今回は、米国「Autoweek」によるメルセデス・ベンツ スプリンター4x4の試乗レポートを日本語で紹介します。


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10年以上前、メルセデス・ベンツは米国市場にスプリンターを投入し、大型バン市場に革新をもたらした。それ以前は、米国市場にはフォード・エコノラインやシボレー・エクスプレス、ダッジ・ラムバンなどといったフルサイズバンしか存在しなかった。しかし、現在ではラム・プロマスターやフォード・トランジットなどといったスプリンターと同サイズのバンや、それよりも小型のバンが販売されている。そして、メルセデスは今でも時代の先を行くため、スプリンターに4x4モデルを追加した。

もちろん、元々の4x2モデルのパワートレインも優秀だし、こちらの販売も継続される。とはいえ、4x4という選択肢の登場により、より広範囲への物流輸送が可能となることだろう。

4x2モデルには163PSの4気筒エンジンと191PSのV6エンジンの2機種が用意されるが、4x4モデルにはV6エンジンのみが設定される。とはいえ、スムーズな5速ATと組み合わせられる44.9kgf·mのトルクを発揮するV6エンジンは必要十分だ。

4WD化の恩恵を示すため、メルセデスのトラック部門は我々をカナダ ブリティッシュコロンビア州のモナシー山に招待してくれた。そんな場所なので雪が積もっているものと思っていたのだが、山の頂上に雪が見えただけで、試乗車のブリヂストン BLIZZAK W965の下にあったのは泥だった。

とはいえ、泥道も雪道同様に低μ路なので試乗コンディションとしては悪くない。では、スプリンター4x4はこの路面にしっかり対処できたのだろうか。その答えはほぼイエスだ。

今回は2人乗りのカーゴバンのみに試乗した。窓付きのバンと窓なしのパネルバンのいずれも用意されていたが、どちらも鉄板丸出しだった。なので、舗装道路を走っていてもボディからの反響音が聞こえてきたが、職業ドライバーならこれくらいは問題ないだろう。シートポジションや前方視界、それにステアリングはいずれも素晴らしい。ただ、パネルバンの後方視界は非常に悪い。もし購入するならばリアビューカメラを付けたほうがいいだろう。もっとも、このカメラの出来はあまり良くないが。

4x4はフロント11cm、リア8cmリフトアップしている。ダッシュボードのボタンにより4WDモードとすると駆動力の35%が前輪へと送られる。また、この設定はオプションだが、ローレンジにすると前輪の駆動配分は40%となる。前後ともオープンデフであるという欠点はあるものの、トラクションコントロールを用いてスリップしたタイヤにブレーキをかけることで、トラクションを確保することはできる。基本的にこのシステムはうまく働いてはくれるものの、今回は深い泥に嵌ってしまい、メルセデスのスタッフにショベルで脱出を手伝ってもらうという場面もあった。

スプリンターには数多くのモデルがラインアップされており、その中から自分に合ったものを選択することができる。それに、フォード・トランジットやラム・プロマスターはいずれも3万ドル未満からの価格設定ではあるものの、4WDモデルは設定されない。スプリンター4x2のベース価格は36,990ドルで、4x4とするにはさらに6,500ドル上乗せする必要があるが、雪道や泥道を走行する機会があるならそれだけの価値はあるだろう。それに、さらに300ドル払えばローレンジシステムも使えるようになる。

4x2モデル、4x4モデルいずれも、最大の売りはそのラインアップの豊富さだろう。スプリンターには2種類のホイールベースと3種類のボディ長、2種類のルーフ高が設定されており、荷室容量は最大で15,489L、最大積載重量は最大で2,456kg、荷室高は最大で1,981mm、荷室長は最大で4,699mm、牽引重量は最大で3,402kgとなる。


Mercedes Sprinter 4x4 Drive Review