今回は、英国「Auto Express」によるヴォクスホール(オペル)・コルサのハイパフォーマンスモデル、「コルサVXR」の試乗レポートを日本語で紹介します。


CorsaVXR

ヨーロッパにおいて、GMのVXR(あるいはオペルのOPC)モデルの60%はイギリスで販売される。イギリスではVXRにカルト的な人気があり、コルサVXRは2007年の登場以降9,000台が売れている。

新型コルサVXRはフォード・フィエスタSTをターゲットに開発され、カタログスペック上では勝っているようにも思える。最高出力は205PS(フィエスタSTは182PS)、0-100km/h加速は6.5秒(フィエスタSTは6.9秒)を達成する。2,400ポンドのオプションであるパフォーマンスパックを選択すれば、ドレクスラー社製のLSDや大径ホイール、ブレンボ製ブレーキ、専用チューンドサスペンションも装備される。

今回は、公道のほか、スコットランドのノックヒルレーシングサーキットでの試乗も行った。720kmにわたる長期試乗により、新型コルサの進化内容は詳らかとなった。では、フォーカスSTに打ち勝つほどの実力はあるのだろうか。

外見的には、一般的なBセグメント車の中でも存在感を放っている。今回の試乗車に装着されていた18インチホイールはオプションだが、キセノンヘッドランプやVXR専用ボディパーツ、レムス製デュアルエグゾーストパイプ、大型リアスポイラーは全車に装備される。

それに比べると内装は地味で、RECARO製のハーフレザースポーツシートやフラットボトムステアリングに、VXR専用のスイッチ類がいくらか付いている程度だ。英国仕様車にはIntelliLink Bluetoothインフォテインメントシステムも装備される。

interior

サスペンションが硬いため、街中では快適性の面で問題があるものの、曲がりくねった田舎道へと持ち込めば硬いスプリングのお陰で安定感はかなりある。道が荒れていると暴れ気味になってしまうものの、ステアリングはシャープだし、グリップも十分にある。

ヴォクスホールは購入者の40~50%はオプションのパフォーマンスパックを選択すると推測している。ブレンボのブレーキは標準車よりもブレーキフィールがリニアかつシャープだし、ドレクスラー製のLSDはタイトコーナー出口からの加速で安心感を与えてくれる。

このパッケージオプションには大径ホイールも含まれているが、これは見た目はいいものの、高速域では耐え切れないほどにうるさい。加速時にエンジン音に掻き消されている時はまだいいが、高速道路の巡航時などは非常に耳障りだ。

今回は残念ながら標準の17インチホイールを履いたモデルには試乗できなかったものの、セカンドカーなどを持たず、コルサ1台だけで生活しようとするなら、17インチを選んだほうがいいだろう。

搭載される4気筒1.6Lターボエンジンは素晴らしい。これは従来モデルと同じユニットだが、トルクバンドが広くなり、より扱いやすくなっている。フィエスタSTほど元気があるわけではないが、オーバーブースト時には29.1kgf·mの最大トルクがターボラグなく発揮され、加速性能は非常に高い。追い越し加速も朝飯前だ。

では、結局、コルサとフィエスタの勝負の結果はどうだろうか。ホットハッチとは実用性を兼ね備えた妥協のないスポーツカーであるべきだ。そしてコルサVXRには標準のコルサと変わらない実用性が備わっている。もっとも、燃費は悪くなるが。

カタログ燃費は16.6km/Lだが、240kmの試乗後、トリップコンピューターの平均燃費は約10km/Lを示していた。この車よりも速くて大きいフォルクスワーゲン・ゴルフGTIのカタログ燃費が20.0km/Lであることを考えると、この燃費は褒められない。また、アイドリングストップなどの燃費向上機構が備わっていないため、税額が年間205ポンドとなってしまう。一方、プジョー・208GTi 30th Anniversaryはわずか110ポンドだ。

とはいえ、コルサそれ自体は素晴らしい車だ。運転は楽しいし、装備も充実している。115PSの3気筒ターボエンジンを搭載するコルサの中間グレード「Excite」は14,000ポンドちょっとという価格で、コストパフォーマンスは非常に高い。ただし、Bセグメントホットハッチは競争が激しく、あらゆる点を考慮すると、快適性が低くて燃費の悪いコルサは競争力があるとはあまり言えない。

少なくとも現時点では、フォード・フィエスタSTに敵う車ではなさそうだ。


New Vauxhall Corsa VXR 2015 review