今回は、米国「Car and Driver」による新型フォード・エクスプローラーの試乗レポートを日本語で紹介します。

新型エクスプローラーの出来の如何は重要なのだろうか。歴史を紐解けば、出来がどうであろうと関係ないように思える。フォード・エクスプローラーは1990年の初代の登場以来絶大な人気を誇り、1990年代に巻き起こったSUVブームの火付け役にもなった。初代エクスプローラーはピックアップトラックのレンジャーの派生車として生まれた不完全な車だったが、それでも大きな人気を獲得し、その後装着されていたファイアストン製タイヤを原因とする事故が多発したにもかかわらず、その人気は依然として続いた。乗用車ベースのクロスオーバーSUVの台頭によりエクスプローラーの販売台数にも陰りが見えるようになったが、そのトレンドに沿うように、2010年のモデルチェンジでボディ・オン・フレーム構造からモノコック構造に変更されると、販売台数は回復した。競争は激化しているにもかかわらず、ここ5年間で販売台数は上昇一辺倒の状況にある。エクスプローラーはアメリカで最も人気のある3列シートSUVだ。
2016年モデルでは、2010年の4代目モデル登場以来最大の変更が施されているが、フルモデルチェンジではない。今回のマイナーチェンジでは、前後デザインが刷新されたほか、最上級グレードが新たに追加され、装備内容も見直されている。メカニズム面で最も大きな変更は、新しい4気筒EcoBoostエンジンが追加された点だ。
従来の2.0L EcoBoostエンジンに替わって新型では2.3LのEcoBoostエンジンが搭載される。従来の2.0Lエンジンは標準エンジンの3.5L V6よりも高価で、販売比率はわずか2~4%だった。しかし、フォードはこの状況を変えようとしているようだ。新エンジンは最高出力が284PS、最大トルクが42.9kgf·mと、従来型のEcoBoostエンジンと比べてそれぞれ41PS、5.5kgf·m向上している。それに、FFモデルしか設定されなかった従来のEcoBoostエンジンとは異なり、新型EcoBoostエンジンには4WDモデルも設定される。また、従来のEcoBoostエンジンは牽引向きではなかったが、新型のEcoBoostモデルは最大牽引重量1,360kgを誇る。
今回、2.3Lモデルの2WD車、4WD車の両方に試乗したが、このエンジンは巨大なエクスプローラーを走らせるのに十分なエンジンであることが分かった。赤信号からの発進加速では少し力不足を感じるものの、一度50km/hくらいまで加速してしまえば不足を感じることもなく、高速道路での追い越し加速に何の問題もない。アクセルを踏み込むと気持ちの良いとは言えないエンジン音が入り込んでくるが、その点を除けば基本的に静粛性の高いエクスプローラーの性質を大きく外れることはない。
ただ、自然吸気のV6エンジンよりも995ポンド余計に支払ってまで燃費性能を求める人がどれくらいいるのかは疑問だ。ベースグレードやXLT、Limitedでは最高出力294PS、最大トルク35.3kgf·mの3.5L V6エンジンが標準エンジンだ。4気筒EcoBoostエンジンの燃費性能はシティ/ハイウェイで8.1km/L/11.9km/L (2WD), 7.7km/L/11.1km/L (4WD) となり、V6モデルの7.2km/L/10.2km/L (2WD), 6.8km/L/9.8km/L (4WD) よりも優れている。

また、最上級エンジンとして最高出力370PSを誇るツインターボ EcoBoost V6 3.5Lエンジンも設定されており、このエンジンを選択できるグレードも増えている。従来はSportのみに設定されていたが、新型ではPlatinumにもこのエンジンが設定される。なお、駆動方式は全車4WDとなる。新規設定されたPlatinumには専用のクロムメッシュフロントグリルやキルトレザーシートが装備される。このグレードではあらゆる装備が標準装備となっており、そのため価格は5万3,495ドルとかなり高い。ただ、フォードによると、従来のSportの購入者はフルオプションで購入する人が多かったそうで、この新グレードを追加したのもそれが理由だそうだ。
そして、Platinumが最高のエクスプローラーを求める層に向けられた一方で、Sportはよりスポーティーになっている。バネレートやダンパーは硬くなり、ステアリングもわずかにチューニングされている。ただ、サンディエゴ東部のワインディングでSportに試乗したのだが、チューニングの違いは実感できるほどではなかった。確かにハンドリングはこのサイズのSUVにしては良いのだが、それは標準のエクスプローラーにも言えることだ。とはいえ、V6 EcoBoostエンジンはパワフルで、3列シートクロスオーバーSUVの中でもトップレベルに速い。アクセルを床まで踏み込む必要に駆られるような場面はほとんどない。子供を時間に遅れないように送り迎えするにはもってこいだ。
Platinumはフル装備だが、必要な装備はそれ以下のグレードにもちゃんと装備されている。4WDはどのグレードでも選択できるし、レザーシート、ナビゲーション、ブラインドスポット警報はXLT以上のグレードに設定され、XLT以上では2列目シートをベンチシートにすることもキャプテンシートにすることもできる。車線保持アシストや前方衝突警報付きアダプティブクルーズコントロールはLimitedとSportでオプション設定となる。また、マイナーチェンジを期にハンズフリーパワーテールゲートが追加されたほか、オートマチックパーキングシステムの機能向上も図られている。

Platinumには本木目やマットアルミ、光沢プラスティックなどの高級感のある材質が用いられているが、それ以下のグレードでも改良が図られている。ドアパネルのデザインが変更され、アームレストの使い勝手が向上したほか、ダッシュボードのデザインも改善している。ただ、パッケージの限界を感じる部分も依然として残っている。ペダル位置は前方に移動し、角度も変えられているのだが、フロントホイールアーチの突き出しは依然として大きく、ドライビングポジションに影響を与える。フロントシートを薄くすることで、セカンドシートのニールームは改善しており、3列目シートもクラスの中では広い方なのだが、3列目は2人乗りだ(競合車には狭いながらも3人乗れるモデルもある)。荷室スペースはクラスの中でも広いほうだ。
我々は、エクスプローラーよりも流麗でパッケージングの優れたフォード・フレックスの方が良い車だと思う。それに、エクスプローラー Sportは4万4,195ドルだが、同じV6 EcoBoostエンジンを搭載するフレックス Limitedの価格は4万3,795ドルだし、フレックスにはエクスプローラーではオプションのナビやブラインドスポット警報が標準装備される。
とはいえ、販売面ではフレックスはエクスプローラーにはなれない。ファッション性を重視するカリフォルニアや、フォードのホームであるデトロイト以外では、フレックスはほとんど売れていない。誰もが欲しがるSUVは結局エクスプローラーなのだ。新型エクスプローラーもきっと売れ続けるだろうし、フォードの利益を支える柱となることだろう。
2016 Ford Explorer

新型エクスプローラーの出来の如何は重要なのだろうか。歴史を紐解けば、出来がどうであろうと関係ないように思える。フォード・エクスプローラーは1990年の初代の登場以来絶大な人気を誇り、1990年代に巻き起こったSUVブームの火付け役にもなった。初代エクスプローラーはピックアップトラックのレンジャーの派生車として生まれた不完全な車だったが、それでも大きな人気を獲得し、その後装着されていたファイアストン製タイヤを原因とする事故が多発したにもかかわらず、その人気は依然として続いた。乗用車ベースのクロスオーバーSUVの台頭によりエクスプローラーの販売台数にも陰りが見えるようになったが、そのトレンドに沿うように、2010年のモデルチェンジでボディ・オン・フレーム構造からモノコック構造に変更されると、販売台数は回復した。競争は激化しているにもかかわらず、ここ5年間で販売台数は上昇一辺倒の状況にある。エクスプローラーはアメリカで最も人気のある3列シートSUVだ。
2016年モデルでは、2010年の4代目モデル登場以来最大の変更が施されているが、フルモデルチェンジではない。今回のマイナーチェンジでは、前後デザインが刷新されたほか、最上級グレードが新たに追加され、装備内容も見直されている。メカニズム面で最も大きな変更は、新しい4気筒EcoBoostエンジンが追加された点だ。
従来の2.0L EcoBoostエンジンに替わって新型では2.3LのEcoBoostエンジンが搭載される。従来の2.0Lエンジンは標準エンジンの3.5L V6よりも高価で、販売比率はわずか2~4%だった。しかし、フォードはこの状況を変えようとしているようだ。新エンジンは最高出力が284PS、最大トルクが42.9kgf·mと、従来型のEcoBoostエンジンと比べてそれぞれ41PS、5.5kgf·m向上している。それに、FFモデルしか設定されなかった従来のEcoBoostエンジンとは異なり、新型EcoBoostエンジンには4WDモデルも設定される。また、従来のEcoBoostエンジンは牽引向きではなかったが、新型のEcoBoostモデルは最大牽引重量1,360kgを誇る。
今回、2.3Lモデルの2WD車、4WD車の両方に試乗したが、このエンジンは巨大なエクスプローラーを走らせるのに十分なエンジンであることが分かった。赤信号からの発進加速では少し力不足を感じるものの、一度50km/hくらいまで加速してしまえば不足を感じることもなく、高速道路での追い越し加速に何の問題もない。アクセルを踏み込むと気持ちの良いとは言えないエンジン音が入り込んでくるが、その点を除けば基本的に静粛性の高いエクスプローラーの性質を大きく外れることはない。
ただ、自然吸気のV6エンジンよりも995ポンド余計に支払ってまで燃費性能を求める人がどれくらいいるのかは疑問だ。ベースグレードやXLT、Limitedでは最高出力294PS、最大トルク35.3kgf·mの3.5L V6エンジンが標準エンジンだ。4気筒EcoBoostエンジンの燃費性能はシティ/ハイウェイで8.1km/L/11.9km/L (2WD), 7.7km/L/11.1km/L (4WD) となり、V6モデルの7.2km/L/10.2km/L (2WD), 6.8km/L/9.8km/L (4WD) よりも優れている。

また、最上級エンジンとして最高出力370PSを誇るツインターボ EcoBoost V6 3.5Lエンジンも設定されており、このエンジンを選択できるグレードも増えている。従来はSportのみに設定されていたが、新型ではPlatinumにもこのエンジンが設定される。なお、駆動方式は全車4WDとなる。新規設定されたPlatinumには専用のクロムメッシュフロントグリルやキルトレザーシートが装備される。このグレードではあらゆる装備が標準装備となっており、そのため価格は5万3,495ドルとかなり高い。ただ、フォードによると、従来のSportの購入者はフルオプションで購入する人が多かったそうで、この新グレードを追加したのもそれが理由だそうだ。
そして、Platinumが最高のエクスプローラーを求める層に向けられた一方で、Sportはよりスポーティーになっている。バネレートやダンパーは硬くなり、ステアリングもわずかにチューニングされている。ただ、サンディエゴ東部のワインディングでSportに試乗したのだが、チューニングの違いは実感できるほどではなかった。確かにハンドリングはこのサイズのSUVにしては良いのだが、それは標準のエクスプローラーにも言えることだ。とはいえ、V6 EcoBoostエンジンはパワフルで、3列シートクロスオーバーSUVの中でもトップレベルに速い。アクセルを床まで踏み込む必要に駆られるような場面はほとんどない。子供を時間に遅れないように送り迎えするにはもってこいだ。
Platinumはフル装備だが、必要な装備はそれ以下のグレードにもちゃんと装備されている。4WDはどのグレードでも選択できるし、レザーシート、ナビゲーション、ブラインドスポット警報はXLT以上のグレードに設定され、XLT以上では2列目シートをベンチシートにすることもキャプテンシートにすることもできる。車線保持アシストや前方衝突警報付きアダプティブクルーズコントロールはLimitedとSportでオプション設定となる。また、マイナーチェンジを期にハンズフリーパワーテールゲートが追加されたほか、オートマチックパーキングシステムの機能向上も図られている。

Platinumには本木目やマットアルミ、光沢プラスティックなどの高級感のある材質が用いられているが、それ以下のグレードでも改良が図られている。ドアパネルのデザインが変更され、アームレストの使い勝手が向上したほか、ダッシュボードのデザインも改善している。ただ、パッケージの限界を感じる部分も依然として残っている。ペダル位置は前方に移動し、角度も変えられているのだが、フロントホイールアーチの突き出しは依然として大きく、ドライビングポジションに影響を与える。フロントシートを薄くすることで、セカンドシートのニールームは改善しており、3列目シートもクラスの中では広い方なのだが、3列目は2人乗りだ(競合車には狭いながらも3人乗れるモデルもある)。荷室スペースはクラスの中でも広いほうだ。
我々は、エクスプローラーよりも流麗でパッケージングの優れたフォード・フレックスの方が良い車だと思う。それに、エクスプローラー Sportは4万4,195ドルだが、同じV6 EcoBoostエンジンを搭載するフレックス Limitedの価格は4万3,795ドルだし、フレックスにはエクスプローラーではオプションのナビやブラインドスポット警報が標準装備される。
とはいえ、販売面ではフレックスはエクスプローラーにはなれない。ファッション性を重視するカリフォルニアや、フォードのホームであるデトロイト以外では、フレックスはほとんど売れていない。誰もが欲しがるSUVは結局エクスプローラーなのだ。新型エクスプローラーもきっと売れ続けるだろうし、フォードの利益を支える柱となることだろう。
2016 Ford Explorer