今回は、英国の人気自動車番組「Top Gear」でもおなじみのリチャード・ハモンドが英国「Mirror」に寄稿したモーガン・プラス8の試乗レポートを日本語で紹介します。


Morgan

僕の両親はフランスで小さなモーガン4/4に乗っている。雨が降れば濡れるし、ルーフを上げるために一度止まらなければならない。ルーフを上げてもまだ濡れるが、それでも上げないよりはましだ。ただ、両親はこんなことは気にしない。なぜなら、これがモーガンを持つということだからだ。この車の欠点さえ、この車の一部として受け入れている。

しかし、モーガンを所有するのは簡単なことではない。両親のモーガンは3万1,500ポンドで、今回紹介するプラス8に至っては8万5,000ポンドだ。とはいえ、この車は手作りだし、価値が下がることもない。

プラス8も両親の安いモーガン同様、雨漏りはするかもしれないが、それ以外は全く違う。例えば、この車のシャシはエアロ8やエアロマックス(これは以前所有していたのだが、つい先日売ってしまった)同様、接着剤とリベットでしっかりと固定されている。

それに、4/4にはフォード製の4気筒1,600ccエンジンが搭載されるが、プラス8にはBMW製の4.8L V8エンジンが搭載されている。そしてなんとも甘美な音を奏でる。

車重はわずか1,100kgで、モーガンが誇らしく言うところによると、これは市販V8車としては最軽量だそうだ。

このため、プラス8は残酷なほどに速い。1,100kgの車重に395PSのエンジンが組み合わせられたことで、0-100km/h加速はわずか4.5秒だ。最高速度は249km/hだが、このスピードで屋根を閉じて走っていると、ルーフが壊れて耳が聞こえなくなり、髪はどこかへ飛んでいってしまうだろう。1960年代後半から1990年代中盤まで作られていたオリジナルのプラス8も同じように非常に速かった。

モーガンの見た目は1930年代的だが、車内にはエアバッグが装備されており、ABSが付いていることを示すマークもある。先進的と思える装備は付いていないが、必要な安全装備は付いているようだ。

それ以外の部分は、純粋なヴィンテージだ。ダッシュボードは非常にシンプルで、目に入ってくるのはスピードメーターにタコメーター、燃料計、水温計くらいだ。

プラス8にはオートマチックも従来的なマニュアルも設定される。今回の試乗車はMT車だった。これは6速MTだったのだが、実際は3段だけ使えば十分だ。この車はあまりに軽く、2速で発進し、3速を飛ばして後は4速と6速を使えばいい。

スポーツエグゾーストも設定されているが、標準のエグゾーストでも素晴らしい排気音を奏でてくれる。低速では静かに走り、早朝に近所の人を起こすこともないが、アクセルを踏み込むと素晴らしい音を立てながら加速していく。

乗り心地は少し跳ね気味だが、かつてのプラス8やスチールシャシの現行モーガン車よりはましだ。

この車は最高水準の技法をもって作られているため、ハンドリングは現代のスポーツカーとは全く違う。パワーステアリングは軽いが、スピードを上げるに連れてクイックかつシャープになり、乗り心地も非常に神経質なため、舗装の悪い道をまっすぐ走らせるのは非常に大変だ。

モーガンに乗っていると、他のドライバーに親切にしてもらえる。合流では微笑んで道を譲ってもらえる。モーガンは新しい車だし、錆びついてバラバラになることもなければBMW製なのでエンジンが壊れることも絶対にないが、まるでクラシックカーに乗っているような気分になれる。

問題は、両親が乗っている初心者用モーガンでもほとんど同じ経験ができるという点だ。もちろん、プラス8の素晴らしいサウンドトラックや暴力的な加速性能はないが、そこに5万4,000ポンドの差額分の価値はあるだろうか。


Morgan Plus 8 has its shortfalls but that's part of the joy