これまで、フォード・インターセプターシボレー・カプリスPPVといった米国向けパトカー用車両の試乗レポートを掲載してきましたが、ダッジも米国向けにパトカー用モデル「チャージャー パースート」を製造しています。今回は、米国「Autoweek」によるダッジ・チャージャー パースートの試乗レポートを日本語で紹介します。


Charger

理由はわからないのだが、チャージャーが新型になるたび、ダッジは報道陣向けに、パトランプやサイレン、拡声器、それに白黒の塗装が完備された広報車を用意する。そもそも、警察には独自の厳しい(そして興味深い)車両テストがあるため、わざわざ一般人向けのレビューを参考にすることもないだろう。

では、今回のチャージャー パースートの試乗には何の意味があるのだろうか。そんなことは気にする必要はないだろう。いずれにしても、この車は楽しい車だ。なにせこの車は、伝統的なマッスルカーの要素が詰まったフルサイズのアメリカンセダンだ。

この車には、フロアカーペットの代わりにゴムマットが敷いてあるし、コラムシフトだし、ドッグディッシュホイールキャップの付いたスチールホイールが装着されている。それに、この車が4WDでなければ、およそ55kgf·mの大トルクを使ってグッドイヤー EAGLEワイドタイヤを散々擦り減らすこともできるだろう。ナビゲーションシステムは現代のドライバーにとっては最低限許容できる程度のもので、それ以上のものは何もない。

ただ、どちらにしてもこの車を購入することは叶わない。少なくとも、今巷を走っている元警察車両のP71クラウンヴィクトリアと同じように、いずれ役目を終えて競売にかけられるまでは、所有することはできない。そしてもしこの車を運転する機会があればこう思うことだろう。この車は2015年に作られた1971年の車だ、と。


男の子を笑顔にさせるためには、パトランプにサイレン、それにアサルトライフルの積まれたパトカーの鍵を渡してやれば確実だろう。そしてこのチャージャーパースートにはAR-15こそ積まれていないものの、それ以外のものは375PSを発揮する5.7L V8のHEMIエンジンまで含めて完備されている。

この車を運転するのは、想像する通りに楽しい。

この楽しさには、白黒のフェイクのパトカー塗装や上述したようなパトカー専用の装備が大きく関係している。パトランプのスイッチを押し、サイレンをけたたましく響かせ、そして自分のためにあけられた道を駆け抜けるという誘惑は抗いがたい。誰もがカーチェイスの真似事をしてみたくなるに違いない。ともすれば、道行くパトカーがパトランプも点けずに大人しく走っていることが不思議でならなくなるかもしれない。

そして、パトカーらしさ以外の部分は、古き良きアメリカのセダンだ。

この車は4WDであり、そのため細かいアクセルワークで54.6kgf·mという大トルクをたやすく扱うことができる。コーナリング時のタイヤスキールは程々で、クライスラーのLXプラットフォームらしくシャシも扱いやすい。

チャージャーパースートの数少ない問題点は、この車が仕事のための車であることに起因している。特別仕様の頑丈なサスペンションを用いているからか、乗り心地は長距離クルーザーに求められるレベルよりは悪い。その代わり、少なくとも理論上では長期間の酷使にも耐えることができる。センターコンソールは警察車両らしくウィレン社製のサイレン・灯火器類の操作系のスイッチやボタンが占めている。室内は広いが、警察用のコンピューターなどが搭載されればそんな空間も狭くなることだろう。

そして、センターコンソールに操作系が配されるため、自ずとコラムシフトに必然性が出てくる。ただ、私はこれを問題だとは思わない。確かにコラムシフトは過去の産物だが、これのお陰で車内に多くのスペースが生まれることは確かだ。むしろ、何故現在の自動車メーカーはコラムシフトをやめてしまったのだろうかとさえ思う。

では、燃費はどうだろうか。正確な数字はわからないが、4WDにHEMIエンジン、それに空力性能を悪化させるであろう各種装備を考慮すれば、燃費がいいとは考えづらい。そもそものところ、大抵の場合はアイドリング状態か低速走行状態にあり、時にアクセルを踏み込むようなハードな走りをするという車にとって(そしてガソリン代は全て納税者持ちだ)燃費がどれほど重要なのかは分からないが、誰かがプリウスパースートを使おうとでも言い出さない限り、警察車両は燃費の悪さからは逃れられないだろう。


A test of willpower: 2015 Dodge Charger Pursuit review notes