日本仕様のアコードにはハイブリッドモデルしか存在しませんが、北米仕様車には4気筒 2.4LおよびV6 3.5Lのガソリンモデルも設定されています。

今回は、米国「Car and Driver」による北米仕様アコードの試乗レポートを日本語で紹介します。

※原文は2012年9月に書かれたものです。


Accord

今のホンダの状況は最悪だ。しかし復活の兆しが見えてきたかもしれない。栃木のホンダR&Dセンターの震災による被害やタイの洪水による生産への打撃からの復活、そしてホンダの最大の価値の再来が、この9代目に当たる新型アコードからは確かに感じられる。

新型アコードは肥大化していた先代モデル(日本名: 5代目インスパイア)よりも全長が89mm、ホイールベースが23mm短くなっている。それでも新型はクラスの中でも巨大だ。肥えた先代モデルに対し、新型アコードの室内空間はほどんど変わっていない。室内空間はセグメントの中でもかなり広く感じられ、フロントシートもリアシートも余裕を持って座ることができる。さらに、元々広かったトランクスペースは更に広くなり、28L以上向上している。

新設計されたDOHC 2.4L 4気筒エンジンにはアースドリームテクノロジーというよく分からない宣伝文句が付けられている。そんなことよりも、このエンジンがホンダが北米市場に投入する初のガソリン直噴エンジンだという事実のほうが重要だ。2.4Lモデルには、6速MT以外のトランスミッションとしてはG-Design Shiftなる(ホンダの広報部が頑張って考えた名前なのだろう)CVTしか設定されていない。

この2.4Lエンジンは高圧インジェクターを用いる他の直噴エンジンと比べればアイドリング時の音が静かで、特にヒュンダイのエンジンに比べると大きく勝っている。またホンダのエンジンらしくよく回るエンジンで、パワーピークの6,400rpmでは快活で大きな音を発する。それにCVTも速さに貢献している。典型的なラバーバンドフィールは最小限に抑えられているし、スロットルレスポンスもいい(ただし高回転域ではCVTによる唸り音が時折聞こえることがある)。街中だけでなく山道でもCVTは効果的に作動してくれるため、マニュアルモードがないことも気にならない。ただ、言うまでもなく、私はシフトストロークの短い6速MTの方が好きだが、CVTでも問題は感じない。

アコードの購入者のおよそ15~20%はV6モデルを選択するが、こちらのエンジンは最高出力が282PSとなる。このエンジンの注目ポイントは、プラスティック製のヘッドカバーの採用などにより軽量化されている点や、可変シリンダーシステムが採用されたことで3気筒の状態で走行できるようになっている点だ。気筒数の変化はスムーズで、パワー面でもこのシステムによるネガは感じられない。

V6エンジンと6速MTを組み合わせることができるのはアコードクーペのみであり、セダンのV6モデルには6速ATのみが設定される。オープンディファレンシャルが採用されているため、コーナーの出口での加速では軽くホイールスピンが起こる。ただ、FF車であるということも考えれば、八分目程度の運転では非常にホットなセッティングと言える。

この理由は、アコードからは昔のホンダの「軽量魂」のようなものが感じられることにある。アコードがセグメントの中でも最軽量というわけではないのだが、それでも軽く感じられる。ステアリングにブレーキ、それにサスペンションが協調してこの車を俊敏に、快活にしている。フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式からストラット式に変更されているが、ポルシェ・ケイマンも同じだ。コーナーではステアリングから明確なロードインフォメーションが伝わってくるし、タイヤが悲鳴を上げることもほとんどなく、コーナーを苦もなく走り抜けることができる。新型アコードははまるでかつてのCR-Xがミドルサイズファミリーセダンとして復活したかのような車だ。

シビックの失敗の教訓は活かされており、室内の材質はソフトなものが使われ、遮音性も改善している。ダッシュボードはホンダの典型的なデザインで、メーター類の表示は大きく、小さなボタンが沢山並んでいる。ナビやその他の操作系は先代モデルのオーナーなら取っ付き易いもので、ナビを装備しなければその部分はどこか取って付けた感のあるプラスティックの蓋の付いた収納スペースとなる。

ホンダの死角監視カメラ「LaneWatch」は気に入った。ドアミラーに斜め後方を向いたカメラが設置されており、方向指示器を作動させた時や方向指示器レバーの先にあるコントロールボタンを押した時にカメラが起動する。また、最上級グレードにはホンダ初のLEDヘッドランプも装備されている。ハイブリッドモデルは2012年のガソリンモデルの発売から遅れ、2013年の夏に発売される。また、その数カ月後にはプラグインハイブリッドモデルも登場する。

ルーフはフラットで、ボディラインも非常にコンサバなため、新型アコードも正統派ミドルサイズファミリーセダンと言える。デザインに刺激が欠けていることは問題かもしれないが、実用性という面では文句のつけようがない。ドアの開口部は広く、室内へは入り込みやすいし、ベルトラインは不格好なほどに低く、おかげでグラスエリアは広大だ。見た目が平凡すぎて人に見られることはなくても、逆に室内から人を見ることは簡単だ。

グレード構成はかつてなく充実している。若い購入者向けには、18インチホイールやデュアルエグゾースト、リアスポイラー、フォグランプ、CVT用パドルシフトの備わった2.4Lの「Sport」も設定されている。V6のみに設定される最上級グレードの「Touring」にはレザーシートやアダプティブクルーズコントロール、前方衝突警報、上級オーディオなどが装備されており、いわばホンダのトヨタ・アバロンだ。

どのグレードにしても、新型アコードからはホンダが再びホンダであろうとしていることが感じられる。


2013 Honda Accord Sedan