステアリングスイッチもしっかり装備されており、メーターは二眼式で、その間には4.2インチ液晶ディスプレイが付いている。インテリアは基本的に洗練されていてホンダらしい。

2列目シートや3列目シートも良い。オプションの開閉式サンシェード付パノラミックガラスルーフは室内に開放感をもたらし、3列目でさえ快適に感じられる。2列目シートはフラットに倒すことができ、前後スライドも可能だ。試みに3列全てに190cm近い人間を乗せてみたが、少なくとも短距離の移動であればほとんど問題ないだろう。ただ、3列目シートはフロアから座面までの距離があまりに短いため、中高生でも不満が出るかもしれない。ただ、緊急用としてや、学校の送り迎えなどの短距離利用で使うことを考えれば、3列目シートの存在意義は大きいだろう。
SUVにとって荷室スペースは重要だ。3列目の後ろの荷室スペースは467Lと十分だし、3列目を倒すと荷室スペースは1,325Lに、2列目まで倒すと2,373Lに拡大する。また、リアの荷室スペースのフロア下にも収納スペースが隠れている。
走行性能には問題がある。確かに新型パイロットは従来型と比べればハンドリング、パワーの両面で確実に進歩している。エンジンは3.5L V6の1種類しか設定されず、最高出力は284PS、最大トルクは36.2kgf·mとなる。直噴エンジンを採用したことでパワーを増しており、それでいて、ホンダ初の9速ATを採用する4WDモデルではシティ燃費8.1km/L、ハイウェイ燃費11.1km/L、複合燃費9.4km/Lを実現している。加速はスムーズで意のままだ。
しかし、前述したように走行性能には問題がある。ワインディングロードでパイロットを運転していると、安心感が得られない。スピードを出すと運転が下手になったような気分になり、結果的にゆっくり運転せざるを得なくなった。地方の道路で車線に沿って走ることさえ落ち着いてはできず、コーナーを曲がろうとすると度々オーバースピードになってしまい、ハードブレーキングをする羽目になった。だからどうした、と考える人もいるかもしれない。この車はファミリーカーであり、ワインディングロードを走るための車ではない。ましてやスポーツカーなんかではない。これはクロスオーバーだ。確かにそうだ。しかし、あえて攻めた運転をしているわけでもないのに車の限界がこうも簡単に見えてしまうのはいささか残念だった。
パイロットには「ホンダセンシング」という運転支援システムが多々装備されている。これには、レーダーを用いたクルーズコントロールや衝突軽減ブレーキ、車線維持支援システムなどが含まれる。高級車ではない車にもこのような装備がつくようになったのは喜ばしいことだ。それだけこういった技術が成熟し、安くなったということだろう。
グレードは4種類設定され、いずれにも2WDと4WD(1,800ドル高)のそれぞれが用意される。ベースグレードの「LX」(6速AT・2WD)は2万9,995ドルで、最上級グレードの「Elite」(9速AT・4WD)は4万6,420ドルだ。
パイロットと競合するモデルは多く、激戦区にある。シボレー・トラバース、ビュイック・アンクレイブ、GMC・アカディアのGM三兄弟は古さを感じるものの、トヨタ・ハイランダーは設計が新しく、ハイブリッドも設定されている。フォード・エクスプローラーは依然人気だし、日産・パスファインダーのコストパフォーマンスの高さも無視できない。ダッジ・デュランゴやジープ・チェロキーといった逞しさを売りとするモデルもある。
従来のパイロットのオーナーであれば、新型の確実な進化を喜ぶことだろう。ホンダの信頼性やリセールバリューの高さは固定客を生み出している。ただ、車を購入する前に、様々な道路状況で試乗することをおすすめしたい。ハンドリングやパフォーマンスに満足がいくなら、これを購入して後悔することはないだろう。ただ、もし満足できないなら他のライバル車も試乗してみるべきだ。なにより、このクラスにはライバルが多いのだから、比較しない手はないだろう。
2016 Honda Pilot Test Drive And Review: A Safe Makeover
今回は、米国「Forbes」による新型パイロットの試乗レポートを日本語で紹介します。

これまでのホンダ・パイロットは他の車とは一味違った。2002年に登場した初代パイロットは3列シートSUVとしては初めてモノコックボディを採用し、初の3列シートクロスオーバーSUVとなった。当時はラダーフレームのSUVが主力だった。フォード・エクスペディションにシボレー・サバーバン、トヨタ・セコイア、日産・パスファインダーアルマーダなどのラダーフレームSUVが巨大SUVの主流にあったが、ホンダはその流れに乗ることを拒んだ。2008年にパイロットが2代目へとモデルチェンジする頃には状況は一変しており、ラダーフレームが隅に追いやられ、クロスオーバーSUVが主流となっていた。そして2016年モデルとしてパイロットは2度目のフルモデルチェンジを果たしたが、新型パイロットも依然として他とは一味違う車なのだろうか。
2代目パイロットのデザインはトラック的な無骨なもので、基本的なデザインはピックアップトラックのリッジラインとも共通性を持っていた。一方、新型はより滑らかで現代的なデザインへと変貌している。滑らかなのは見た目だけではなく、ホンダによるとCd値はクラス最高だそうだ。新型パイロットがターゲットとしているのは、高級志向で、無骨さよりもモダンさを求める消費者だ。ただ、個人的には最近の空力的なデザインのクロスオーバーSUVには懐疑的だ。新型パイロットとパスファインダーとエクスプローラーとハイランダーとサンタフェをシルエットだけで見分けられる自信は私にはない。
ただ、エクステリアをじっくりと見ていると良い面も見えてくる。アラバマ州リンカーンに位置する工場で作られるパイロットは仕上がりが非常に良く、塗装も美しいし、ボディパネルのチリもしっかりと合っている。LEDの使い方もうまく、フロントデイライトやテールランプのLEDは格好良い。また、LEDプロジェクターヘッドランプもオプションとして設定される。「LX」および「EX-L」には18インチアルミホイールが標準で装着され、「Touring」と「Elite」には20インチアルミホイールが装着される。
インテリアにはほどほどの高級感があり、室内空間はミニバンにも近いレベルにある。ダッシュボードは水平基調の質実剛健なデザインで、左右にアーチが架かったようなイメージになっている。大型のセンターコンソールの最上部(ベストポジションだ)には大画面タッチディスプレイが鎮座しており、その両側にはエアコン吹き出し口が、下には比較的数の抑えられたオーディオ・エアコン用のボタン類が並んでいる。センターコンソールにはスイッチ式のギアセレクターと2つのカップホルダーがある。ステアリングスイッチもしっかり装備されており、メーターは二眼式で、その間には4.2インチ液晶ディスプレイが付いている。インテリアは基本的に洗練されていてホンダらしい。

2列目シートや3列目シートも良い。オプションの開閉式サンシェード付パノラミックガラスルーフは室内に開放感をもたらし、3列目でさえ快適に感じられる。2列目シートはフラットに倒すことができ、前後スライドも可能だ。試みに3列全てに190cm近い人間を乗せてみたが、少なくとも短距離の移動であればほとんど問題ないだろう。ただ、3列目シートはフロアから座面までの距離があまりに短いため、中高生でも不満が出るかもしれない。ただ、緊急用としてや、学校の送り迎えなどの短距離利用で使うことを考えれば、3列目シートの存在意義は大きいだろう。
SUVにとって荷室スペースは重要だ。3列目の後ろの荷室スペースは467Lと十分だし、3列目を倒すと荷室スペースは1,325Lに、2列目まで倒すと2,373Lに拡大する。また、リアの荷室スペースのフロア下にも収納スペースが隠れている。
走行性能には問題がある。確かに新型パイロットは従来型と比べればハンドリング、パワーの両面で確実に進歩している。エンジンは3.5L V6の1種類しか設定されず、最高出力は284PS、最大トルクは36.2kgf·mとなる。直噴エンジンを採用したことでパワーを増しており、それでいて、ホンダ初の9速ATを採用する4WDモデルではシティ燃費8.1km/L、ハイウェイ燃費11.1km/L、複合燃費9.4km/Lを実現している。加速はスムーズで意のままだ。
しかし、前述したように走行性能には問題がある。ワインディングロードでパイロットを運転していると、安心感が得られない。スピードを出すと運転が下手になったような気分になり、結果的にゆっくり運転せざるを得なくなった。地方の道路で車線に沿って走ることさえ落ち着いてはできず、コーナーを曲がろうとすると度々オーバースピードになってしまい、ハードブレーキングをする羽目になった。だからどうした、と考える人もいるかもしれない。この車はファミリーカーであり、ワインディングロードを走るための車ではない。ましてやスポーツカーなんかではない。これはクロスオーバーだ。確かにそうだ。しかし、あえて攻めた運転をしているわけでもないのに車の限界がこうも簡単に見えてしまうのはいささか残念だった。
パイロットには「ホンダセンシング」という運転支援システムが多々装備されている。これには、レーダーを用いたクルーズコントロールや衝突軽減ブレーキ、車線維持支援システムなどが含まれる。高級車ではない車にもこのような装備がつくようになったのは喜ばしいことだ。それだけこういった技術が成熟し、安くなったということだろう。
グレードは4種類設定され、いずれにも2WDと4WD(1,800ドル高)のそれぞれが用意される。ベースグレードの「LX」(6速AT・2WD)は2万9,995ドルで、最上級グレードの「Elite」(9速AT・4WD)は4万6,420ドルだ。
パイロットと競合するモデルは多く、激戦区にある。シボレー・トラバース、ビュイック・アンクレイブ、GMC・アカディアのGM三兄弟は古さを感じるものの、トヨタ・ハイランダーは設計が新しく、ハイブリッドも設定されている。フォード・エクスプローラーは依然人気だし、日産・パスファインダーのコストパフォーマンスの高さも無視できない。ダッジ・デュランゴやジープ・チェロキーといった逞しさを売りとするモデルもある。
従来のパイロットのオーナーであれば、新型の確実な進化を喜ぶことだろう。ホンダの信頼性やリセールバリューの高さは固定客を生み出している。ただ、車を購入する前に、様々な道路状況で試乗することをおすすめしたい。ハンドリングやパフォーマンスに満足がいくなら、これを購入して後悔することはないだろう。ただ、もし満足できないなら他のライバル車も試乗してみるべきだ。なにより、このクラスにはライバルが多いのだから、比較しない手はないだろう。
2016 Honda Pilot Test Drive And Review: A Safe Makeover